15 / 95
手にした戦果
穏健派
しおりを挟む
派閥というのは何にでもある。
今までそれらに属さなかったかといえばそうでもない。
軍の魔法使い部門で言えば、ディアドラとアーヴィンは完全にソーンの味方だ。
外国への出国を申告しに行ったついでにソーンと話した。
かつてその事態が発覚した時、やはり彼とイェフは対立した。
軍の魔法使いたちの意見も半々だったそう。
魔力というのは実は制御しきれているとは言えないからと。
イェフに阿る強硬派。
魔法使いが自身の魔力をどう運用するかは自由にさせるべきと。
ソーンに賛同する穏健派。
赫奪の非難の決議では文書作成にあたって話し合いは荒れた。
どこまで厳しい内容にするか。
非人道兵器の拡散防止条約にヘイデンは批准すべきか否か。
イェフは研究を引き継ぎたそうで、厳しい言葉は用いず条約に批准もしない。
ソーンは研究の記録は残すべきだが厳しく非難し条約に批准すべき。
結局、王はどちらの意見も一部汲んだ。
厳しい非難の言葉はなかった。
条約には批准した。
「今回の件もね、まさか軍の内部に手引きした者がいるんじゃないかとね」
ソーンはため息をつく。
「厄介なことだよ。
法統制の国であるヘイデンが法を無視してはいけないんだ。
必ず関係者を見つけ出して法で裁かねば」
ディアドラの行き先を見て、心配そうな表情をした。
「砂漠に近い国だよね。
宝石が出回る地域だから、赤い石があったって誰も気にかけない。
隠し場所としては納得だよ」
ただしと続く。
「盗賊団や人間以外の住処も多い地域だ。
自分の隊の剣士を連れて行っても構わないよ?」
「いいえ。目立って調査が表面的になっては困ります。
一人で平気ですよ。私には魔物の従者もいます」
恐れなどないような顔で答えた。
「赫奪を道中で見つけたら買い取ってでも回収してきますか?」
「それがいいね。
大量に見つかることはないと……、信じたい。
そうなったら手をつけず、報告に戻ってほしいな」
「了解です。もし見つけたら解除の方法も探りますね」
前向きに取り組む彼女に、ソーンは優しい笑顔を見せる。
「やっぱり、自由、と聞くと勇気が出るよね。
人というのはそういうものなんだ。
魔法使いだって人だ。本来どんな魔法使いだって自由であるべきだよ」
そう言ってくれるソーンは、やはり敬愛できる人だ。
国内の廃棄業者はすでに事業をたたんでいた。
話を聞いたのだが、怖がってまともに答えてくれなかった。
最近、事業の書類は盗まれていったという。
外国人のようだったが、どこの国かは分からない。
アレスティアではないと言った。
「あれは呪いの石ですよ。中から声がするんだ」
二十年前を思い出してその貴族は身震いした。
「怖くて、とても砕けない。
家に持って帰って困り果てていたら知らない魔法使いの人が訪ねてきました。
いいところがあるって。処分に最適な場所が。
それでうちでは全部預けてしまった」
処分の費用はいらない。親切で請け負うということだった。
それは砂漠の国の人のような格好。
「砂漠」
行ってみたいと思っていた。
以前からすごく行ってみたい砂漠。
砂漠の属国を調べていたら兄は羨ましがった。
存分に羨ましがるがいい。
「私は行ってきます」
兄からほしい植物リストを押しつけられた。
偶然、足元に生えていたら、もしかしたら採集するかもしれない。
その程度の期待しかしないでくれるならと請け負った。
少年のような格好をして、ディアドラは初めて一人でヘイデンの門を出た。
馬で目指すのは近くの友好国、パース。
ここは砂がやってくるほど砂漠寄りの国だ。
そこから動物を乗り換える。
焔蹄獣という、砂漠の砂を進むのが得意な背の高い動物に乗るのだ。
「楽しみ」
本当に砂漠の中にある国ではレースも開催されるのだと聞く。
見てみたいものだが、今回は口実ができるのかどうか。
焔蹄獣は駆けている時に興奮すると足先が赤くなる。
砂の上の足跡は溶岩が垂れたように赤く光った。
その様子から、競技用の焔蹄獣などは特別にルースエンバーと呼ぶ。
姿は狼や山犬に似ていた。
任務は行う。
行うが、役得だって楽しませてもらうつもりだ。
制限のぎりぎりで自由に過ごす。
ディアドラはそういう性分だ。
今までそれらに属さなかったかといえばそうでもない。
軍の魔法使い部門で言えば、ディアドラとアーヴィンは完全にソーンの味方だ。
外国への出国を申告しに行ったついでにソーンと話した。
かつてその事態が発覚した時、やはり彼とイェフは対立した。
軍の魔法使いたちの意見も半々だったそう。
魔力というのは実は制御しきれているとは言えないからと。
イェフに阿る強硬派。
魔法使いが自身の魔力をどう運用するかは自由にさせるべきと。
ソーンに賛同する穏健派。
赫奪の非難の決議では文書作成にあたって話し合いは荒れた。
どこまで厳しい内容にするか。
非人道兵器の拡散防止条約にヘイデンは批准すべきか否か。
イェフは研究を引き継ぎたそうで、厳しい言葉は用いず条約に批准もしない。
ソーンは研究の記録は残すべきだが厳しく非難し条約に批准すべき。
結局、王はどちらの意見も一部汲んだ。
厳しい非難の言葉はなかった。
条約には批准した。
「今回の件もね、まさか軍の内部に手引きした者がいるんじゃないかとね」
ソーンはため息をつく。
「厄介なことだよ。
法統制の国であるヘイデンが法を無視してはいけないんだ。
必ず関係者を見つけ出して法で裁かねば」
ディアドラの行き先を見て、心配そうな表情をした。
「砂漠に近い国だよね。
宝石が出回る地域だから、赤い石があったって誰も気にかけない。
隠し場所としては納得だよ」
ただしと続く。
「盗賊団や人間以外の住処も多い地域だ。
自分の隊の剣士を連れて行っても構わないよ?」
「いいえ。目立って調査が表面的になっては困ります。
一人で平気ですよ。私には魔物の従者もいます」
恐れなどないような顔で答えた。
「赫奪を道中で見つけたら買い取ってでも回収してきますか?」
「それがいいね。
大量に見つかることはないと……、信じたい。
そうなったら手をつけず、報告に戻ってほしいな」
「了解です。もし見つけたら解除の方法も探りますね」
前向きに取り組む彼女に、ソーンは優しい笑顔を見せる。
「やっぱり、自由、と聞くと勇気が出るよね。
人というのはそういうものなんだ。
魔法使いだって人だ。本来どんな魔法使いだって自由であるべきだよ」
そう言ってくれるソーンは、やはり敬愛できる人だ。
国内の廃棄業者はすでに事業をたたんでいた。
話を聞いたのだが、怖がってまともに答えてくれなかった。
最近、事業の書類は盗まれていったという。
外国人のようだったが、どこの国かは分からない。
アレスティアではないと言った。
「あれは呪いの石ですよ。中から声がするんだ」
二十年前を思い出してその貴族は身震いした。
「怖くて、とても砕けない。
家に持って帰って困り果てていたら知らない魔法使いの人が訪ねてきました。
いいところがあるって。処分に最適な場所が。
それでうちでは全部預けてしまった」
処分の費用はいらない。親切で請け負うということだった。
それは砂漠の国の人のような格好。
「砂漠」
行ってみたいと思っていた。
以前からすごく行ってみたい砂漠。
砂漠の属国を調べていたら兄は羨ましがった。
存分に羨ましがるがいい。
「私は行ってきます」
兄からほしい植物リストを押しつけられた。
偶然、足元に生えていたら、もしかしたら採集するかもしれない。
その程度の期待しかしないでくれるならと請け負った。
少年のような格好をして、ディアドラは初めて一人でヘイデンの門を出た。
馬で目指すのは近くの友好国、パース。
ここは砂がやってくるほど砂漠寄りの国だ。
そこから動物を乗り換える。
焔蹄獣という、砂漠の砂を進むのが得意な背の高い動物に乗るのだ。
「楽しみ」
本当に砂漠の中にある国ではレースも開催されるのだと聞く。
見てみたいものだが、今回は口実ができるのかどうか。
焔蹄獣は駆けている時に興奮すると足先が赤くなる。
砂の上の足跡は溶岩が垂れたように赤く光った。
その様子から、競技用の焔蹄獣などは特別にルースエンバーと呼ぶ。
姿は狼や山犬に似ていた。
任務は行う。
行うが、役得だって楽しませてもらうつもりだ。
制限のぎりぎりで自由に過ごす。
ディアドラはそういう性分だ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる