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「ああ大丈夫ですよ。俺もイオンもどんな被害に遭ったか互いに知ってますから」
にっこりと笑いながらポプラがとんでもないことを言う。
案の定老執事は驚いた顔をした。
だが一瞬で表情を消したのは流石かもしれない。
「口止め料は断りましたし、ああでもまだ言い触らしはしてないですよ?」
「それは……有難うございます」
「いいえ俺も勉強代だと思ってるので。本当はこいつにも言うつもりなかったんですよね」
そう言いながらポプラがこちらを見て来るので、同意の意味で頷く。
実際彼がイオンたちに酷い目に遭わされていたなんて全く知らなかった。
自分もイオン被害者の会の一員になるまでは。
「でも俺は兎も角こいつは貴族の方とも仲が良いことは忘れない方が良いですよ」
「なっ、ポプラ!」
「事実だろ」
「仲がいいとか……皆大切なお客様でしかないよ。巻き込むのは駄目だ」
俺が少し強めに注意をするとポプラはわかったよとあっさり引き下がった。
確かに父の作るケーキや菓子は貴族たちにも人気がある。
その配達で貴族邸を訪れることはあるが別に個人的に親しい訳では無い。
「……こうやって庶民でしかないこいつですらきっちり線引きは出来るのにね」
執事の方を見ながらポプラは言う。隙あらば相手にプレッシャーをかけている。
この二人は再会させない方が良かったのかもしれないと少しだけ思った。
「俺の事より、公爵令息の健康について話をしましょう」
「申し訳ございません。お願い致します」
空気を切り替えるべく発言すると老執事がどことなく安堵した様子で同意してきた。
彼に同情した訳では無い。単に話をさっさと終わらせたいだけだ。
「別人みたいに体型が変わっていてびっくりしたのですが、食事制限で減量したのですか?」
「そうでございますね……動きやすい体つきになってからは運動もされていましたが」
「しかし短期間であそこまで痩せるとは、どんな食生活にされたのですか?」
俺の質問に老執事は固まった。別にそんなおかしい質問はしていないのにと首を傾げる。
するとポプラが隣りから口を挟んだ。
「もしかして人に言えない物や……薬でも口にしていたとか?」
「そんなことはございません!」
即否定した後で執事は咳払いをした。
そしてポプラが淹れた茶を一口飲むと覚悟したように口を開く。
「実は……アリオ様の店のケーキや菓子を好んで食べていらっしゃいました」
「は?」
俺はあんぐりと口を開けた。それは初耳過ぎる。
あの事件以来ゴールディング家に俺が配達に行ったことは無い。
父や姉にも何も言われていない。
それとも俺に黙って依頼を受けていたのだろうか。相手は貴族だ。
逆らえなくても仕方がない。
「アリオ……」
気遣うようなポプラの声に俺は首を振った。
「大丈夫だよ、父さんも姉さんも俺を気遣って黙ってただけだろうから」
「ああ……いいえ、違うのです」
俺の台詞に心底困惑したような声が返答する。
視線を移動すると眉を下げた老紳士が申し訳なさを顔に浮かべていた。
「……実はゴールディング公爵家からの注文は断固として断ると店主に言われた為、変装させた使用人にこっそり購入させていました」
「うわ最低」
項垂れる老執事の頭に容赦ないポプラの言葉が突き刺さる幻覚が見えた。
にっこりと笑いながらポプラがとんでもないことを言う。
案の定老執事は驚いた顔をした。
だが一瞬で表情を消したのは流石かもしれない。
「口止め料は断りましたし、ああでもまだ言い触らしはしてないですよ?」
「それは……有難うございます」
「いいえ俺も勉強代だと思ってるので。本当はこいつにも言うつもりなかったんですよね」
そう言いながらポプラがこちらを見て来るので、同意の意味で頷く。
実際彼がイオンたちに酷い目に遭わされていたなんて全く知らなかった。
自分もイオン被害者の会の一員になるまでは。
「でも俺は兎も角こいつは貴族の方とも仲が良いことは忘れない方が良いですよ」
「なっ、ポプラ!」
「事実だろ」
「仲がいいとか……皆大切なお客様でしかないよ。巻き込むのは駄目だ」
俺が少し強めに注意をするとポプラはわかったよとあっさり引き下がった。
確かに父の作るケーキや菓子は貴族たちにも人気がある。
その配達で貴族邸を訪れることはあるが別に個人的に親しい訳では無い。
「……こうやって庶民でしかないこいつですらきっちり線引きは出来るのにね」
執事の方を見ながらポプラは言う。隙あらば相手にプレッシャーをかけている。
この二人は再会させない方が良かったのかもしれないと少しだけ思った。
「俺の事より、公爵令息の健康について話をしましょう」
「申し訳ございません。お願い致します」
空気を切り替えるべく発言すると老執事がどことなく安堵した様子で同意してきた。
彼に同情した訳では無い。単に話をさっさと終わらせたいだけだ。
「別人みたいに体型が変わっていてびっくりしたのですが、食事制限で減量したのですか?」
「そうでございますね……動きやすい体つきになってからは運動もされていましたが」
「しかし短期間であそこまで痩せるとは、どんな食生活にされたのですか?」
俺の質問に老執事は固まった。別にそんなおかしい質問はしていないのにと首を傾げる。
するとポプラが隣りから口を挟んだ。
「もしかして人に言えない物や……薬でも口にしていたとか?」
「そんなことはございません!」
即否定した後で執事は咳払いをした。
そしてポプラが淹れた茶を一口飲むと覚悟したように口を開く。
「実は……アリオ様の店のケーキや菓子を好んで食べていらっしゃいました」
「は?」
俺はあんぐりと口を開けた。それは初耳過ぎる。
あの事件以来ゴールディング家に俺が配達に行ったことは無い。
父や姉にも何も言われていない。
それとも俺に黙って依頼を受けていたのだろうか。相手は貴族だ。
逆らえなくても仕方がない。
「アリオ……」
気遣うようなポプラの声に俺は首を振った。
「大丈夫だよ、父さんも姉さんも俺を気遣って黙ってただけだろうから」
「ああ……いいえ、違うのです」
俺の台詞に心底困惑したような声が返答する。
視線を移動すると眉を下げた老紳士が申し訳なさを顔に浮かべていた。
「……実はゴールディング公爵家からの注文は断固として断ると店主に言われた為、変装させた使用人にこっそり購入させていました」
「うわ最低」
項垂れる老執事の頭に容赦ないポプラの言葉が突き刺さる幻覚が見えた。
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