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5.結婚の理由
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「あいつら、俺にぐらい行先知らせろよな……つーか安全な場所だけ歩いててくれよ頼むから」
「セシリア様なら今の状態でも野盗ぐらいなら軽くちぎっては投げるでしょう」
「……そうじゃなくなったからあいつは騎士を辞めたんだろうが」
「申し訳ございません、軽口が過ぎました」
俺の言葉にエストが謝罪の言葉を口にする。
「いや別に……俺もセシリアならまあ無事だとは思っているし、繊細が過ぎたわ」
俺の妹は俺なんかよりずっと強い。勝てたことなど一度もない。
何でもお揃いが良いと共に学び始めた剣術と馬術で彼女はあっという間に俺を抜き去って戻ってこなかった。
父が俺たち双子に「性別が逆ならなあ」と嘆いた回数は百を下らないだろう。
俺が女性になったところで理想の淑女になれる筈もないので、あれはセシリアの才覚をひたすら惜しんでいたのだ。
しかしセシリアはそんな父親の不躾な発言など無視して、己の将来をさっさと決めてきた。
第三王女の護衛騎士という職を手に入れたのだ。女学校を首席で卒業した十五歳の時だった。
剣術馬術の才能と女性であることを同時を活かせる上、親も文句がつけられない名誉ある職業。
それを手に入れたセシリアは結婚など見向きもしなかった。
そのつもりで護衛騎士になる前から婚約の話も蹴り続けてきたのだろう。
俺たちに数人いる兄と姉は既に結婚し子供もいる。セシリアが生涯独身でもリード伯爵家の血が絶えることは無い。
仕方ないかと両親が諦めかけた時にその事故は起きた。
セシリアが護衛中だった第三王女の乗る馬車の馬たちが暴走したのだ。
突然目の前に落ちた雷にパニックになったらしい。
そして揺れる車内から逃げ出そうと王女は中から扉を開けた。
結果その華奢な体が地面へ投げ出されそうになったのを自らの馬で並走していたセシリアが助けた
走る馬から飛び降り自らの体をクッション代わりにするという方法でだ。
結果彼女は固い地面に体を強打し何本も骨を折る大怪我を負った。
特に肩を強く打ち付けた為利き腕が急に脱力するという後遺症が残った。
王女は無傷だったが、セシリアを含め何人も重症者が出た酷い事故だった。
セシリアの腕に力が入らなくなるのは日に数度ぐらい。しかし戦いの最中にそれが起これば最悪の事態になる。
だから妹は王女付きの騎士を辞め、リード伯爵家の未婚の次女という立場になったのだ。
涙一つ見せなかった。
王家はそんなセシリアに莫大な治療費と嫁ぎ先を下賜した。
それが俺が今居るアンブローズ公爵家だった。
「セシリア様なら今の状態でも野盗ぐらいなら軽くちぎっては投げるでしょう」
「……そうじゃなくなったからあいつは騎士を辞めたんだろうが」
「申し訳ございません、軽口が過ぎました」
俺の言葉にエストが謝罪の言葉を口にする。
「いや別に……俺もセシリアならまあ無事だとは思っているし、繊細が過ぎたわ」
俺の妹は俺なんかよりずっと強い。勝てたことなど一度もない。
何でもお揃いが良いと共に学び始めた剣術と馬術で彼女はあっという間に俺を抜き去って戻ってこなかった。
父が俺たち双子に「性別が逆ならなあ」と嘆いた回数は百を下らないだろう。
俺が女性になったところで理想の淑女になれる筈もないので、あれはセシリアの才覚をひたすら惜しんでいたのだ。
しかしセシリアはそんな父親の不躾な発言など無視して、己の将来をさっさと決めてきた。
第三王女の護衛騎士という職を手に入れたのだ。女学校を首席で卒業した十五歳の時だった。
剣術馬術の才能と女性であることを同時を活かせる上、親も文句がつけられない名誉ある職業。
それを手に入れたセシリアは結婚など見向きもしなかった。
そのつもりで護衛騎士になる前から婚約の話も蹴り続けてきたのだろう。
俺たちに数人いる兄と姉は既に結婚し子供もいる。セシリアが生涯独身でもリード伯爵家の血が絶えることは無い。
仕方ないかと両親が諦めかけた時にその事故は起きた。
セシリアが護衛中だった第三王女の乗る馬車の馬たちが暴走したのだ。
突然目の前に落ちた雷にパニックになったらしい。
そして揺れる車内から逃げ出そうと王女は中から扉を開けた。
結果その華奢な体が地面へ投げ出されそうになったのを自らの馬で並走していたセシリアが助けた
走る馬から飛び降り自らの体をクッション代わりにするという方法でだ。
結果彼女は固い地面に体を強打し何本も骨を折る大怪我を負った。
特に肩を強く打ち付けた為利き腕が急に脱力するという後遺症が残った。
王女は無傷だったが、セシリアを含め何人も重症者が出た酷い事故だった。
セシリアの腕に力が入らなくなるのは日に数度ぐらい。しかし戦いの最中にそれが起これば最悪の事態になる。
だから妹は王女付きの騎士を辞め、リード伯爵家の未婚の次女という立場になったのだ。
涙一つ見せなかった。
王家はそんなセシリアに莫大な治療費と嫁ぎ先を下賜した。
それが俺が今居るアンブローズ公爵家だった。
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