52 / 73
52.
しおりを挟む
「ごめんポプラ、急に押しかけてきて」
「気にすんなよ。寧ろすぐ頼ってくれた方が楽で助かる」
お前は抱え込みやすいから。
そう親友に言われ俺は否定も肯定も出来ず苦笑いを浮かべた。
イオンが急激なダイエットの結果過食してリバウンドを起こしかけてる。
俺の推測に老執事が予想以上に食いついてきた。
そして解決策はないかと尋ねて来たのだ。
当然俺は医者じゃない。前世も今もだ。
ただ豊かな食糧や美味な食事に恵まれた前世では肥満は大きな問題だった。
パティシェだった俺にも他人ごとではない。
甘いものが食べたい、でも太りたくはない。そう考える人が多かったからだ。
だから素人ながらに栄養学の本やダイエットに関する本も読んだ。しかし数冊程度だ。
でもこの世界ではその数冊程度の知識すらレアらしい。
理由はあって、まず平民は肥満を気にする程豊かな食事と怠惰な生活が出来ない。
よく食べる者はその分よく働く。
確かに貴族令嬢は体重を非常に気にしている。
でも彼女たちは太らない努力をしている。ドレスが入らなくなるかららしい。
太ったから痩せたいではなく、太らない為に低カロリーの菓子を求めるのだ。
当然太ったら減量しているだろうがイオン程太った人間は恐らくこの国にはいない。
そこから急激に痩せた者も。
ならダイエットやリバウンドについてはそこまで研究されていないだろう。
話だけでもと食い下がられ、じゃあどこで話すかと悩んだ結果俺は一人暮らしのポプラを頼った。
喫茶店で出来る話でもないし自宅には伴いたくない、ゴールディング公爵家についていくのは絶対嫌だ。
そこで浮かんだのが徒歩数分の場所にある親友の家だった。
断られても仕方ないと思いながらを戸を叩きポプラに事情を話すとあっさりと中に入れて貰えた。
そして驚いたのはポプラと老執事が顔見知りだったことだ。
ただポプラは意味深な愛想笑いを浮かべていたし執事の方は気まずそうな表情をしていた。
そういえば彼も花の注文の件でディエとイオンに迷惑をかけられたのだと思い出したのは椅子に座ってからだった。
「いやあ、久しぶりですねラルズさん」
三人分のティーカップをテーブルに置いたポプラは対面の老紳士に微笑む。
俺はその時初めてイオンの執事の名前を知った。
「まさかお二人が知己だったとは……」
「ええ、ガキの頃からの親友なんですよ。しかしまさかイオンまでとはねえ」
「本当に重ね重ね申し訳ございません……」
「謝罪は結構です。何もしてない人に謝って貰う意味無いんで」
整った口元は完璧な笑みが張り付いているのに言葉は氷のようだ。
子供の頃からの付き合いな親友の知らない一面を見てしまった。
「気にすんなよ。寧ろすぐ頼ってくれた方が楽で助かる」
お前は抱え込みやすいから。
そう親友に言われ俺は否定も肯定も出来ず苦笑いを浮かべた。
イオンが急激なダイエットの結果過食してリバウンドを起こしかけてる。
俺の推測に老執事が予想以上に食いついてきた。
そして解決策はないかと尋ねて来たのだ。
当然俺は医者じゃない。前世も今もだ。
ただ豊かな食糧や美味な食事に恵まれた前世では肥満は大きな問題だった。
パティシェだった俺にも他人ごとではない。
甘いものが食べたい、でも太りたくはない。そう考える人が多かったからだ。
だから素人ながらに栄養学の本やダイエットに関する本も読んだ。しかし数冊程度だ。
でもこの世界ではその数冊程度の知識すらレアらしい。
理由はあって、まず平民は肥満を気にする程豊かな食事と怠惰な生活が出来ない。
よく食べる者はその分よく働く。
確かに貴族令嬢は体重を非常に気にしている。
でも彼女たちは太らない努力をしている。ドレスが入らなくなるかららしい。
太ったから痩せたいではなく、太らない為に低カロリーの菓子を求めるのだ。
当然太ったら減量しているだろうがイオン程太った人間は恐らくこの国にはいない。
そこから急激に痩せた者も。
ならダイエットやリバウンドについてはそこまで研究されていないだろう。
話だけでもと食い下がられ、じゃあどこで話すかと悩んだ結果俺は一人暮らしのポプラを頼った。
喫茶店で出来る話でもないし自宅には伴いたくない、ゴールディング公爵家についていくのは絶対嫌だ。
そこで浮かんだのが徒歩数分の場所にある親友の家だった。
断られても仕方ないと思いながらを戸を叩きポプラに事情を話すとあっさりと中に入れて貰えた。
そして驚いたのはポプラと老執事が顔見知りだったことだ。
ただポプラは意味深な愛想笑いを浮かべていたし執事の方は気まずそうな表情をしていた。
そういえば彼も花の注文の件でディエとイオンに迷惑をかけられたのだと思い出したのは椅子に座ってからだった。
「いやあ、久しぶりですねラルズさん」
三人分のティーカップをテーブルに置いたポプラは対面の老紳士に微笑む。
俺はその時初めてイオンの執事の名前を知った。
「まさかお二人が知己だったとは……」
「ええ、ガキの頃からの親友なんですよ。しかしまさかイオンまでとはねえ」
「本当に重ね重ね申し訳ございません……」
「謝罪は結構です。何もしてない人に謝って貰う意味無いんで」
整った口元は完璧な笑みが張り付いているのに言葉は氷のようだ。
子供の頃からの付き合いな親友の知らない一面を見てしまった。
190
あなたにおすすめの小説
四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。
とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて──
「運命だ。結婚しよう」
「……敵だよ?」
「ああ。障壁は付き物だな」
勇者×ゴブリン
超短編BLです。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される
あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。
推し様たちを法廷で守ったら気に入られちゃいました!?〜前世で一流弁護士の僕が華麗に悪役を弁護します〜
ホノム
BL
下級兵の僕はある日一流弁護士として生きた前世を思い出した。
――この世界、前世で好きだったBLゲームの中じゃん!
ここは「英雄族」と「ヴィラン族」に分かれて二千年もの間争っている世界で、ヴィランは迫害され冤罪に苦しむ存在――いやっ僕ヴィランたち全員箱推しなんですけど。
これは見過ごせない……! 腐敗した司法、社交界の陰謀、国家規模の裁判戦争――全てを覆して〝弁護人〟として推したちを守ろうとしたら、推し皆が何やら僕の周りで喧嘩を始めて…?
ちょっと困るって!これは法的事案だよ……!
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる