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【12】悪霊令嬢、祈る
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私は悪役令嬢リコリスと違い婚約者に付き纏い監視する趣味はない。
そしてルシウスのことも攻略対象としてそこまで好きではない。
だからこそ穏便に婚約解消をして疎遠になろうと考えた。ヒロインとの浮気を大っぴらに責めるつもりもなかった。
だって、正直に言ってしまえば面倒臭いのだ。三角関係なんて、長々と引きずりたくはない。
そして婚約者に裏切られた被害者でいるにはリコリスは過去のやらかしが過ぎる。
浮気なんてサイテーと主張し、お前のストーカー行為で精神を病んだせいですと言い返されたら泥沼だ。
ヒロインだって首を突っ込んでくるに違いない。そこに全員の親まで加わって争うことを考えただけで胃痛がする。
そうなる前に速やかに三角関係を消滅させたい。だからこその婚約解消だ。
そこにはルシウスとヒロインの仲を寛容に認めることで過去のストーキング行為と相殺できないかという打算もあった。
しかし、肝心のルシウスが今更私にアタックし始めたからわけのわからないことになっている。
近くにいた時はその顔の良さに流されてしまったが、学園から離れた今婚約者への気持ちは非常に冷めていた。
悪霊女とはいえ婚約者がいるのに可愛い後輩から手作りのお弁当を貰う。
悪霊女とはいえ婚約者からの手作り弁当は拒否して突き飛ばす。
悪霊女とはいえ気絶した婚約者が保健室に放置されているのにお見舞いにも来ない。
それだけ嫌っている悪霊女にいきなり抱き着いて学園内でキス。
その光景を浮気相手のヒロインに発見され激怒されお仕置きされる。
「婚約解消しましょうで、死亡フラグも二人との縁も切れる筈だったのに……」
あれだけ嫌っていた婚約者になぜ今更キスなんてしたのか。
以前のリコリスとの対比で輝いて見えたのかもしれないが私もどちらかといえば陰気で陰険な性質だ。
それに明るい女性が好きならヒロインが相手でいいじゃないか。もしかして本当に浮気のつもりだったのか。
「だとしたら顔以外にいいところなさすぎる……」
正直突き飛ばしたことを謝りもせず口説いてきたルシウスの行動にも少し腹が立っている。
美形の考えていることはやっぱりわからない。イケメンだから許されると思っているのか。
実際行動だけで考えれば最悪なのに、顔の良さで少し許してしまっている自分がいる。
だけどルシウスがあれだけ熱烈に迫っている相手は私ではない、彼しか知らない幻の少女にだ。
勘違いに浮かれて、後でがっかりされて嫌な気持になるのは自分だけだ。
「……犬に噛まれたと思って、今日のあれは忘れないと」
唇にそっと触れる。
良い思い出なのか最低な思い出なのか一瞬判断に迷うのが悲しい所だ。ルシウスの顔が良いのが悪い。
言ってしまえば彼はこの世界に山程いる男性の中で、たった数人の攻略対象の一人として選ばれる程の美形なのだ。
実際「私は彼の事そこまでタイプじゃないし」とか内心余裕ぶっていたのに、間近で見つめられると無条件でときめいてしまうぐらいには綺麗な顔をしていた。
だが、負けたくはない。満面の笑みで微笑まれたからと言ってあの顔の良さに屈したくはない。
「そうよ、私は飢えた獣じゃないわ。理性もプライドもあるのよ……あるわよね」
自分に言い聞かせるように呟く。
ここで私までルシウスに惚れたら泥沼どころか泥の海突入だ。学園に大量のムツゴロウが住み着いてしまう。
何より今の彼は異常だ。突き飛ばしたことを謝らないのはこの際スルーする。
嫌悪が限界だったから突き飛ばした、そのことを悪いとも思っていない。そういうことなら理解できる。
しかしそれならリコリスを嫌いな態度を貫き通して欲しかった。掌返しは止めて欲しかった。
「それにナズナって娘……女子として確実に強者。あんな子と男取り合うなんて絶対無理。無理ゲーよ!」
婚約解消のことを前もってヒロインに告げておいたのは良かったのかもしれない。
それが理由で、彼女は私ではなく自分の恋人の方だけ罰した可能性もある。
ナズナちゃんとやらはその調子で彼氏をビシビシ躾けて私に近づけないようにして欲しい。
そして出来れば次会う時にはリコリスのことを大嫌いなルシウスに戻っていてくれればいいのだけれど。
私は振動に痛むお尻を擦りながら神に祈った。
そしてルシウスのことも攻略対象としてそこまで好きではない。
だからこそ穏便に婚約解消をして疎遠になろうと考えた。ヒロインとの浮気を大っぴらに責めるつもりもなかった。
だって、正直に言ってしまえば面倒臭いのだ。三角関係なんて、長々と引きずりたくはない。
そして婚約者に裏切られた被害者でいるにはリコリスは過去のやらかしが過ぎる。
浮気なんてサイテーと主張し、お前のストーカー行為で精神を病んだせいですと言い返されたら泥沼だ。
ヒロインだって首を突っ込んでくるに違いない。そこに全員の親まで加わって争うことを考えただけで胃痛がする。
そうなる前に速やかに三角関係を消滅させたい。だからこその婚約解消だ。
そこにはルシウスとヒロインの仲を寛容に認めることで過去のストーキング行為と相殺できないかという打算もあった。
しかし、肝心のルシウスが今更私にアタックし始めたからわけのわからないことになっている。
近くにいた時はその顔の良さに流されてしまったが、学園から離れた今婚約者への気持ちは非常に冷めていた。
悪霊女とはいえ婚約者がいるのに可愛い後輩から手作りのお弁当を貰う。
悪霊女とはいえ婚約者からの手作り弁当は拒否して突き飛ばす。
悪霊女とはいえ気絶した婚約者が保健室に放置されているのにお見舞いにも来ない。
それだけ嫌っている悪霊女にいきなり抱き着いて学園内でキス。
その光景を浮気相手のヒロインに発見され激怒されお仕置きされる。
「婚約解消しましょうで、死亡フラグも二人との縁も切れる筈だったのに……」
あれだけ嫌っていた婚約者になぜ今更キスなんてしたのか。
以前のリコリスとの対比で輝いて見えたのかもしれないが私もどちらかといえば陰気で陰険な性質だ。
それに明るい女性が好きならヒロインが相手でいいじゃないか。もしかして本当に浮気のつもりだったのか。
「だとしたら顔以外にいいところなさすぎる……」
正直突き飛ばしたことを謝りもせず口説いてきたルシウスの行動にも少し腹が立っている。
美形の考えていることはやっぱりわからない。イケメンだから許されると思っているのか。
実際行動だけで考えれば最悪なのに、顔の良さで少し許してしまっている自分がいる。
だけどルシウスがあれだけ熱烈に迫っている相手は私ではない、彼しか知らない幻の少女にだ。
勘違いに浮かれて、後でがっかりされて嫌な気持になるのは自分だけだ。
「……犬に噛まれたと思って、今日のあれは忘れないと」
唇にそっと触れる。
良い思い出なのか最低な思い出なのか一瞬判断に迷うのが悲しい所だ。ルシウスの顔が良いのが悪い。
言ってしまえば彼はこの世界に山程いる男性の中で、たった数人の攻略対象の一人として選ばれる程の美形なのだ。
実際「私は彼の事そこまでタイプじゃないし」とか内心余裕ぶっていたのに、間近で見つめられると無条件でときめいてしまうぐらいには綺麗な顔をしていた。
だが、負けたくはない。満面の笑みで微笑まれたからと言ってあの顔の良さに屈したくはない。
「そうよ、私は飢えた獣じゃないわ。理性もプライドもあるのよ……あるわよね」
自分に言い聞かせるように呟く。
ここで私までルシウスに惚れたら泥沼どころか泥の海突入だ。学園に大量のムツゴロウが住み着いてしまう。
何より今の彼は異常だ。突き飛ばしたことを謝らないのはこの際スルーする。
嫌悪が限界だったから突き飛ばした、そのことを悪いとも思っていない。そういうことなら理解できる。
しかしそれならリコリスを嫌いな態度を貫き通して欲しかった。掌返しは止めて欲しかった。
「それにナズナって娘……女子として確実に強者。あんな子と男取り合うなんて絶対無理。無理ゲーよ!」
婚約解消のことを前もってヒロインに告げておいたのは良かったのかもしれない。
それが理由で、彼女は私ではなく自分の恋人の方だけ罰した可能性もある。
ナズナちゃんとやらはその調子で彼氏をビシビシ躾けて私に近づけないようにして欲しい。
そして出来れば次会う時にはリコリスのことを大嫌いなルシウスに戻っていてくれればいいのだけれど。
私は振動に痛むお尻を擦りながら神に祈った。
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