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アイリスフィアの章
悪役令嬢アイリスフィア
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「アイリスフィア・エリアル、貴様は公爵令嬢という立場でありながら聖女レノアに嫌がらせをしていたそうだな!
第二王子ジルクの名において王都から追放する!当然僕とお前の婚約も破棄だ!」
「そんな!ジルク様!」
私アイリスフィアは人目も憚らず泣き叫んだ。
今は女神への感謝の式典の最中で、国一番の魔力を持つ聖女レノアを始め王族や貴族たちが大聖堂に会している。
そして聖女の女神へ捧げる祝詞が終わったと同時に第二王子であるジルク様が彼女に近づいたのだ。
それは今から少し前の事で、彼が聖女レノアの華奢な肩を抱いた途端私の中に恐ろしい程の怒りがわき上がった。
身を焼く様な嫉妬心だ。私はここ最近ずっとこの感情に心を掻き乱されていた。
大体半年から一年ほど前からだろうか。まるで自分が自分でないように感情の制御が出来ない。
この神聖な場でさえ自分を抑えきれない。嫉妬に身も心も乗っ取られてしまう。
結果恋敵であるレノアを私は強く睨みつけた。白く長い髪に赤い瞳の美しい少女。
私の一歳年下で今年十七になる。この国の聖職者の中で最高位の聖女。
しかし私にとっては婚約者を横から奪おうとする邪悪な魔女にしか見えない。
そしてそんな私へジルク様が先程の発言をしたのだ。学生時代に彼女に嫌がらせをした記憶は確かにある。
けれどその罪で王都を追放されることよりも、婚約破棄を言い渡される方が何千倍も苦しい。
そしてその苦しみさえ、ジルク様に肩を抱かれているレノアを見ると憎しみに変わってしまう。
私は醜く金切声を上げた。
「ジルク様から離れなさい!この売女!」
私の叫び声に周囲がざわつく。非難の声も聞こえる。
レノアはこの国の最高位の聖女だ。つまり王族と並ぶ程に高貴な女性である。
去年まで在籍していたアリシア貴族学園では私の後輩だったが、今この場で何の免罪符にもならない。
たとえ公爵家の娘であろうと聖女という尊い存在を罵倒すればどうなるか、私には理解できている筈なのに。
どうして私の感情は沸騰し荒ぶり続けるのだろう。喉からは彼女に対する酷い言葉が次々と溢れ出す。
いっそ縄で己の首を強く締めてやりたい。
「王子から離れなさい!じゃないと幾ら貴女でも八つ裂きにするわよレノア!」
「聖女に対し何たる暴言だ!早く彼女を摘み出せ!」
「エリアル公爵令嬢、以前は淑やかで玲瓏な印象でしたけれど……今は狂女にしか見みえませんわ」
私の発言を強く咎め幻滅する声が次々に放たれる。当然だ。神聖な大聖堂で聖女に対し呪いの言葉など。
けれど自分では止められないのだ。ジルク様と女性が親しげにしているだけで怒りと嫉妬で我を失ってしまう。
一年前からだ。その頃からジルク様がレノアと親し始めたせいで彼女が憎くて堪らなかった。
同じ学校であることを利用して酷い嫌がらせも沢山した。
レノアは私を責めなかったけれど、他の生徒たちは私の陰口を散々叩いた。嫉妬狂いの悪役令嬢アイリスフィアと。
でも今日の私の行動は陰口だけでは許されない。式典の最中に聖女を罵倒するなど。
先程ジルク様に告げられた追放刑だけで済むなら寧ろ甘いとさえ感じる。それでも見苦しく私は泣き喚いた。
なんでもするから捨てないで欲しいと婚約者の足に縋りつく。彼の薄緑の瞳が不快気に私を睨んだ。
「お前のような嫉妬深い蛇のような女を妻にできるものか。婚約破棄だアイリスフィア!僕は聖女レノアと結婚する!」
「そんな!ジルク様、貴男に捨てられるぐらいなら死んだ方がましです!」
「ならば今すぐ死ね!お前など目障りだ!消え失せろ!!」
「ああっ」
最悪の人からの容赦ない言葉と蹴りに私は更に泣き崩れた。
こんな私などジルク様に愛されないなら本当に死んでしまうしかない。
彼は床に蹲る私など忘れたように聖女に甘い言葉を囁いている。
そして聖女レノアも美しい声で彼に話しかけた。
「でもアイリ様を薬で洗脳したのはジルク王子ですよね?」
第二王子ジルクの名において王都から追放する!当然僕とお前の婚約も破棄だ!」
「そんな!ジルク様!」
私アイリスフィアは人目も憚らず泣き叫んだ。
今は女神への感謝の式典の最中で、国一番の魔力を持つ聖女レノアを始め王族や貴族たちが大聖堂に会している。
そして聖女の女神へ捧げる祝詞が終わったと同時に第二王子であるジルク様が彼女に近づいたのだ。
それは今から少し前の事で、彼が聖女レノアの華奢な肩を抱いた途端私の中に恐ろしい程の怒りがわき上がった。
身を焼く様な嫉妬心だ。私はここ最近ずっとこの感情に心を掻き乱されていた。
大体半年から一年ほど前からだろうか。まるで自分が自分でないように感情の制御が出来ない。
この神聖な場でさえ自分を抑えきれない。嫉妬に身も心も乗っ取られてしまう。
結果恋敵であるレノアを私は強く睨みつけた。白く長い髪に赤い瞳の美しい少女。
私の一歳年下で今年十七になる。この国の聖職者の中で最高位の聖女。
しかし私にとっては婚約者を横から奪おうとする邪悪な魔女にしか見えない。
そしてそんな私へジルク様が先程の発言をしたのだ。学生時代に彼女に嫌がらせをした記憶は確かにある。
けれどその罪で王都を追放されることよりも、婚約破棄を言い渡される方が何千倍も苦しい。
そしてその苦しみさえ、ジルク様に肩を抱かれているレノアを見ると憎しみに変わってしまう。
私は醜く金切声を上げた。
「ジルク様から離れなさい!この売女!」
私の叫び声に周囲がざわつく。非難の声も聞こえる。
レノアはこの国の最高位の聖女だ。つまり王族と並ぶ程に高貴な女性である。
去年まで在籍していたアリシア貴族学園では私の後輩だったが、今この場で何の免罪符にもならない。
たとえ公爵家の娘であろうと聖女という尊い存在を罵倒すればどうなるか、私には理解できている筈なのに。
どうして私の感情は沸騰し荒ぶり続けるのだろう。喉からは彼女に対する酷い言葉が次々と溢れ出す。
いっそ縄で己の首を強く締めてやりたい。
「王子から離れなさい!じゃないと幾ら貴女でも八つ裂きにするわよレノア!」
「聖女に対し何たる暴言だ!早く彼女を摘み出せ!」
「エリアル公爵令嬢、以前は淑やかで玲瓏な印象でしたけれど……今は狂女にしか見みえませんわ」
私の発言を強く咎め幻滅する声が次々に放たれる。当然だ。神聖な大聖堂で聖女に対し呪いの言葉など。
けれど自分では止められないのだ。ジルク様と女性が親しげにしているだけで怒りと嫉妬で我を失ってしまう。
一年前からだ。その頃からジルク様がレノアと親し始めたせいで彼女が憎くて堪らなかった。
同じ学校であることを利用して酷い嫌がらせも沢山した。
レノアは私を責めなかったけれど、他の生徒たちは私の陰口を散々叩いた。嫉妬狂いの悪役令嬢アイリスフィアと。
でも今日の私の行動は陰口だけでは許されない。式典の最中に聖女を罵倒するなど。
先程ジルク様に告げられた追放刑だけで済むなら寧ろ甘いとさえ感じる。それでも見苦しく私は泣き喚いた。
なんでもするから捨てないで欲しいと婚約者の足に縋りつく。彼の薄緑の瞳が不快気に私を睨んだ。
「お前のような嫉妬深い蛇のような女を妻にできるものか。婚約破棄だアイリスフィア!僕は聖女レノアと結婚する!」
「そんな!ジルク様、貴男に捨てられるぐらいなら死んだ方がましです!」
「ならば今すぐ死ね!お前など目障りだ!消え失せろ!!」
「ああっ」
最悪の人からの容赦ない言葉と蹴りに私は更に泣き崩れた。
こんな私などジルク様に愛されないなら本当に死んでしまうしかない。
彼は床に蹲る私など忘れたように聖女に甘い言葉を囁いている。
そして聖女レノアも美しい声で彼に話しかけた。
「でもアイリ様を薬で洗脳したのはジルク王子ですよね?」
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