30 / 65
29.外出の理由
しおりを挟む
「尻拭い……」
唖然とした表情でフェリクスが繰り返す。
それはそうだろう。尻拭いなんて普通令嬢は口に出して言ったりしない。
しかも私は前世の記憶が戻るまで彼の前でかなりの猫かぶりだったのだ。
尻なんて言葉自体口にしたことがない。
だが彼が驚いたのはそれが理由では無かった。
「俺が外出していたのはラウルの息子に面会し、向こうの家に養育費を渡す為だ」
「ああ、あの……月一回の決め事ですね」
フェリクスに言われて私は思い出した。
そう言えば彼は毎月ラウルの元配偶者の実家に赴いていた。
理由は先程彼が言った通りだ。
前世の記憶を取り戻すまでは甥の面倒を見るフェリクス様お優しいなどと思っていた。
今考えると色々おかしい。
養育費を渡すのも子供と面会するのも伯父じゃなく父親の役目では無いだろうか。
離婚先がラウルの顔なんて見たくないのかもしれないし、正直その気持ちはわかるのだが。
「俺は伯爵家当主として、そしてラウルの兄として当然だと考えていたが……」
「いや当然ではないですよ」
思わず突っ込んでしまう。
「養育費を払うのも子供に面会するのも普通は父親がすることでは?」
「しかしラウルには財産が無いし、あいつは子供が苦手だと言うんだ」
「だったら仕事をさせて稼がせるべきだし、子供が苦手なら子供を作らなければ良かったのでは」
これ以上下がる筈無いと思っていたラウルの株が面白いぐらい下降している。
流石に口には出さないが生まれてこなければ良かったのにレベルだ。
貴族なのだから跡継ぎを作る義務とかはあるだろう。
でも月一の面会さえ兄に押し付けるぐら子供に興味無いなら子供なんて作るな。
ラウルは流石に兄に依存し過ぎだ。
伯爵家が生活に余裕があってろくでなしなラウルを外に出さず飼い殺すつもりなら反対はしないけれど。
どうせ私は離婚するし。
しかし気になるのは前伯爵夫人の発言だった。
彼女は目の前の彼を傲慢で尊大だと言っていたけれど、私は全くそう思わない。
毎日愛していないと告げる彼を冷酷な人でなしだと憤りはしたけど。
「マリアン嬢、一つ聞きたいことがある」
「はっ、はい、何でしょう?」
考え事をしている時に話しかけられ返事をする。
フェリクスはいつも通りに整った仏頂面をしていた。彼は表情が殆ど変わらない。
だから私は彼が何を考えているかいつもわからなかった。
「……もしかしてフェーヴル公爵家では、いや他の家ではここまで弟の面倒は見ないものだろうか?」
末っ子で甘やかされている自覚のある私は大いに返答に悩んだ。
しかも今現在、長姉に尻拭いをしてもらっている最中なのだ。
もしかして私もアルマ姉さんからしたらラウルと変わらない存在かもしれない。
自分で考えて若干落ち込んだ。
唖然とした表情でフェリクスが繰り返す。
それはそうだろう。尻拭いなんて普通令嬢は口に出して言ったりしない。
しかも私は前世の記憶が戻るまで彼の前でかなりの猫かぶりだったのだ。
尻なんて言葉自体口にしたことがない。
だが彼が驚いたのはそれが理由では無かった。
「俺が外出していたのはラウルの息子に面会し、向こうの家に養育費を渡す為だ」
「ああ、あの……月一回の決め事ですね」
フェリクスに言われて私は思い出した。
そう言えば彼は毎月ラウルの元配偶者の実家に赴いていた。
理由は先程彼が言った通りだ。
前世の記憶を取り戻すまでは甥の面倒を見るフェリクス様お優しいなどと思っていた。
今考えると色々おかしい。
養育費を渡すのも子供と面会するのも伯父じゃなく父親の役目では無いだろうか。
離婚先がラウルの顔なんて見たくないのかもしれないし、正直その気持ちはわかるのだが。
「俺は伯爵家当主として、そしてラウルの兄として当然だと考えていたが……」
「いや当然ではないですよ」
思わず突っ込んでしまう。
「養育費を払うのも子供に面会するのも普通は父親がすることでは?」
「しかしラウルには財産が無いし、あいつは子供が苦手だと言うんだ」
「だったら仕事をさせて稼がせるべきだし、子供が苦手なら子供を作らなければ良かったのでは」
これ以上下がる筈無いと思っていたラウルの株が面白いぐらい下降している。
流石に口には出さないが生まれてこなければ良かったのにレベルだ。
貴族なのだから跡継ぎを作る義務とかはあるだろう。
でも月一の面会さえ兄に押し付けるぐら子供に興味無いなら子供なんて作るな。
ラウルは流石に兄に依存し過ぎだ。
伯爵家が生活に余裕があってろくでなしなラウルを外に出さず飼い殺すつもりなら反対はしないけれど。
どうせ私は離婚するし。
しかし気になるのは前伯爵夫人の発言だった。
彼女は目の前の彼を傲慢で尊大だと言っていたけれど、私は全くそう思わない。
毎日愛していないと告げる彼を冷酷な人でなしだと憤りはしたけど。
「マリアン嬢、一つ聞きたいことがある」
「はっ、はい、何でしょう?」
考え事をしている時に話しかけられ返事をする。
フェリクスはいつも通りに整った仏頂面をしていた。彼は表情が殆ど変わらない。
だから私は彼が何を考えているかいつもわからなかった。
「……もしかしてフェーヴル公爵家では、いや他の家ではここまで弟の面倒は見ないものだろうか?」
末っ子で甘やかされている自覚のある私は大いに返答に悩んだ。
しかも今現在、長姉に尻拭いをしてもらっている最中なのだ。
もしかして私もアルマ姉さんからしたらラウルと変わらない存在かもしれない。
自分で考えて若干落ち込んだ。
1,793
あなたにおすすめの小説
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる