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第二部
10.
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マーサは私に隠し事をしている。
そう感じたのは時々伏せられる視線や指先の忙しない動きからだった。
前世の経験からしてこれは言いたいことを隠している場合が高い。
なので彼女が話しやすいようにこちらも隙を作って見せたけれどマーサは結局私に新しい情報を伝えてはこなかった。
だから何を隠しているのかはわからなかった。
「……私の気のせいかもしれないしね」
一人になった部屋で呟く。
用事の時間が迫っていたり、トイレを我慢していたりも考えられる。
私は考えを別の事に切り替えるようにした。聞いてない内容をあれこれ考えても暇潰しにしかならない。
そして私は今暇では無いのだ。
一応ロンの父親であるケビンにロンの状態について報告し確認しておこう。
マーベラ夫人によってロンは自分が将来平民になる事を想定してしまっている。
恐らくそうはならないだろうと思うが父親があのケビンだ。万が一は考えておく必要がある。
それに、当主が平民にするつもり無いと断言してたと告げるのが一番安心出来ると思う。
普通はそうならないとか常識的に有り得ないと説明しても、決定権がケビンにある為どうしても弱い部分が出るのだ。
なので手紙を書いて手紙でロンを平民にしないと言質を取る。
手紙は今日中に書く。
それと画材屋への買い物。こちらは事前確認が色々必要だ。
店舗での購入という事は私たちが店内に入るという事になる。
公爵夫人として外出用ドレス姿の私と子供たちだ。
買い物についてはレオも誘わないと拗ねる可能性があるので声をかけるつもりだ。そして多分文句を言いつつ来る。
当然私と子供二人だけで外出できる筈が無い。
馬車と子供たち付きの侍女と護衛も兼ねた男手が最低限必要になると思う。
図書室で読んだ貴族小説の知識でしか無いけれど。
(……だってエリカは貴族令嬢として外出したのは結婚式の時ぐらいしか無いもの)
その場合馬車を停める場所が近くにあり、更にドレスで歩き回れ貴族とその使用人数人が居ても窮屈にならない広さの店舗を選ぶ必要がある。
でもそんな大きな店は使用人時代お使いに出た先で見たことが無い。
(やっぱり貴族が店頭購入するのって難易度高いわね)
帽子は小さく余り幅を取らないドレスを選んで、使用人は一人ぐらいにすれば行けるだろうか。
「……つまり買い物用の服を買わなきゃいけないって事だわ」
レオにリクエストされた移動式遊園地は広大な敷地を借りている上に貴族や富裕層のみの日を設けたりしているので、そういった意味では楽だった。
質素に見えるロンの願いの方がトータルではお金がかかりそうなのも皮肉だ。決して本人に告げる事はしないけれど。
そんな事を考えていると扉が外から叩かれた。
「奥様、カーヴェルです」
「開けていいわよ」
許可を与えると静かに扉が開いた。
名乗り通り執事服を身に着けたカーヴェルが立っている。
私は椅子から移動して彼へと近寄った。
「何かあったの?」
眼鏡の奥の瞳に少しだけ困惑を感じ取る。
そもそも用が無ければ彼は私の元を訪ねたりはしない。
「実は、公爵家の周囲をメイド服姿の娘が徘徊していると報告を受けまして」
「……徘徊メイド?」
私は眉を顰める。それは変質者の類では無いだろうか。
「それで大分長い間うろついていた為門番が声を掛けたら逃げ出したのですが、又戻って来たと相談されまして」
「追い払っても戻って来るという事は公爵家に用が有るのかしら。だったら門番に言えばいいのに」
「顔を青くして逃げるだけなので他の対処も怒鳴って追い払うぐらいしか出来ないと門番は困っておりました」
「誰かに意地悪でやらされているのかもしれないけれど、門番に取って迷惑な話ね」
「私自身でどういう人物か確認しようと思い、先程外に出た所本人から声掛けをされまして」
門番に声掛けされたら逃げ出すのにカーヴェルが出て行ったら自分から近づいてくるのか。
私は名も顔も知らないメイドに少しだけ呆れた。
カーヴェルは穏やかな雰囲気を纏った優し気な男性だから安心したのかもしれないが、門番だって別に怒鳴ってはいないだろうに。
多少厳しい対応をした可能性はあるが不審者でしか無いのだから仕方がない。
「はい、それで彼女はオルソン伯爵家のメイドだと名乗りました」
「……オルソンって、私の実家ね?」
「しかし具体的な用件については口を噤み、奥様と話をさせて欲しいと繰り返すばかりで」
「なので私に会って欲しいって事かしら?」
「いいえ、馬車で伯爵家に送る許可を。徒歩ですと人目に付きますので」
「ああそういうこと」
追い払っても暫くすれば戻って来るなら強制的に送り返せばいい。
カーヴェルはそう考えているのだ。
私はすぐ許可しようと思ったが、少し考えて首を振った。
「それも良いけれど、その前に一度会ってみるわ」
「宜しいのですか」
「脅されている可能性もあるし、本当にオルソン伯爵家のメイドなのか確認したいから」
何より不審者丸出しで公爵邸の近くをうろついていた理由を知りたい。
