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1章
7話
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そんなことを二人で話している間に廊下の方から足音がしてスッと障子が開いた
「雪?どうしたのだ?」
国近だった。風呂上がりだったようで頬が少し赤くなっている。
「あ、お兄様。お風呂に入っていたんですね。あと、ちゃんと体拭いてから上がってきてください。貴方はとても綺麗な顔をしているんですから色気が半端じゃないです。」
と、雪は言いながら手拭いを投げつけた。
「あぁ、すまんな。」
と言いながら国近は手拭いを受け取り首にかけた。
そして雪の前に胡座をかいて座り
「それで、用件はなんだ?」と聞いた。
すると雪はハッとしたように国近に向き直り
「お兄様。最近動物が私の部屋の前に来るのです。毎晩毎晩私の部屋の前に来て話しかけて時間が経つと帰って行くのです。しかも来るのは狐だけ。」
雪はさっきまで菊と話していた時のような明るさはなくなりしょんぼりとそして怯えながら話し始めた。
「必ず来るのは丑の刻。そして、過ぎるといつの間にか消えている。そんなことが毎晩毎晩続いて...私もうおかしくなってしまいそうです。」
話しているうちにみるみる雪の目に涙が浮かんでいき終いには菊の膝に縋りつき泣き出してしまった。
『雪...。』
菊は雪の頭を撫でてやりたかったが木の体はキィと音を立てて軋むだけで動いてはくれなかった。
すると先程まで静かに話を聞いていた国近が
「うむ、話はよく分かった。お雪今までよく耐えたな。あとは兄に任せるが良いぞ。」
と微笑みながら言った。雪は泣き止んではくれなかったが少しは涙の勢いも収まったようだ
「お兄様...ぐすっ、有難うございます...!ぐすっ...ずびー」
雪は少しにこりと笑って国近にお礼を言いながら菊の着物に鼻水を擦り付けた
『なぁ、雪...。君は一体私になんの恨みが...』
流石の菊も鼻水を擦り付けられて少し困惑しているようだ。
「ご、ごめん!菊りんすぐ拭くね!」
雪はアセアセと懐から桜柄の手拭いを出し着物を拭おうとした。だが、
「待て、雪。無理やり拭くと着物が悪くなる。優しくそっと拭い取るのだぞ...そーっとなそーっと。」
国近が身振り手振りで雪におしえるが、雪はなんでこの人はこんな当たり前のことを得意げに言ってるんだろう...と思っていた。
『騒がしい兄妹だな。』
そんなことを言いながら菊は雪が先程言っていた
《狐が毎晩部屋の前に居る》という話を思い出し考え込んでいた。
狐か...厄介なものに好かれたもんだな、君。まあ、国近は役に立たなさそうだし私がなんとかしてやろう。
なんて考えながら、じゃれ合う二人を眺めていた。
「雪?どうしたのだ?」
国近だった。風呂上がりだったようで頬が少し赤くなっている。
「あ、お兄様。お風呂に入っていたんですね。あと、ちゃんと体拭いてから上がってきてください。貴方はとても綺麗な顔をしているんですから色気が半端じゃないです。」
と、雪は言いながら手拭いを投げつけた。
「あぁ、すまんな。」
と言いながら国近は手拭いを受け取り首にかけた。
そして雪の前に胡座をかいて座り
「それで、用件はなんだ?」と聞いた。
すると雪はハッとしたように国近に向き直り
「お兄様。最近動物が私の部屋の前に来るのです。毎晩毎晩私の部屋の前に来て話しかけて時間が経つと帰って行くのです。しかも来るのは狐だけ。」
雪はさっきまで菊と話していた時のような明るさはなくなりしょんぼりとそして怯えながら話し始めた。
「必ず来るのは丑の刻。そして、過ぎるといつの間にか消えている。そんなことが毎晩毎晩続いて...私もうおかしくなってしまいそうです。」
話しているうちにみるみる雪の目に涙が浮かんでいき終いには菊の膝に縋りつき泣き出してしまった。
『雪...。』
菊は雪の頭を撫でてやりたかったが木の体はキィと音を立てて軋むだけで動いてはくれなかった。
すると先程まで静かに話を聞いていた国近が
「うむ、話はよく分かった。お雪今までよく耐えたな。あとは兄に任せるが良いぞ。」
と微笑みながら言った。雪は泣き止んではくれなかったが少しは涙の勢いも収まったようだ
「お兄様...ぐすっ、有難うございます...!ぐすっ...ずびー」
雪は少しにこりと笑って国近にお礼を言いながら菊の着物に鼻水を擦り付けた
『なぁ、雪...。君は一体私になんの恨みが...』
流石の菊も鼻水を擦り付けられて少し困惑しているようだ。
「ご、ごめん!菊りんすぐ拭くね!」
雪はアセアセと懐から桜柄の手拭いを出し着物を拭おうとした。だが、
「待て、雪。無理やり拭くと着物が悪くなる。優しくそっと拭い取るのだぞ...そーっとなそーっと。」
国近が身振り手振りで雪におしえるが、雪はなんでこの人はこんな当たり前のことを得意げに言ってるんだろう...と思っていた。
『騒がしい兄妹だな。』
そんなことを言いながら菊は雪が先程言っていた
《狐が毎晩部屋の前に居る》という話を思い出し考え込んでいた。
狐か...厄介なものに好かれたもんだな、君。まあ、国近は役に立たなさそうだし私がなんとかしてやろう。
なんて考えながら、じゃれ合う二人を眺めていた。
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