77 / 123
第一部
77.
しおりを挟む
ブライアンを地下牢行きにするよう命じると私は事前に用意していた鍵を取り出す。
これは彼の部屋の合鍵だ。
暫く待っているとアイリが戻って来たので彼女を連れて移動した。
屋敷の中は珍しくざわついている。
下男のクレイグがブライアンを連行する姿を何人かが目撃したのだろう。
(まあ何かあったか気にはなるわよね)
そう考えるとカーヴェルはよくバレずにレオの部屋から救護室まで運ばれたと思う。
いや、バレても良かったのかもしれない。
使用人たちにとっては玄関で倒れようと子供部屋で倒れようと大した違いは無いのだろうから。
私だって最初から子供部屋でカーヴェルが倒れたと言われても、そこを不審がったりはしない。
ブライアンがわざわざ玄関で倒れたと嘘を吐いたから気になったのだ。
そんなことを考えながら歩いていると家令補佐用の個室の前に着く。
アイリが私から預かった鍵で扉を開けた。
「……ここがブライアンの部屋ね」
私は呟く。独身中年男性が寝起きする部屋だなという以外の感想は無い。
ただ、ふわりと香る甘い匂いが気になった。
花の香りのルームフレグランスでも使っているのだろうか。
あの常にどこか面倒臭そうな態度の中年男性と華やかなその香りは結び付かなかった。
「手紙やシーリングスタンプ、それ以外に気になる物があったら教えて頂戴」
「かしこまりました、奥様」
返事をしたアイリと一緒にブライアンの部屋を漁る。
原作の事件パートでも特に指紋鑑定とかは出てこなかったが一応アイリと一緒に手袋はしておいた。
戸棚や机の引き出しを漁ると鍵がかかっている引き出しがあった。
「……見るからに怪しいわね」
私は呟くと同じ机の別の引き出しを開ける。便箋と封筒が入っていた。
どちらも見覚えがある。はっきりと言ってしまえば偽の手紙に使われていた物だ。
封筒と便箋を取り上げて机の上に置く。
すると空になった引き出しの底から小さな鍵が出て来た。
「やる気の無い宝探しみたい」
そう言いながら小さな鍵を引き出しの鍵穴に試す。見事開いたそこには小さな紙袋があった。
そっと袋に指を入れて中の物を取り出す。薬包紙と粉薬らしきものが入っている。
「奥様、それは……」
アイリが私の手元に視線を向けて言う。
「多分、この流れだと睡眠薬よね」
私はそう返した。
ふとアイリが何かを持っていることに気付く。
「恐らくお探しのシーリングスタンプかと」
「後で確認してみましょう」
私は彼女からそれを受け取って持参した籠に入れた。
部屋に入ってから数十分も経っていない。けれど十分すぎる程の証拠は揃っている。
ここまで回りくどいことをしなくても、私が即ブライアンの部屋に押し入っておけはそれで解決したかもしれない。
ただ、私のやる事にはこの回りくどさが必要だった。
「じゃあこの証拠品を持ってブライアンに会いに行きましょう」
私はアイリに指示する。ふと華やかな香りの出所が知りたくなって部屋をうろついた。
「ここね」
ベッドサイドに香油が入った小瓶が置かれていた。
私の行動に気付いたのかアイリが近寄って来る。そしてくんと鼻を鳴らすと言った。
「こちら、奥様の香水と似た香りですね」
「えっ……」
一気に鳥肌が立った。
これは彼の部屋の合鍵だ。
暫く待っているとアイリが戻って来たので彼女を連れて移動した。
屋敷の中は珍しくざわついている。
下男のクレイグがブライアンを連行する姿を何人かが目撃したのだろう。
(まあ何かあったか気にはなるわよね)
そう考えるとカーヴェルはよくバレずにレオの部屋から救護室まで運ばれたと思う。
いや、バレても良かったのかもしれない。
使用人たちにとっては玄関で倒れようと子供部屋で倒れようと大した違いは無いのだろうから。
私だって最初から子供部屋でカーヴェルが倒れたと言われても、そこを不審がったりはしない。
ブライアンがわざわざ玄関で倒れたと嘘を吐いたから気になったのだ。
そんなことを考えながら歩いていると家令補佐用の個室の前に着く。
アイリが私から預かった鍵で扉を開けた。
「……ここがブライアンの部屋ね」
私は呟く。独身中年男性が寝起きする部屋だなという以外の感想は無い。
ただ、ふわりと香る甘い匂いが気になった。
花の香りのルームフレグランスでも使っているのだろうか。
あの常にどこか面倒臭そうな態度の中年男性と華やかなその香りは結び付かなかった。
「手紙やシーリングスタンプ、それ以外に気になる物があったら教えて頂戴」
「かしこまりました、奥様」
返事をしたアイリと一緒にブライアンの部屋を漁る。
原作の事件パートでも特に指紋鑑定とかは出てこなかったが一応アイリと一緒に手袋はしておいた。
戸棚や机の引き出しを漁ると鍵がかかっている引き出しがあった。
「……見るからに怪しいわね」
私は呟くと同じ机の別の引き出しを開ける。便箋と封筒が入っていた。
どちらも見覚えがある。はっきりと言ってしまえば偽の手紙に使われていた物だ。
封筒と便箋を取り上げて机の上に置く。
すると空になった引き出しの底から小さな鍵が出て来た。
「やる気の無い宝探しみたい」
そう言いながら小さな鍵を引き出しの鍵穴に試す。見事開いたそこには小さな紙袋があった。
そっと袋に指を入れて中の物を取り出す。薬包紙と粉薬らしきものが入っている。
「奥様、それは……」
アイリが私の手元に視線を向けて言う。
「多分、この流れだと睡眠薬よね」
私はそう返した。
ふとアイリが何かを持っていることに気付く。
「恐らくお探しのシーリングスタンプかと」
「後で確認してみましょう」
私は彼女からそれを受け取って持参した籠に入れた。
部屋に入ってから数十分も経っていない。けれど十分すぎる程の証拠は揃っている。
ここまで回りくどいことをしなくても、私が即ブライアンの部屋に押し入っておけはそれで解決したかもしれない。
ただ、私のやる事にはこの回りくどさが必要だった。
「じゃあこの証拠品を持ってブライアンに会いに行きましょう」
私はアイリに指示する。ふと華やかな香りの出所が知りたくなって部屋をうろついた。
「ここね」
ベッドサイドに香油が入った小瓶が置かれていた。
私の行動に気付いたのかアイリが近寄って来る。そしてくんと鼻を鳴らすと言った。
「こちら、奥様の香水と似た香りですね」
「えっ……」
一気に鳥肌が立った。
1,364
あなたにおすすめの小説
七年目の裏切り 〜赴任先の夫から届く愛の手紙は、愛人の代筆でした〜
恋せよ恋
恋愛
「君は僕の最愛だ。もう二度と、君を危険に晒したくない」
命懸けの出産後、涙を流して私を抱きしめた夫ジュリアン。
その言葉通り、彼は「私を大切にするため」に夜の営みを断った。
私は、女としての寂しさを「愛されている誇り」に変え、
隣国へ赴任した夫を信じて二人の子供と家を守り続けていた。
毎週届く、情熱的な愛の手紙。タイプライターで綴られた
その愛の言葉を、私は宝物のように抱きしめていた。
……しかし、その手紙は「裏切り」だった。
夫が異国の地で、愛人と肌を重ねながら綴らせていた「偽りの愛」。
身分を隠して夫の赴任先の隣国へと向かった私が見たのは……。
果たして、貞淑な妻・メラニアが選んだ結論は……。
子供たちのため結婚生活の継続か、それとも……。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
三年目の離婚から始まる二度目の人生
あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。
三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。
理由はただ一つ。
“飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。
女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。
店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。
だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。
(あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……)
そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。
これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。
今度こそ、自分の人生を選び取るために。
ーーー
不定期更新になります。
全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇
第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている
山法師
恋愛
グレイフォアガウス王国の第二王女、シャーロット。
フォーサイス公爵家の次期公爵、セオドア。
二人は婚約者であるけれど、婚約者であるだけだった。
形だけの婚約者。二人の仲は冷め切っているし冷え切っている。
そもそも温度など、最初から存在していない。愛も恋も、友情も親しみも、二人の間には存在しない。
周知の事実のようなそれを、シャーロットもセオドアも否定しない。
お互いにほとんど関わりを持とうとしない、交流しようとしない、シャーロットとセオドアは。
婚約者としての親睦を深める茶会でだけ、顔を合わせる。
親睦を深める茶会だというのに、親睦は全く深まらない。親睦を深めるつもりも深める意味も、二人にはない。
形だけの婚約者との、形だけの親睦を深める茶会。
今日もまた、同じように。
「久しぶりに見る君が、いつにも増して愛らしく見えるし愛おしく思えて、僕は今にも天に召されそうなほどの幸福を味わっている。──?!」
「あたしのほうこそセオ様とお顔を合わせること、夢みたいに思ってるんですからね。大好きなセオ様を独り占めしているみたいに思えるんですよ。はっ?!」
顔を合わせて確認事項を本当に『確認』するだけの茶会が始まるはずが、それどころじゃない事態に陥った。
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
さようなら、私の初恋
しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
冷遇夫がお探しの私は、隣にいます
終日ひもの干す紐
恋愛
愛人がいるなら、さっさと言ってくれればいいのに!
妻に駆け落ちされた、傷心の辺境伯ロシェのもとへ嫁いでほしい。
シャノンが王命を受け、嫁いでから一年……とんでもない場面に立ち会ってしまう。
「サフィール……またそんなふうに僕を見つめて、かわいいね」
シャノンには冷たいの夫の、甘ったるい囁き。
扉の向こうの、不貞行為。
これまでの我慢も苦労も全て無駄になり、沸々と湧き上がる怒りを、ロシェの愛猫『アンブル』に愚痴った。
まさかそれが、こんなことになるなんて!
目が覚めると『アンブル』になっていたシャノン。
猫の姿に向けられる夫からの愛情。
夫ロシェの“本当の姿”を垣間見たシャノンは……?
* * *
他のサイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる