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【38】悪霊令嬢、胸騒ぎを覚える
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「アヤナとルシウスは保健室行きになった。というか坊ちゃんの方はオレが運ばされた」
うんざりとした口調でハイドラが言う。大変だったわねと私は労わった。
「まあ、厚化粧の魔女おばさんを抱きかかえるよりはマシだけど」
「おばさ……」
今の自分は十代の姿をしているとは言え精神年齢は前世に近い。
妙齢のアヤナが男子学生に中年女性呼ばわりされるのは微妙に心が毛羽立つのだ。
「そういう言い方は良くないわね、ハイドラ」
内心傷つきながら弟を窘めると制服が化粧で汚れたら嫌じゃんと返される。
確かにあそこまで化粧が濃ければ軽く頬に触れるだけでファンデーションがつきそうだ。
「気持ちはわかるけれど女性の呼び方には気をつけなさい」
それだけを告げて私は話題を変えることにした。
「それで、二人とも意識は戻ったの?」
「わかんない。オレはルシウスをベッドに寝せたらすぐ戻ったし」
リコリスを職員室に放置したままだったから。
そうハイドラに言われて自分も気絶組の中に入っていたことを思い出す。
「……もしかして私が簡単に早退出来たのってベッドの空きが無いから?」
「そうかも」
溜息を吐くしかない。別に三人仲良く保健室で寝たかったわけではないが。
前世の記憶を取り戻してから薄々感じていたことだが、この世界はリコリスの扱いが雑な気がする。
世界という括りは大袈裟かもしれないが、少なくとも教師たちの対応はそうとしか言えない。
恐れと嫌悪を抱きつつ出来るだけ関わらないようにしているのが丸わかりだ。
悪霊令嬢と陰で呼ばれる不気味な容貌と行動が原因なのはわかっている。
理事長であるアヤナが私に悪感情を抱いているのも大きいかもしれない。
ただ、それだけでは納得できない歪みを私はあの学院に感じるのだ。
「もしかして婚約者サマと同じベッドで寝たかった?」
「冗談でも怒るわよ」
「ふーん、やっぱりアイツのこと嫌いになったんだ。良かった」
「良かった?」
どこか含みのあるハイドラの台詞に私は思考を浮上させた。
確かに私は急に好意をぶつけてくるようになったルシウスを不気味に感じている。
ヒロインとの関係を考えると嫌悪感さえあった。
そこにリコリスが今までしていたストーキング行為に対する罪悪感を足すから面倒になる。
更にヒロインとルシウスの恋仲を応援するアヤナがで出しゃばって来た。
だが嫌いになったというのとは又違う気がする。疎ましいというのが一番近い。
以前のリコリスならともかく、今の私は彼に対し殆ど興味がないのだから。
「難しい顔してるね、好きとか嫌いとかそんなに考え込むことかな」
「……別に、嫌いというよりどうでもいいが近いと思っただけ」
「ああ、無関心って奴か。一番残酷な感情だ」
愛した人間に興味すら持たれないなんて。
そう口だけで笑いながら闇精霊が言う。
「でもそれなら尚更良かった。ローレルはルシウスの君への恋心を消すつもりみたいだから」
「は?」
「姉よりも彼の方が魔法薬作りが得意なんだって。リコリスの仕業じゃないなら自分が治療しておくってさ」
そんなこと出来るなら最初からやっとけばいいのにね。
あっけらかんと言うハイドラを前に私は何故か奇妙な胸騒ぎを感じていた。
うんざりとした口調でハイドラが言う。大変だったわねと私は労わった。
「まあ、厚化粧の魔女おばさんを抱きかかえるよりはマシだけど」
「おばさ……」
今の自分は十代の姿をしているとは言え精神年齢は前世に近い。
妙齢のアヤナが男子学生に中年女性呼ばわりされるのは微妙に心が毛羽立つのだ。
「そういう言い方は良くないわね、ハイドラ」
内心傷つきながら弟を窘めると制服が化粧で汚れたら嫌じゃんと返される。
確かにあそこまで化粧が濃ければ軽く頬に触れるだけでファンデーションがつきそうだ。
「気持ちはわかるけれど女性の呼び方には気をつけなさい」
それだけを告げて私は話題を変えることにした。
「それで、二人とも意識は戻ったの?」
「わかんない。オレはルシウスをベッドに寝せたらすぐ戻ったし」
リコリスを職員室に放置したままだったから。
そうハイドラに言われて自分も気絶組の中に入っていたことを思い出す。
「……もしかして私が簡単に早退出来たのってベッドの空きが無いから?」
「そうかも」
溜息を吐くしかない。別に三人仲良く保健室で寝たかったわけではないが。
前世の記憶を取り戻してから薄々感じていたことだが、この世界はリコリスの扱いが雑な気がする。
世界という括りは大袈裟かもしれないが、少なくとも教師たちの対応はそうとしか言えない。
恐れと嫌悪を抱きつつ出来るだけ関わらないようにしているのが丸わかりだ。
悪霊令嬢と陰で呼ばれる不気味な容貌と行動が原因なのはわかっている。
理事長であるアヤナが私に悪感情を抱いているのも大きいかもしれない。
ただ、それだけでは納得できない歪みを私はあの学院に感じるのだ。
「もしかして婚約者サマと同じベッドで寝たかった?」
「冗談でも怒るわよ」
「ふーん、やっぱりアイツのこと嫌いになったんだ。良かった」
「良かった?」
どこか含みのあるハイドラの台詞に私は思考を浮上させた。
確かに私は急に好意をぶつけてくるようになったルシウスを不気味に感じている。
ヒロインとの関係を考えると嫌悪感さえあった。
そこにリコリスが今までしていたストーキング行為に対する罪悪感を足すから面倒になる。
更にヒロインとルシウスの恋仲を応援するアヤナがで出しゃばって来た。
だが嫌いになったというのとは又違う気がする。疎ましいというのが一番近い。
以前のリコリスならともかく、今の私は彼に対し殆ど興味がないのだから。
「難しい顔してるね、好きとか嫌いとかそんなに考え込むことかな」
「……別に、嫌いというよりどうでもいいが近いと思っただけ」
「ああ、無関心って奴か。一番残酷な感情だ」
愛した人間に興味すら持たれないなんて。
そう口だけで笑いながら闇精霊が言う。
「でもそれなら尚更良かった。ローレルはルシウスの君への恋心を消すつもりみたいだから」
「は?」
「姉よりも彼の方が魔法薬作りが得意なんだって。リコリスの仕業じゃないなら自分が治療しておくってさ」
そんなこと出来るなら最初からやっとけばいいのにね。
あっけらかんと言うハイドラを前に私は何故か奇妙な胸騒ぎを感じていた。
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