30 / 50
【30】悪霊令嬢、魔女と出遭う
しおりを挟む
自分に都合が悪くなった時に泣き出す人間は苦手だ。
更に泣いたという理由だけで同情したり庇ったりする人間も苦手だ。
つまり今この空間は私の苦手なものだらけということだ。
静かに泣くルシウスは確かに美しい。
でもその美少年、浮気した挙句婚約者突き飛ばして気絶させた人物なのだが。
こちらも悪霊のように付き纏っていた過去がある。だからお互いの罪を相殺して縁を切りたい。
その上でルシウスは豪商の愛娘であるヒロインと婚約し直せばいい。それだけの話だ。
睦み合うという言い方は過激だったかもしれない。
でもゲーム内で彼がヒロインの手作りサンドイッチを食べるイベントが存在する。
そのイベントを発生させる条件は告白イベントとキスイベントをこなすことだ。つまり二人は既にそういう関係だろう。
ルシウスルートはリコリスとの婚約解消が最終目的だからか恋人同士になるのが他の攻略対象よりも早い。
婚約解消を先にするべきだというプレイヤーからの意見もあった。このシナリオのせいでヒロインが叩かれたりもしていた。
私も正直、このルートのヒロインの行動や言動は好きでなかった。ルシウスの事もだ。
だからつい裏切られた婚約者側に肩入れして感情的な台詞が出てしまったのかもしれない。
リコリスは狂人だけれど、二人は不実だと。
「……婚約破棄ではなく解消よ。今なら私はまだ貴男たちを許せるわ」
言葉を吐き出す度に疲労が蓄積される。リコリスの口調を厳密に真似ることすら億劫だ。
泣かないで欲しい。鬱陶しさだけでなく気が滅入るのはルシウスを愛している感情が私の奥底に存在するからだろうか。
そんな重苦しい空気を無遠慮に破壊するように大声が突如響き渡る。
「ちょっと待ったぁ!美少年イジメはそこまでよぉん!!」
「……え」
「ううっ、ルシウスきゅんが可哀想すぎるわぁん!魅了魔法で心を縛られた上でフラれるだなんてぇ!!」
余りのうるささに振り返った私の耳に赤信号で突っ込んでくる暴走トラックみたいな台詞が聞こえた。
「……は?」
魅了魔法で心を縛る?もしかしてそれを私がルシウスにしたと声の主は言っているのか?
冤罪冤罪大冤罪である。
「浮気したと勘違いして嫌がらせした挙句ルシウスきゅんを無理やり虜にするだけで非道過ぎるのにぃ!魅了した上で傷つけて楽しむなんてドエスすぎるわぁん!!」
職員室中に、いや廊下まで響き渡る声に私は思わず耳を塞いだ。あらゆる意味で痛い。
しかし特徴的な口調と声量で私は声の主の正体に気づいた。そうか、彼女もこの世界に実在するのか。
「……それはちょっと、言いがかりが過ぎませんこと?アヤナ・ゾディアック先生」
私は耳から手を離して相手を睨みつけた。視線の先にはいかにも魔女といった帽子を被った妙齢の美女が立っている。
濃い紫を基調にした帽子とボディコンワンピース。髪はピンクパープルの縦ロール。
右頬には薔薇のタトゥーが目立つ。年齢不詳の非常勤講師。趣味は美少年観察と縁結び。
学院内の美少年と、ついでに美青年に詳しい。何故かヒロインを気に入り恋の成就を応援してくれる。
つまり花スク内の相談役兼お助け便利キャラだ。正体は理事長だったか。
好感度を上げるアイテムをくれたり、ヒロインのピンチに攻略対象を呼んでくれたり味方なら心強いのだが。
それ以外の立場からだとこんなにも迷惑な人間に思えるのか。職員室への呼び出しもこの人の企みかもしれない。
特定の生徒を贔屓するフリーダムな権力者だ。敵に回したら面倒に決まっている。私は小さく舌打ちした。
更に泣いたという理由だけで同情したり庇ったりする人間も苦手だ。
つまり今この空間は私の苦手なものだらけということだ。
静かに泣くルシウスは確かに美しい。
でもその美少年、浮気した挙句婚約者突き飛ばして気絶させた人物なのだが。
こちらも悪霊のように付き纏っていた過去がある。だからお互いの罪を相殺して縁を切りたい。
その上でルシウスは豪商の愛娘であるヒロインと婚約し直せばいい。それだけの話だ。
睦み合うという言い方は過激だったかもしれない。
でもゲーム内で彼がヒロインの手作りサンドイッチを食べるイベントが存在する。
そのイベントを発生させる条件は告白イベントとキスイベントをこなすことだ。つまり二人は既にそういう関係だろう。
ルシウスルートはリコリスとの婚約解消が最終目的だからか恋人同士になるのが他の攻略対象よりも早い。
婚約解消を先にするべきだというプレイヤーからの意見もあった。このシナリオのせいでヒロインが叩かれたりもしていた。
私も正直、このルートのヒロインの行動や言動は好きでなかった。ルシウスの事もだ。
だからつい裏切られた婚約者側に肩入れして感情的な台詞が出てしまったのかもしれない。
リコリスは狂人だけれど、二人は不実だと。
「……婚約破棄ではなく解消よ。今なら私はまだ貴男たちを許せるわ」
言葉を吐き出す度に疲労が蓄積される。リコリスの口調を厳密に真似ることすら億劫だ。
泣かないで欲しい。鬱陶しさだけでなく気が滅入るのはルシウスを愛している感情が私の奥底に存在するからだろうか。
そんな重苦しい空気を無遠慮に破壊するように大声が突如響き渡る。
「ちょっと待ったぁ!美少年イジメはそこまでよぉん!!」
「……え」
「ううっ、ルシウスきゅんが可哀想すぎるわぁん!魅了魔法で心を縛られた上でフラれるだなんてぇ!!」
余りのうるささに振り返った私の耳に赤信号で突っ込んでくる暴走トラックみたいな台詞が聞こえた。
「……は?」
魅了魔法で心を縛る?もしかしてそれを私がルシウスにしたと声の主は言っているのか?
冤罪冤罪大冤罪である。
「浮気したと勘違いして嫌がらせした挙句ルシウスきゅんを無理やり虜にするだけで非道過ぎるのにぃ!魅了した上で傷つけて楽しむなんてドエスすぎるわぁん!!」
職員室中に、いや廊下まで響き渡る声に私は思わず耳を塞いだ。あらゆる意味で痛い。
しかし特徴的な口調と声量で私は声の主の正体に気づいた。そうか、彼女もこの世界に実在するのか。
「……それはちょっと、言いがかりが過ぎませんこと?アヤナ・ゾディアック先生」
私は耳から手を離して相手を睨みつけた。視線の先にはいかにも魔女といった帽子を被った妙齢の美女が立っている。
濃い紫を基調にした帽子とボディコンワンピース。髪はピンクパープルの縦ロール。
右頬には薔薇のタトゥーが目立つ。年齢不詳の非常勤講師。趣味は美少年観察と縁結び。
学院内の美少年と、ついでに美青年に詳しい。何故かヒロインを気に入り恋の成就を応援してくれる。
つまり花スク内の相談役兼お助け便利キャラだ。正体は理事長だったか。
好感度を上げるアイテムをくれたり、ヒロインのピンチに攻略対象を呼んでくれたり味方なら心強いのだが。
それ以外の立場からだとこんなにも迷惑な人間に思えるのか。職員室への呼び出しもこの人の企みかもしれない。
特定の生徒を贔屓するフリーダムな権力者だ。敵に回したら面倒に決まっている。私は小さく舌打ちした。
45
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる