女運の悪い悪役令息が不憫過ぎるので構ってみたら懐かれた件

砂礫レキ

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「ごめんポプラ、急に押しかけてきて」
「気にすんなよ。寧ろすぐ頼ってくれた方が楽で助かる」

 お前は抱え込みやすいから。
 そう親友に言われ俺は否定も肯定も出来ず苦笑いを浮かべた。

 イオンが急激なダイエットの結果過食してリバウンドを起こしかけてる。
 俺の推測に老執事が予想以上に食いついてきた。
 そして解決策はないかと尋ねて来たのだ。
 
 当然俺は医者じゃない。前世も今もだ。
 ただ豊かな食糧や美味な食事に恵まれた前世では肥満は大きな問題だった。 
 パティシェだった俺にも他人ごとではない。
 甘いものが食べたい、でも太りたくはない。そう考える人が多かったからだ。
 だから素人ながらに栄養学の本やダイエットに関する本も読んだ。しかし数冊程度だ。

 でもこの世界ではその数冊程度の知識すらレアらしい。
 理由はあって、まず平民は肥満を気にする程豊かな食事と怠惰な生活が出来ない。
 よく食べる者はその分よく働く。

 確かに貴族令嬢は体重を非常に気にしている。
 でも彼女たちは太らない努力をしている。ドレスが入らなくなるかららしい。
 太ったから痩せたいではなく、太らない為に低カロリーの菓子を求めるのだ。

 当然太ったら減量しているだろうがイオン程太った人間は恐らくこの国にはいない。
 そこから急激に痩せた者も。
 ならダイエットやリバウンドについてはそこまで研究されていないだろう。
 
 話だけでもと食い下がられ、じゃあどこで話すかと悩んだ結果俺は一人暮らしのポプラを頼った。

 喫茶店で出来る話でもないし自宅には伴いたくない、ゴールディング公爵家についていくのは絶対嫌だ。
 そこで浮かんだのが徒歩数分の場所にある親友の家だった。
 
 断られても仕方ないと思いながらを戸を叩きポプラに事情を話すとあっさりと中に入れて貰えた。
 そして驚いたのはポプラと老執事が顔見知りだったことだ。

 ただポプラは意味深な愛想笑いを浮かべていたし執事の方は気まずそうな表情をしていた。
 そういえば彼も花の注文の件でディエとイオンに迷惑をかけられたのだと思い出したのは椅子に座ってからだった。

「いやあ、久しぶりですねラルズさん」

 三人分のティーカップをテーブルに置いたポプラは対面の老紳士に微笑む。
 俺はその時初めてイオンの執事の名前を知った。

「まさかお二人が知己だったとは……」  
「ええ、ガキの頃からの親友なんですよ。しかしまさかイオンまでとはねえ」
「本当に重ね重ね申し訳ございません……」
「謝罪は結構です。何もしてない人に謝って貰う意味無いんで」

 整った口元は完璧な笑みが張り付いているのに言葉は氷のようだ。
 子供の頃からの付き合いな親友の知らない一面を見てしまった。
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