ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。

砂礫レキ

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【7】悪霊令嬢、捕まる

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「君の顔をもっとよく見せてくれリコリス……」


 そう言われると同時にルシウスの手が私の前髪を掻き分ける。ぞわりと寒気がした。

 美少年に素手で触れられた衝撃か、他人に髪を触られたことに対する嫌悪かはわからない。

 理解できるのは彼の青い瞳がきらきらと輝きながら私を見ていることだけだ。つくづく顔がいい。


「やっぱりいつも俺を見ているあの薄笑いじゃない……どうして?」

「ど、どうしてと言われても……」

「……凄い。ちゃんと答えてくれる、あのリコリスが!七年前からずっと俺を一方的に見ているか話し続けるかだけだったのに……」


 我慢していたけれど正直気が狂いそうだった、そうルシウスは涙ぐんだ。

 悪霊から解放されて無事生還できたホラービデオの登場人物のようだ。よかったねと心から思う。

 後は婚約解消さえしてしまえば彼は完全に自由の身だ。早く家に帰って伯爵家当主である父に申し入れよう。

 そう考えているが、行動に移せない。顔をルシウスの両手で固定されているからだ。このまま首の骨を折られそうで怖い。


「あ、あのルシウス……様」

「昔と同じか、ルシウスでいい」 

「そ、そんな、呼び捨てなんて無理です……」

「朝も夜もずっと俺の私生活を魔術で見続けていた君が?俺の着替えも見ていたんだろう?」


 そう畳みかけるように言われて、私は顔を真っ赤にするしかなかった。彼の指摘は事実だ。

 だが記憶を取り戻す前のリコリスに邪な気持ちは一切なかった。今考えると異常な位に。

 先程はアイドルに執着するストーカーファンのようだと過去の自分を考えていたが、そこは違う。

 リコリスは婚約者の着替えや際どい場面に対し、とても淡泊だった。

 一週間前よりも痩せているとか、筋肉が減っているとか、完全に観察視点でしかなかった。

 しかしそんなの盗視されている側には関係ないだろう。


「そしてこれからも俺の監視を続けるの?俺の捨てたものを人に集めさせるの?」

「つ、続けません!そんなこと絶対しません!」

「やっぱり!昔の天使のようなリコリスだ!呪いが解けたんだ!!」


 いや違うよ。天使じゃなくて一般的な道徳を学んだ人間の判断だよ。

 そう彼に説明してあげようとした瞬間唇に柔らかいものが触れる。

 毒リンゴを齧った白雪姫、糸紬で指を刺した眠り姫。

 彼女たちに対する王子のようにルシウスは私にキスをしていた。
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