ずっと待ってる

ずっと待ってる

貴方が居なくなって百年経ちました。それでも貴方を待ってます。

貴方が居なくなる前に生まれ変わってまた君を探すって言ってくれたから。

私はこの桜の木の下でずっと待ってます。


この桜は私のせいで縁結びの名所になりました。皮肉ですね。私は貴方に会えないままです。




貴方が居なくなって百一年が過ぎました。それでも貴方を待ってます。

そろそろ貴方が来る気がしてきたから。

この桜は最近夜になると魑魅魍魎が集まってきます。それを蹴散らすのが私の役目です。今日も夜の桜はとても綺麗です。

早く貴方と一緒に見たいです。

 


貴方が居なくなって百二年が経ちました。それでも貴方を待ってます。

最近あなたの顔が思い出せなくなってきました。声も香りも何もかも思い出せません。だけど温もりだけはこの体に染み付いているのです。

最近桜の元気がないです。花見をしていた人間がよじ登ったせいでしょうか。取り敢えず栄養剤刺しておきました。

早く貴方に会いたいです。




貴方が居なくなって百四年が過ぎました。私は末端の神になりました。桜の神らしいです。これであなたを待つことが出来る時間が延びました。
まだまだ貴方を待ってます。

もう貴方の顔は全然思い出せません。それでも私を呼ぶ貴方の声が聞こえてくる気がするんです。もう覚えてないはずなのに。

桜が元気になりました。栄養剤刺したおかげでしょうか。

貴方に見せるために落ちた花びらを押し花にしました。




貴方が居なくなって百五年過ぎました。ずっと貴方を待ってます。

最近、小さい子供が私を見に来るようになりました。その子供は私を見て、綺麗だと呟くのです。

貴方が私を褒める時のようにあの時のように呟くのです。綺麗だと美しいと。

貴方に会いたい。

























貴方が居なくなって百二十三年経ちました。

あの子供は桜の季節に毎年来ます。飽きずに来ます。
そして桜の枝に座っている私を見つけると嬉しそうに
こっちにおいでと言うのです。

そして必ず一回は泣きながら私に愛を囁くのです。

貴方と一字一句同じ声で囁くのです。

綺麗だ、愛してるよ、もう置いて行きたくない。と泣くのです。

私はまだ生まれ変わった貴方に会えていない。貴方は今どこにいるんですか。

貴方に会いたいです。












貴方が居なくなって二百年が経ちました。そしてあなたが誰だったのかすらもう思い出せません。あの子供はもう来なくなりました。人の一生はどうしてこんなに短いんですか。

胸に穴があいたようです。涙が止まりません。涙が止まりません。

誰だかも分からない貴方に会いたいです。