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19.せめてデッドエンドは回避して欲しい
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他者にはあれ程までに傲慢なのに、ディエに対してこの悪役令息は随分と弱気だ。
金で強引に婚約した癖に嫌われたくないという感情に支配されている。恋の奴隷状態だ。
ここまで都合の良い婚約者がいるのにディエはよく俺みたいな平民に乗り換えようとしたと半分呆れる。
わかっている。好き嫌いは損得では決められない。
何よりイオンには分かりやすい欠点がある。偉そうで暴走しがちな性格もだが、最大の問題は。
「なら、まずイメージチェンジをしてみるのはどうでしょうか」
俺の提案にイオンは驚いた顔をする。
別にそこまで奇抜な事を言ったつもりはない。何故ならイオンの問題点はとても分かりやすい。
「たとえば体重を……少し減らしてみるとか」
少しと言うか大分減らした方が良い。俺はイオンの丸々とした体を見ながら内心呟いた。
こういう体型を好む人間もいるだろう。でもディエは確実に違う。
ゲーム内で彼女がイオンから乗り越えた相手は主人公含め全員均整の取れた体格の男性だった。
そして現実でも彼女が乗り換え先として俺を品定めしてきた。
判断基準は体格だけじゃないかもしれない。
本当はディエ本人にイオンへの不満を問い質すのが確実だ。でもそれはやりたくないと言う。
だったら消去法を試すしかない。
そして真っ先に消すべきはイオンの贅肉だと俺は判断した。
痩せたらイオンの白豚貴族という個性が消えるかもしれないが、今いる場所はゲームではなく現実だ。豚キャラに執着する必要はない。
「イオン様は持ってないというより、持ちすぎているのだと思います」
「持ちすぎている……僕が恵まれすぎているということか?」
「……まあ、そういう部分もあるとは思いますが」
イオンの発言に心中で呆れながら俺は返答した。
確かにイオンが恵まれ過ぎているのは事実だ。家柄が良く、なのに惚れた相手との婚約を許して貰える程親に溺愛されている。
ディエは元騎士の娘だが今は貧しい平民と変わらない。
騎士の娘が公爵令息と婚約することさえ玉の輿扱いされるだろう。それぐらいは平民の俺でも知っている。
ディエの父は怪我が原因で騎士から無職で借金持ちになった。
ゲーム内では昼から酒浸りで娘に働かせて暮らしているような駄目人間だった。
そんな父親を持つディエを借金ごと囲い込んで妻にするなんて計画、貴族の親なら普通は止める。
嫌な話だがどうしてもというなら愛人にするよう持ち掛ける筈だ。十六歳のイオンにそんな生臭い話をするかは謎だけれど。
ゴールディング公爵家がどういう判断をしたのかはわからない。
ただ分かるのはディエは今イオンの愛人ではなく正式な婚約者という事実だけだ。
このまま関係が上手く行けばイオンは身分を気にせず好きな人と結婚出来る筈だった。
そうなった光景など俺はゲーム内で一度も見たこと無かったが。
そしてこの世界でもイオンとディエの幸せな結婚式が見られる可能性は限りなく低く思えた。
「ディエさんは恐らく、太り過ぎてない男性の方が好みです」
これは事実だと思う。ディエがゲーム内で最終的に選んだ男たちは皆そうだった。ついでに顔も良かった。
主人公だけは前髪で目が隠れていたからよく分からないが不細工ではないだろう。
そして今のイオンは美形以前の状態だ。丸々と太った人間が好みで無ければ異性扱いするのも難しい。
寧ろ人間として嫌悪感を抱く者もいるかもしれない。
更にイオンの身長は高い方なので女性なら縦にも横にも大きい彼に恐怖を感じてもおかしくない。
「それに健康の為にも痩せた方が良いですよ。体が重いと転んだ時にダメージが大きいらしいので」
実際落下時のダメージが大きすぎてゲーム内のイオンは死んだわけだし。
俺は心の中で呟いた。
金で強引に婚約した癖に嫌われたくないという感情に支配されている。恋の奴隷状態だ。
ここまで都合の良い婚約者がいるのにディエはよく俺みたいな平民に乗り換えようとしたと半分呆れる。
わかっている。好き嫌いは損得では決められない。
何よりイオンには分かりやすい欠点がある。偉そうで暴走しがちな性格もだが、最大の問題は。
「なら、まずイメージチェンジをしてみるのはどうでしょうか」
俺の提案にイオンは驚いた顔をする。
別にそこまで奇抜な事を言ったつもりはない。何故ならイオンの問題点はとても分かりやすい。
「たとえば体重を……少し減らしてみるとか」
少しと言うか大分減らした方が良い。俺はイオンの丸々とした体を見ながら内心呟いた。
こういう体型を好む人間もいるだろう。でもディエは確実に違う。
ゲーム内で彼女がイオンから乗り越えた相手は主人公含め全員均整の取れた体格の男性だった。
そして現実でも彼女が乗り換え先として俺を品定めしてきた。
判断基準は体格だけじゃないかもしれない。
本当はディエ本人にイオンへの不満を問い質すのが確実だ。でもそれはやりたくないと言う。
だったら消去法を試すしかない。
そして真っ先に消すべきはイオンの贅肉だと俺は判断した。
痩せたらイオンの白豚貴族という個性が消えるかもしれないが、今いる場所はゲームではなく現実だ。豚キャラに執着する必要はない。
「イオン様は持ってないというより、持ちすぎているのだと思います」
「持ちすぎている……僕が恵まれすぎているということか?」
「……まあ、そういう部分もあるとは思いますが」
イオンの発言に心中で呆れながら俺は返答した。
確かにイオンが恵まれ過ぎているのは事実だ。家柄が良く、なのに惚れた相手との婚約を許して貰える程親に溺愛されている。
ディエは元騎士の娘だが今は貧しい平民と変わらない。
騎士の娘が公爵令息と婚約することさえ玉の輿扱いされるだろう。それぐらいは平民の俺でも知っている。
ディエの父は怪我が原因で騎士から無職で借金持ちになった。
ゲーム内では昼から酒浸りで娘に働かせて暮らしているような駄目人間だった。
そんな父親を持つディエを借金ごと囲い込んで妻にするなんて計画、貴族の親なら普通は止める。
嫌な話だがどうしてもというなら愛人にするよう持ち掛ける筈だ。十六歳のイオンにそんな生臭い話をするかは謎だけれど。
ゴールディング公爵家がどういう判断をしたのかはわからない。
ただ分かるのはディエは今イオンの愛人ではなく正式な婚約者という事実だけだ。
このまま関係が上手く行けばイオンは身分を気にせず好きな人と結婚出来る筈だった。
そうなった光景など俺はゲーム内で一度も見たこと無かったが。
そしてこの世界でもイオンとディエの幸せな結婚式が見られる可能性は限りなく低く思えた。
「ディエさんは恐らく、太り過ぎてない男性の方が好みです」
これは事実だと思う。ディエがゲーム内で最終的に選んだ男たちは皆そうだった。ついでに顔も良かった。
主人公だけは前髪で目が隠れていたからよく分からないが不細工ではないだろう。
そして今のイオンは美形以前の状態だ。丸々と太った人間が好みで無ければ異性扱いするのも難しい。
寧ろ人間として嫌悪感を抱く者もいるかもしれない。
更にイオンの身長は高い方なので女性なら縦にも横にも大きい彼に恐怖を感じてもおかしくない。
「それに健康の為にも痩せた方が良いですよ。体が重いと転んだ時にダメージが大きいらしいので」
実際落下時のダメージが大きすぎてゲーム内のイオンは死んだわけだし。
俺は心の中で呟いた。
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