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19.無関心と好奇心
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立ち去るアンブローズ公爵が遠くなるまで見送り、俺たちは部屋に戻る。
先程のジャムラテの件について抗議しようとしたがエストがその出鼻を挫いてきた。
「やはりセシリア様と公爵はそこまで親しくないですね」
「は?」
「私が奥様はジャムが好きだと言った時、彼は特に反論しなかったでしょう?」
セシリア様は寧ろジャムの類は苦手なのに。
囁く様な小声で言われ、俺は言葉を飲み込む。
エストの発言は事実だ。
彼女は果物は好きだがそれを砂糖や蜂蜜で煮詰めた物は嫌いだった。
甘い物は好きだが甘過ぎる物は胸焼けがするらしい。
セシリアはそのことを別に隠していない。
俺やアイリーンは当然として昔の同級生だった少女たちも知っている筈だ。
在学中好きな食べ物と嫌いな食べ物を三桁近い回数質問されたらしいから。
つまりアリオスと俺の妹は婚約中そんな会話を一切しなかったということだ。
公爵の赤い物を自分の目の前で食べるなという命令も、冷静に考えれば結婚前に言っておくことだ。
妻に迎えるが愛するつもりはないという発言自体もそうだが。
「あの二人、会ってる時どんな話してたんだ……?」
「さあ?」
溜息を吐きながら言うとエストはわからないと首を振った。
「ただ成りすますのが楽なのは確かです」
情報を持っていなければ違う事には気づけないのだから。
メイド服の従者の言葉に俺は少し間を置いて頷く。
確かにそう考えると気が楽になる。
というか公爵とセシリアが親密だったら俺は多分既に偽者だと見破られているだろう。
そもそも親密なら結婚式前に家出はしないか。
しかしそれにしてもお互いの好き嫌いも知らないまま夫婦になるつもりだったのだろうか。
俺がそう言うとエストは茶缶を机に置きながら淡々と返した。
「政略結婚ならそんな関係も珍しくないのでは?」
隣国へ王族が嫁ぐ時など結婚式当日が初顔合わせの場合もあると聞いたことがあります。
割り切った台詞に若干納得出来ないのは俺が幼馴染と婚約していたからか。
俺とアイリーンの婚約も親が決めたもので恋愛結婚ではない。
それでもお互いの好き嫌いは把握しているし、絆を育んだ上で結ばれたいと思っていた。
実際はそう思っていたのは俺だけだった訳だが。
「またしょぼくれた顔をして。折角心配事を減らして差し上げたのに」
「エスト……」
成程、先程の公爵への発言にはそういう意図があったのか。
でももしそれでアリオスがジャムの件が嘘だと気づいたらどうするつもりだったんだろう。
俺が質問すると黒髪の従者は平然と返した。
「そんなの苺ジャムが好きなのはセレスト様の方でした、勘違いしてましたで済みますよ」
「済むかなあ……」
「平然としていればいいんですよ、向うもそこまで興味が無ければ深追いしません」
現に公爵は私の声に一度も突っ込まなかったじゃないですか。
低いハスキーボイスで言われ、俺は確かにと納得した。
「だからあまり興味を持たれる様な真似はしないでくださいね」
「は?」
「公爵にもっと知りたいとか構いたいと思わせるような行動は控えてください」
そんなことをした覚えは無い。寧ろ彼の事は突き放している。
俺の主張をエストは無言で流し、ハーブティーを淹れに行った。
先程のジャムラテの件について抗議しようとしたがエストがその出鼻を挫いてきた。
「やはりセシリア様と公爵はそこまで親しくないですね」
「は?」
「私が奥様はジャムが好きだと言った時、彼は特に反論しなかったでしょう?」
セシリア様は寧ろジャムの類は苦手なのに。
囁く様な小声で言われ、俺は言葉を飲み込む。
エストの発言は事実だ。
彼女は果物は好きだがそれを砂糖や蜂蜜で煮詰めた物は嫌いだった。
甘い物は好きだが甘過ぎる物は胸焼けがするらしい。
セシリアはそのことを別に隠していない。
俺やアイリーンは当然として昔の同級生だった少女たちも知っている筈だ。
在学中好きな食べ物と嫌いな食べ物を三桁近い回数質問されたらしいから。
つまりアリオスと俺の妹は婚約中そんな会話を一切しなかったということだ。
公爵の赤い物を自分の目の前で食べるなという命令も、冷静に考えれば結婚前に言っておくことだ。
妻に迎えるが愛するつもりはないという発言自体もそうだが。
「あの二人、会ってる時どんな話してたんだ……?」
「さあ?」
溜息を吐きながら言うとエストはわからないと首を振った。
「ただ成りすますのが楽なのは確かです」
情報を持っていなければ違う事には気づけないのだから。
メイド服の従者の言葉に俺は少し間を置いて頷く。
確かにそう考えると気が楽になる。
というか公爵とセシリアが親密だったら俺は多分既に偽者だと見破られているだろう。
そもそも親密なら結婚式前に家出はしないか。
しかしそれにしてもお互いの好き嫌いも知らないまま夫婦になるつもりだったのだろうか。
俺がそう言うとエストは茶缶を机に置きながら淡々と返した。
「政略結婚ならそんな関係も珍しくないのでは?」
隣国へ王族が嫁ぐ時など結婚式当日が初顔合わせの場合もあると聞いたことがあります。
割り切った台詞に若干納得出来ないのは俺が幼馴染と婚約していたからか。
俺とアイリーンの婚約も親が決めたもので恋愛結婚ではない。
それでもお互いの好き嫌いは把握しているし、絆を育んだ上で結ばれたいと思っていた。
実際はそう思っていたのは俺だけだった訳だが。
「またしょぼくれた顔をして。折角心配事を減らして差し上げたのに」
「エスト……」
成程、先程の公爵への発言にはそういう意図があったのか。
でももしそれでアリオスがジャムの件が嘘だと気づいたらどうするつもりだったんだろう。
俺が質問すると黒髪の従者は平然と返した。
「そんなの苺ジャムが好きなのはセレスト様の方でした、勘違いしてましたで済みますよ」
「済むかなあ……」
「平然としていればいいんですよ、向うもそこまで興味が無ければ深追いしません」
現に公爵は私の声に一度も突っ込まなかったじゃないですか。
低いハスキーボイスで言われ、俺は確かにと納得した。
「だからあまり興味を持たれる様な真似はしないでくださいね」
「は?」
「公爵にもっと知りたいとか構いたいと思わせるような行動は控えてください」
そんなことをした覚えは無い。寧ろ彼の事は突き放している。
俺の主張をエストは無言で流し、ハーブティーを淹れに行った。
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