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まあ顔すら知らない公爵夫人の思惑を想像しても不毛なだけだ。
今のイオンは十六歳。大人とは言えないが子供と言うほど幼くも無い。
十一歳当時なら兎も角今の彼の体型については自己責任の範疇だろう。
「無事減量に成功して良かったと思います。弛みなども無いみたいですし」
若いからだろうか。それともこの世界の住民の肌が特殊だったりするのかもしれない。
魔法も魔物もある世界だし。
俺の祝う言葉にしかし老執事は物憂げな表情をした。
まるで外国のベテラン俳優のように絵になる。
皺が刻まれつつも整った顔立ちだ。昔はさぞかし女性に騒がれただろう。
「有難うございます。ですが先日から突然ケーキを以前食べていた物に戻すよう命じられまして……」
「又太るじゃん」
ポプラの指摘に老執事は頷く。
「はい、びっくりする程の速さで体が大きくなって……もしかしたら以前よりも」
「……カロリー制限した結果、燃費が良くなったんだ」
思わず呟く。つまり今のイオンは太りやすい体質になっている。
その上でダイエット前と同じ食生活に戻したら更に太る可能性は高い。
「それだけでなく……ケーキを苦しそうに口に詰め込んでいるのです、これは初めてのことで」
「完全に過食だよ、医者連れてけ!」
敬語を忘れ老執事に怒鳴る。流石にそれは身内が止めろと思う。
食べたくないのに無理やり食べているという状況はまともではない。
「医師には胃薬を処方されていますが……?」
「そうじゃなくて……」
この国には精神科が無いことに今更気づく。
せいぜいハーブティーで気分を落ち着かせましょう程度だ。
過食という概念も多分無い。
前世病で苦しんでるなら過去の記憶消しちゃおうぜとか貴族が考えるレベルだ。精神の問題が軽視されがちである。
「……食べたくないのに無理して食べている理由に心当たりはありますか?」
腹に何か入ってないと不安とか言われたら俺にはどうしようもできないなと思いながら質問する。
しかし彼の回答は全く予想外の物だった。
「実は婚約者様に、以前のふくよかな姿の方が素敵だったと言われたらしいのです」
「絶対嘘だ」
ポプラが光の速さで否定する。俺も完全に同意見だった。
ディエが白豚貴族と言われてた時のイオンの姿を素敵だと思う?絶対無い。
彼女は面食いだ。
恋愛ゲーム「恋と騎士と冒険と」で婚約者イオンを捨てて乗り換えた男性陣は全員美形だった。
ゲーム主人公に対しても容姿の高さを求めて来る。容姿のパラメーターが低い時話しかけても無視して去ってしまう。
ギャルゲー内の設定だけじゃない。この世界でも彼女は乗り換え先候補にポプラとついでに俺を選ぼうとした。
ポプラは誰もが認める長身イケメンだし俺も肥満体型ではない。
デイエがイオンレベルでふくよかな男性が好みならグイグイ来る筈が無いのだ。ポプラも俺もイオン並みの地位も金も無いし。
別に彼女が面食いなのは構わない。イオンだって顔でディエを選んだのだろうしお互い様だ。
でもだからこそ俺はイオンに対しディエに好かれたいなら痩せるようにアドバイスしたのだ。
彼女がスタイルの良い美男子が好きだと知っていたから。
「そのディエって女、俺やアリオに迫って来たぞ。太った男が好きだなんて有り得ない」
「ちょっ、ポプラ!」
そんな風に不審がっている俺の横でポプラはあっさりと爆弾発言をした。
今のイオンは十六歳。大人とは言えないが子供と言うほど幼くも無い。
十一歳当時なら兎も角今の彼の体型については自己責任の範疇だろう。
「無事減量に成功して良かったと思います。弛みなども無いみたいですし」
若いからだろうか。それともこの世界の住民の肌が特殊だったりするのかもしれない。
魔法も魔物もある世界だし。
俺の祝う言葉にしかし老執事は物憂げな表情をした。
まるで外国のベテラン俳優のように絵になる。
皺が刻まれつつも整った顔立ちだ。昔はさぞかし女性に騒がれただろう。
「有難うございます。ですが先日から突然ケーキを以前食べていた物に戻すよう命じられまして……」
「又太るじゃん」
ポプラの指摘に老執事は頷く。
「はい、びっくりする程の速さで体が大きくなって……もしかしたら以前よりも」
「……カロリー制限した結果、燃費が良くなったんだ」
思わず呟く。つまり今のイオンは太りやすい体質になっている。
その上でダイエット前と同じ食生活に戻したら更に太る可能性は高い。
「それだけでなく……ケーキを苦しそうに口に詰め込んでいるのです、これは初めてのことで」
「完全に過食だよ、医者連れてけ!」
敬語を忘れ老執事に怒鳴る。流石にそれは身内が止めろと思う。
食べたくないのに無理やり食べているという状況はまともではない。
「医師には胃薬を処方されていますが……?」
「そうじゃなくて……」
この国には精神科が無いことに今更気づく。
せいぜいハーブティーで気分を落ち着かせましょう程度だ。
過食という概念も多分無い。
前世病で苦しんでるなら過去の記憶消しちゃおうぜとか貴族が考えるレベルだ。精神の問題が軽視されがちである。
「……食べたくないのに無理して食べている理由に心当たりはありますか?」
腹に何か入ってないと不安とか言われたら俺にはどうしようもできないなと思いながら質問する。
しかし彼の回答は全く予想外の物だった。
「実は婚約者様に、以前のふくよかな姿の方が素敵だったと言われたらしいのです」
「絶対嘘だ」
ポプラが光の速さで否定する。俺も完全に同意見だった。
ディエが白豚貴族と言われてた時のイオンの姿を素敵だと思う?絶対無い。
彼女は面食いだ。
恋愛ゲーム「恋と騎士と冒険と」で婚約者イオンを捨てて乗り換えた男性陣は全員美形だった。
ゲーム主人公に対しても容姿の高さを求めて来る。容姿のパラメーターが低い時話しかけても無視して去ってしまう。
ギャルゲー内の設定だけじゃない。この世界でも彼女は乗り換え先候補にポプラとついでに俺を選ぼうとした。
ポプラは誰もが認める長身イケメンだし俺も肥満体型ではない。
デイエがイオンレベルでふくよかな男性が好みならグイグイ来る筈が無いのだ。ポプラも俺もイオン並みの地位も金も無いし。
別に彼女が面食いなのは構わない。イオンだって顔でディエを選んだのだろうしお互い様だ。
でもだからこそ俺はイオンに対しディエに好かれたいなら痩せるようにアドバイスしたのだ。
彼女がスタイルの良い美男子が好きだと知っていたから。
「そのディエって女、俺やアリオに迫って来たぞ。太った男が好きだなんて有り得ない」
「ちょっ、ポプラ!」
そんな風に不審がっている俺の横でポプラはあっさりと爆弾発言をした。
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