16 / 40
15.使えない女(サディアスside)
しおりを挟む
「クソッ、オスカーめ!たかが第二王子の分際でっ!!」
ヒステリックな怒声と共に真っ白な壁にワイン入りのグラスが叩きつけられる。
王太子専用の豪華な私室でサディアスは怒りに形相を歪めていた。
アラベラを抱きかかえたオスカーが舞踏会場を去った後、そこに祝賀ムードは一切残っていなかった。
この国で唯一の王太子サディアスが、無事生誕した祝いの日だというのに。
ヴェルデンだってその重要性を理解しているから第二王子オスカーをこの宴に参加させたのではないか。
なのに、あの男は祝うどころか王太子であるサディアスにに平然と暴力を振るってきた。
「宗主国の王子であることを笠に着てやりたい放題、王になど決してなれない癖に……!!」
サディアスは服越しに己の肌を撫でる。
治療は受け、エミリに調合させた痛み止めも飲んでいる。
しかし人前で殴られ嘔吐した屈辱は消えない。奥歯をぎりりと噛み締める。
グラスは割ってしまったのでサディアスは瓶から直接ワインを煽った。
「エミリめ、酒は飲むななどと俺に命令しやがって」
平民の分際で。そう言いながらサディアスは口と喉をワインで汚した。
薬の効き目が弱くなるとか言っていたが、そんなことはどうでもいい。
なら酒を飲んでも問題ない薬を調合すればいいだけなのだ。
それすらせず王太子である自分の行動を制限しようとするから殴って教育する羽目になった。
「あいつはまだ使えるし従順な女だからな、一発だけですませてやったが」
そう言い捨てるとシャツの袖で口元を拭いサディアスはげっぷをした。
エミリに傷を手当すると言われ共に舞踏会場を去った。
だが戻る気もない。エミリも醜く顔を腫らしているから部屋から追い出したし。
元の顔に戻るまで連れ歩きたくない。
自分がこのまま会場に戻らなくても誰かが適当に終わらせて解散するだろう。大人たちがそうしてくれる。
サディアスは当たり前のようにそう思った。
周囲の人間はサディアスに都合の良いように動くのが当然なのだ。
唯一の王太子である自分に王以外が意見などしてはならない。本当は父親にだって意見を許したくなかった。
なのにアラベラは何度もその禁止行為を繰り返してきた。
人の話は最後まで聞かなければいけない。
身分が下の相手だからという理由で簡単に暴力をふるってはいけない。
授業は真面目に受けなければいけない。人に仕事を押し付けてはいけない。
小動物を虐めて殺してはいけない。他国の来賓の前で癇癪を起してはいけない
最初は何時間でも見て居られると思った綺麗で可愛らしい顔が目障りになった。
飼ってきたどの小鳥よりも軽やかで耳に心地良かった声が、熱した鉄で喉を焼きたくなる程鬱陶しくなった。
生意気な女は抱けば大人しくなると聞いて、そうしようと思ったら泣いて暴れられた。
抵抗されるとは思っていなくて、全力で突き飛ばされ転び気づけば城の庭で気絶していた。
婚約者の分際で王太子を傷つけた罪で処刑してやろうと思ったが、父親は逆に自分を叱りつけた。
生意気な癖に父を始め大人たちから矢鱈評判がいいせいで婚約破棄さえさせて貰えなかった。
あの時から絶対アラベラの評価を地に落としてやろうと思ったのだ。
そして今日の舞踏会はその仕上げだった。
本当に飛び降りさせるつもりは無かった。
ただあの生意気な女が何でも言う事を聞くのが面白かっただけだ。
「しかしあそこまで醜女になったのは勿体なかったな、薬の副作用らしいが……本当に女は無能で困るな」
アラベラの美貌が元のままだったなら従順になったナヴィスの薔薇に欲望の全てを叩きつけてやれたのに。
そして飽きるまで可愛がってやった。その後は適当に下賜してやっても良かった。
本当に使えない女だ。そう元婚約者を腐してサディアスはふらふらとソファーへ座り込む。
気分が昂って眠れそうにない。性欲と苛立ちをぶつける柔肌が欲しい。
「チッ、適当に女でも呼ぶか」
顔を醜く腫らしたエミリを抱く気にはなれないが、幾らでも女は居る。
何故なら己はナヴィス唯一の王太子で近い内に唯一の国王になる人間なのだから。
望むなら、それ以上にだって。
「ハ、ハハッ、せいぜい吠え面をかいていろよ、オスカー!格上だとふんぞり返っているお前に地面を舐めさせてやる!!」
サディアスは声を上げて笑った。軽薄だが整っているその顔は、しかし醜かった。
ヒステリックな怒声と共に真っ白な壁にワイン入りのグラスが叩きつけられる。
王太子専用の豪華な私室でサディアスは怒りに形相を歪めていた。
アラベラを抱きかかえたオスカーが舞踏会場を去った後、そこに祝賀ムードは一切残っていなかった。
この国で唯一の王太子サディアスが、無事生誕した祝いの日だというのに。
ヴェルデンだってその重要性を理解しているから第二王子オスカーをこの宴に参加させたのではないか。
なのに、あの男は祝うどころか王太子であるサディアスにに平然と暴力を振るってきた。
「宗主国の王子であることを笠に着てやりたい放題、王になど決してなれない癖に……!!」
サディアスは服越しに己の肌を撫でる。
治療は受け、エミリに調合させた痛み止めも飲んでいる。
しかし人前で殴られ嘔吐した屈辱は消えない。奥歯をぎりりと噛み締める。
グラスは割ってしまったのでサディアスは瓶から直接ワインを煽った。
「エミリめ、酒は飲むななどと俺に命令しやがって」
平民の分際で。そう言いながらサディアスは口と喉をワインで汚した。
薬の効き目が弱くなるとか言っていたが、そんなことはどうでもいい。
なら酒を飲んでも問題ない薬を調合すればいいだけなのだ。
それすらせず王太子である自分の行動を制限しようとするから殴って教育する羽目になった。
「あいつはまだ使えるし従順な女だからな、一発だけですませてやったが」
そう言い捨てるとシャツの袖で口元を拭いサディアスはげっぷをした。
エミリに傷を手当すると言われ共に舞踏会場を去った。
だが戻る気もない。エミリも醜く顔を腫らしているから部屋から追い出したし。
元の顔に戻るまで連れ歩きたくない。
自分がこのまま会場に戻らなくても誰かが適当に終わらせて解散するだろう。大人たちがそうしてくれる。
サディアスは当たり前のようにそう思った。
周囲の人間はサディアスに都合の良いように動くのが当然なのだ。
唯一の王太子である自分に王以外が意見などしてはならない。本当は父親にだって意見を許したくなかった。
なのにアラベラは何度もその禁止行為を繰り返してきた。
人の話は最後まで聞かなければいけない。
身分が下の相手だからという理由で簡単に暴力をふるってはいけない。
授業は真面目に受けなければいけない。人に仕事を押し付けてはいけない。
小動物を虐めて殺してはいけない。他国の来賓の前で癇癪を起してはいけない
最初は何時間でも見て居られると思った綺麗で可愛らしい顔が目障りになった。
飼ってきたどの小鳥よりも軽やかで耳に心地良かった声が、熱した鉄で喉を焼きたくなる程鬱陶しくなった。
生意気な女は抱けば大人しくなると聞いて、そうしようと思ったら泣いて暴れられた。
抵抗されるとは思っていなくて、全力で突き飛ばされ転び気づけば城の庭で気絶していた。
婚約者の分際で王太子を傷つけた罪で処刑してやろうと思ったが、父親は逆に自分を叱りつけた。
生意気な癖に父を始め大人たちから矢鱈評判がいいせいで婚約破棄さえさせて貰えなかった。
あの時から絶対アラベラの評価を地に落としてやろうと思ったのだ。
そして今日の舞踏会はその仕上げだった。
本当に飛び降りさせるつもりは無かった。
ただあの生意気な女が何でも言う事を聞くのが面白かっただけだ。
「しかしあそこまで醜女になったのは勿体なかったな、薬の副作用らしいが……本当に女は無能で困るな」
アラベラの美貌が元のままだったなら従順になったナヴィスの薔薇に欲望の全てを叩きつけてやれたのに。
そして飽きるまで可愛がってやった。その後は適当に下賜してやっても良かった。
本当に使えない女だ。そう元婚約者を腐してサディアスはふらふらとソファーへ座り込む。
気分が昂って眠れそうにない。性欲と苛立ちをぶつける柔肌が欲しい。
「チッ、適当に女でも呼ぶか」
顔を醜く腫らしたエミリを抱く気にはなれないが、幾らでも女は居る。
何故なら己はナヴィス唯一の王太子で近い内に唯一の国王になる人間なのだから。
望むなら、それ以上にだって。
「ハ、ハハッ、せいぜい吠え面をかいていろよ、オスカー!格上だとふんぞり返っているお前に地面を舐めさせてやる!!」
サディアスは声を上げて笑った。軽薄だが整っているその顔は、しかし醜かった。
42
あなたにおすすめの小説
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる