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【44】悪霊令嬢、ヒロインを考える
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「ナズナ・コノハナの……関係者?」
ローレルの発言を私はただ鸚鵡返ししてしまう。それぐらい犯人が予想外だったのだ。
いや、この保険医の言うことを鵜呑みにするのも問題がある。
私は備え付けの冷蔵庫を漁っている彼に向って話しかけた。
「関係者って具体的に誰なのですか」
「そこまでは言えない」
ブラックコーヒーか麦茶かわからない飲み物をビーカーに注ぎながらローレルは答えた。
こちらは真剣に話をしているのに微妙に間抜けな行動を取らないでほしい。
「言えないって、そんな回答で納得できる筈が無いでしょう?」
「たとえ話だが、君がナズナの親、いや姉だったとして」
「私が?ヒロ……彼女の?」
「貴族の婚約者がいる男との恋愛関係に耽溺していたらどう行動する?」
「そんなこと……」
叱って、そんな男ろくなもんじゃないと説教して、別れるように言うに決まっている。
その考えに思い至った瞬間パズルのピースがはまるような感覚がした。
成程、ヒロインの家族がルシウスとの破局を画策したのか。
確かに他の女生徒と婚約関係にありながら別の女と付き合う男なんてカスに決まっている。
恋は盲目というけれど、それは当事者たちだけ。
アヤナのように頭のねじが外れていない大人なら、二人を別れさせようと思うだろう。
だが、それでも気になる点はある。
「君も飲むか、ラディア―タ嬢」
「結構です。それより、関係者とやらは何故直接コノハナさんに別れろと言わなかったのですか?」
黒い液体が入っているビーカーを差し出され断る。
白衣キャラにありがちなシチュエーションだが普通は保険医じゃなくて化学教師のやるアクションだと思う。
彼は私が拒否したビーカーをテーブルの上に置き自分の分を一気に飲み干した。喉が渇いていたのは本当らしい。
「意外と物知らずだな。平民の娘を説得したって貴族側が惚れたままだったら意味なんてない」
「身分差が、そんなところにも……」
「当人たちは関係ないと思ってそうなところが滑稽だが」
だがナズナの方は他の女生徒からの風当たりがかなり強かっただろう。
そう言われて私は廊下でヒロインが集団で罵られている姿を思い出した。
貴族の女生徒達は躊躇いなく彼女の身分を見下し侮蔑していた。
私はヒロインの実家が豪商だと知っていたから、そんな貴族令嬢たちの無知を嘲笑ったが。
「……コノハナ商会は、いずれ国を牛耳る程になるのに?」
「他の貴族女と違ってそういう知識はあるんだな。だがそれは今じゃない」
何よりこんなことの為に顕示するメリットがない。ローレルに告げられて私は曖昧に頷く。
飲み物が入っていた冷蔵庫をちらりと見る。あれもコノハナ商会が開発した専売品だ。
そして学院の生徒たちが当たり前のように使っているマジカルフォンも。
恐らく下手な貴族よりもヒロインの親は財産もコネもを持っている。
それでも一人娘であるナズナ・コノハナは平民というだけで他の貴族令嬢に見下されるのだ。
「つまりルシウスが一方的に冷めて彼女から離れていくのがコノハナ側にとっては良かったと?」
「貴族男が平民女と一時遊んで捨てるのは珍しくないからな」
「それだと、弄ばれたコノハナ嬢のイメージにも傷がつくのでは?」
「婚約者がいる男に近づく女だ。今更だろう」
容赦ないローレルの言葉に思わず笑ってしまう。確かに、きっと彼女は平気だろう。
女生徒達から馬鹿にされ陰口を言われても、きっとすぐ別の美男子が寄り添ってくれる筈だ。
だって彼女はこの世界に愛されているヒロインだから。攻略対象は選び放題。
寧ろ弄ばれ捨てられたことさえ、男からの同情を買う理由になるかもしれない。
そこまでナズナの関係者とやらが計算して企てたのかはわからないけれど。
ローレルの発言を私はただ鸚鵡返ししてしまう。それぐらい犯人が予想外だったのだ。
いや、この保険医の言うことを鵜呑みにするのも問題がある。
私は備え付けの冷蔵庫を漁っている彼に向って話しかけた。
「関係者って具体的に誰なのですか」
「そこまでは言えない」
ブラックコーヒーか麦茶かわからない飲み物をビーカーに注ぎながらローレルは答えた。
こちらは真剣に話をしているのに微妙に間抜けな行動を取らないでほしい。
「言えないって、そんな回答で納得できる筈が無いでしょう?」
「たとえ話だが、君がナズナの親、いや姉だったとして」
「私が?ヒロ……彼女の?」
「貴族の婚約者がいる男との恋愛関係に耽溺していたらどう行動する?」
「そんなこと……」
叱って、そんな男ろくなもんじゃないと説教して、別れるように言うに決まっている。
その考えに思い至った瞬間パズルのピースがはまるような感覚がした。
成程、ヒロインの家族がルシウスとの破局を画策したのか。
確かに他の女生徒と婚約関係にありながら別の女と付き合う男なんてカスに決まっている。
恋は盲目というけれど、それは当事者たちだけ。
アヤナのように頭のねじが外れていない大人なら、二人を別れさせようと思うだろう。
だが、それでも気になる点はある。
「君も飲むか、ラディア―タ嬢」
「結構です。それより、関係者とやらは何故直接コノハナさんに別れろと言わなかったのですか?」
黒い液体が入っているビーカーを差し出され断る。
白衣キャラにありがちなシチュエーションだが普通は保険医じゃなくて化学教師のやるアクションだと思う。
彼は私が拒否したビーカーをテーブルの上に置き自分の分を一気に飲み干した。喉が渇いていたのは本当らしい。
「意外と物知らずだな。平民の娘を説得したって貴族側が惚れたままだったら意味なんてない」
「身分差が、そんなところにも……」
「当人たちは関係ないと思ってそうなところが滑稽だが」
だがナズナの方は他の女生徒からの風当たりがかなり強かっただろう。
そう言われて私は廊下でヒロインが集団で罵られている姿を思い出した。
貴族の女生徒達は躊躇いなく彼女の身分を見下し侮蔑していた。
私はヒロインの実家が豪商だと知っていたから、そんな貴族令嬢たちの無知を嘲笑ったが。
「……コノハナ商会は、いずれ国を牛耳る程になるのに?」
「他の貴族女と違ってそういう知識はあるんだな。だがそれは今じゃない」
何よりこんなことの為に顕示するメリットがない。ローレルに告げられて私は曖昧に頷く。
飲み物が入っていた冷蔵庫をちらりと見る。あれもコノハナ商会が開発した専売品だ。
そして学院の生徒たちが当たり前のように使っているマジカルフォンも。
恐らく下手な貴族よりもヒロインの親は財産もコネもを持っている。
それでも一人娘であるナズナ・コノハナは平民というだけで他の貴族令嬢に見下されるのだ。
「つまりルシウスが一方的に冷めて彼女から離れていくのがコノハナ側にとっては良かったと?」
「貴族男が平民女と一時遊んで捨てるのは珍しくないからな」
「それだと、弄ばれたコノハナ嬢のイメージにも傷がつくのでは?」
「婚約者がいる男に近づく女だ。今更だろう」
容赦ないローレルの言葉に思わず笑ってしまう。確かに、きっと彼女は平気だろう。
女生徒達から馬鹿にされ陰口を言われても、きっとすぐ別の美男子が寄り添ってくれる筈だ。
だって彼女はこの世界に愛されているヒロインだから。攻略対象は選び放題。
寧ろ弄ばれ捨てられたことさえ、男からの同情を買う理由になるかもしれない。
そこまでナズナの関係者とやらが計算して企てたのかはわからないけれど。
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