私がそう言うと面談はなるべく距離を離して行ってくださいとカーヴェルに頼まれた。
そう感じたのは時々伏せられる視線や指先の忙しない動きからだった。
前世の経験からしてこれは言いたいことを隠している場合が高い。
なので彼女が話しやすいようにこちらも隙を作って見せたけれどマーサは結局私に新しい情報を伝えてはこなかった。
だから何を隠しているのかはわからなかった。
「……私の気のせいかもしれないしね」
一人になった部屋で呟く。
用事の時間が迫っていたり、トイレを我慢していたりも考えられる。
私は考えを別の事に切り替えるようにした。聞いてない内容をあれこれ考えても暇潰しにしかならない。
そして私は今暇では無いのだ。
一応ロンの父親であるケビンにロンの状態について報告し確認しておこう。
マーベラ夫人によってロンは自分が将来平民になる事を想定してしまっている。
恐らくそうはならないだろうと思うが父親があのケビンだ。万が一は考えておく必要がある。
それに、当主が平民にするつもり無いと断言してたと告げるのが一番安心出来ると思う。
普通はそうならないとか常識的に有り得ないと説明しても、決定権がケビンにある為どうしても弱い部分が出るのだ。
なので手紙を書いて手紙でロンを平民にしないと言質を取る。
手紙は今日中に書く。
それと画材屋への買い物。こちらは事前確認が色々必要だ。
店舗での購入という事は私たちが店内に入るという事になる。
公爵夫人として外出用ドレス姿の私と子供たちだ。
買い物についてはレオも誘わないと拗ねる可能性があるので声をかけるつもりだ。そして多分文句を言いつつ来る。
当然私と子供二人だけで外出できる筈が無い。
馬車と子供たち付きの侍女と護衛も兼ねた男手が最低限必要になると思う。
図書室で読んだ貴族小説の知識でしか無いけれど。
(……だってエリカは貴族令嬢として外出したのは結婚式の時ぐらいしか無いもの)
その場合馬車を停める場所が近くにあり、更にドレスで歩き回れ貴族とその使用人数人が居ても窮屈にならない広さの店舗を選ぶ必要がある。
でもそんな大きな店は使用人時代お使いに出た先で見たことが無い。
(やっぱり貴族が店頭購入するのって難易度高いわね)
帽子は小さく余り幅を取らないドレスを選んで、使用人は一人ぐらいにすれば行けるだろうか。
「……つまり買い物用の服を買わなきゃいけないって事だわ」
レオにリクエストされた移動式遊園地は広大な敷地を借りている上に貴族や富裕層のみの日を設けたりしているので、そういった意味では楽だった。
質素に見えるロンの願いの方がトータルではお金がかかりそうなのも皮肉だ。決して本人に告げる事はしないけれど。
そんな事を考えていると扉が外から叩かれた。
「奥様、カーヴェルです」
「開けていいわよ」
許可を与えると静かに扉が開いた。
名乗り通り執事服を身に着けたカーヴェルが立っている。
私は椅子から移動して彼へと近寄った。
「何かあったの?」
眼鏡の奥の瞳に少しだけ困惑を感じ取る。
そもそも用が無ければ彼は私の元を訪ねたりはしない。
「実は、公爵家の周囲をメイド服姿の娘が徘徊していると報告を受けまして」
「……徘徊メイド?」
私は眉を顰める。それは変質者の類では無いだろうか。
「それで大分長い間うろついていた為門番が声を掛けたら逃げ出したのですが、又戻って来たと相談されまして」
「追い払っても戻って来るという事は公爵家に用が有るのかしら。だったら門番に言えばいいのに」
「顔を青くして逃げるだけなので他の対処も怒鳴って追い払うぐらいしか出来ないと門番は困っておりました」
「誰かに意地悪でやらされているのかもしれないけれど、門番に取って迷惑な話ね」
「私自身でどういう人物か確認しようと思い、先程外に出た所本人から声掛けをされまして」
門番に声掛けされたら逃げ出すのにカーヴェルが出て行ったら自分から近づいてくるのか。
私は名も顔も知らないメイドに少しだけ呆れた。
カーヴェルは穏やかな雰囲気を纏った優し気な男性だから安心したのかもしれないが、門番だって別に怒鳴ってはいないだろうに。
多少厳しい対応をした可能性はあるが不審者でしか無いのだから仕方がない。
「はい、それで彼女はオルソン伯爵家のメイドだと名乗りました」
「……オルソンって、私の実家ね?」
「しかし具体的な用件については口を噤み、奥様と話をさせて欲しいと繰り返すばかりで」
「なので私に会って欲しいって事かしら?」
「いいえ、馬車で伯爵家に送る許可を。徒歩ですと人目に付きますので」
「ああそういうこと」
追い払っても暫くすれば戻って来るなら強制的に送り返せばいい。
カーヴェルはそう考えているのだ。
私はすぐ許可しようと思ったが、少し考えて首を振った。
「それも良いけれど、その前に一度会ってみるわ」
「宜しいのですか」
「脅されている可能性もあるし、本当にオルソン伯爵家のメイドなのか確認したいから」
何より不審者丸出しで公爵邸の近くをうろついていた理由を知りたい。
私がそう言うと面談はなるべく距離を離して行ってくださいとカーヴェルに頼まれた。
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