女運の悪い悪役令息が不憫過ぎるので構ってみたら懐かれた件

砂礫レキ

文字の大きさ
5 / 73

5.このチンピラ様子がおかしい

しおりを挟む
 ゲームでは常にディエの隣に居たがる彼だが今は寧ろコソコソと隠れている。
 イオンらしくない行動に俺は首を傾げたが、暫くして気づいた。
 
 そういやディエが港でチンピラに襲われるのはこいつの差し金だった。
 イオンを前にしたディエは嫌々婚約しているという態度を隠さなかった。
 相手は白豚貴族だ。嫌な気持ちはわかるがだったら婚約しなきゃいいのにと思うほどに。

 そんな彼女に惚れて貰う為にイオンは山程のプレゼントを贈ったり彼女を金と権力で劇のヒロインにしようとする。
 プライドを傷つけられたディエは結果イオンのことを益々嫌うようになり彼の支配から助けてくれる男性を求めるようになるのだが。

 こんな感じでイオンは卑怯な事を卑怯だと理解せず行う。
 親の権力と金の力で美少女と婚約し、その力で美少女に惚れて貰おうと迷走する。
 ゲームの冒頭でディエに絡むチンピラたちもイオンが雇った連中だ。

 何でそんなことをするのかというと彼女を颯爽と救って惚れて貰う為だ。
 完全なマッチポンプだし杜撰過ぎる計画はディエにも即見破られ益々嫌われることになる。

「分からない方がおかしいよなあ……」

 コンテナの陰に隠れているイオンの隣では完全武装した騎士が何名か同じ姿勢で隠れている。
 ちょっとした不審者集団だ。港警察に通報してやろうかと思う程に。

 たまたま騎士を連れたイオンがたまたまチンピラに絡まれている自分を助けてくれたなんてディエは思わないだろう。
 寧ろそう信じてしまうような単純な娘ならイオンと幸せになれたかもしれないが。

 そんなことを考えているとこちらもわかりやすくガラの悪いチンピラ二名が歩いてきた。どこか見覚えのある紙袋を持っている。
 モヒカンなんて髪型してるのこの国ではそいつらだけじゃないだろうか。なので彼らもディエやイオンと同じぐらいインパクトが強い。
 だからすぐ気づいた。

「あ、あいつら、パル目当てに良く店に来る常連たちじゃないか……!」

 どういう繋がりだよ。思わず突っ込みを入れる。
 彼らは三日に一回はブルーム菓子店に来て何か買っていく。
 パルの時は大量に買っていくが俺や父親が店番だとパンやクッキー一個だったりするので目当てが何かわかりやすい連中だった。

 どこにそんな金があるのかと疑問だったが金持ちに雇われて悪さをしていたなら納得だ。
 いやまだあの二人がイオンの指示でディエをナンパするとは。

「おいお嬢ちゃん、パン食わねぇか」
「えっ」
「ケーキやクッキーもあるぞ、俺らと一緒に食おうぜ」
「あ、あのダイエット中なので結構です……」
「うるせぇ、女の子はもっとムチムチになれ!」
「いやっ、止めてください!誰か……助けてぇ!」

「お前らうちの店の商品で何やってんだボケェ!!」

 俺は思わずチンピラを怒鳴りつけていた。
 いやマジ何やってんだあいつら。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。 とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて── 「運命だ。結婚しよう」 「……敵だよ?」 「ああ。障壁は付き物だな」 勇者×ゴブリン 超短編BLです。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される

あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。

推し様たちを法廷で守ったら気に入られちゃいました!?〜前世で一流弁護士の僕が華麗に悪役を弁護します〜

ホノム
BL
下級兵の僕はある日一流弁護士として生きた前世を思い出した。 ――この世界、前世で好きだったBLゲームの中じゃん! ここは「英雄族」と「ヴィラン族」に分かれて二千年もの間争っている世界で、ヴィランは迫害され冤罪に苦しむ存在――いやっ僕ヴィランたち全員箱推しなんですけど。 これは見過ごせない……! 腐敗した司法、社交界の陰謀、国家規模の裁判戦争――全てを覆して〝弁護人〟として推したちを守ろうとしたら、推し皆が何やら僕の周りで喧嘩を始めて…? ちょっと困るって!これは法的事案だよ……!

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

処理中です...