その木かげで待つひとへ(1)光る道を進んで

端木 子恭

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はじまりの庭                         ※過去編です。

隣の国だから 2

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 個室をあてがわれたのがカム、それに文句を言っていたのがエギルマール。

 で、世話役の騎士がウィム。
 本当はもっと長い名前なのだけれどこれでいいそうだ。

「喧嘩はしないこと」

 基本の注意事項を受けている。

「協力して任務をこなせるようになるための心構えを学びにきたんだろ?
 純粋な学校に来たわけじゃないんだから。分かってるよな?」

 分かっている者と分かりたくない者の顔が違う。

 親や家人が去ってしまった庭園は、その作りがよく見渡せた。
 珍しい木や変わった紋様の岩がある。
 人を頻繁に招くのはこういったものを集めてこられる能力を示すため。

 日暮れまで武具の手入れを命じられた。
 毎日やることだから早く覚えて欲しいと。

 ウィムはまだ会社の仕事がある。
 子どもたちを兵舎の武器庫へ案内した後、土だらけのエプロンをしてどこかへ行った。
 
「埃かぶってるだけだろ? さっと拭けばいいよな」
「そうだな」

 エギルマールとクレイグはボロ布を探している。
 エミールは剣の方へ行って鞘から出して見ていた。

「ヘイデンではしばらく戦なんてしてなかったよね?
 鎧がこんなに泥だらけなのはなんで?」


 カーロが壁に立てかけられたプレートを引っ張り出して聞く。
 リロイもその兜を取り出した。

 凹みがあるが刺し貫かれたあとはない。
 これは演習で木剣などを使うときにするのだ。

「これを着て演習を行ってるんだね。
 護衛の時にはこういうのを装備するのかな」

 掃除セットの入ったバケツを見つけた。
 カーロのそばに座ってリロイは泥を落とし始める。

「重いね。こんなのほんとに着たまま戦うんだ。
 リロイは領地で着たことあるの?」
「ないない」

 軽く笑って首を振った。

「金属の鎧は技術がいるし高価でしょ?
 うちはクレイグの家から革をもらって鎧を作ってる。
 金属札を貼り付けるのも手作業だよ」
「鎧を手作り?」
「うん。母がね、子どものうちに覚えなさいっていうんだ。
 どうせ体の大きさは変わるんだから自由に考えていいって」
「自分に合う鎧?」
「そう。今のところ、古着を何枚か重ねて分厚くした鎧が好き」
「そんなの鎧になるの?」
「細い矢などは防げるよ」

 リロイの話す内容を、カーロは興味深そうに聞いている。
 
「貧乏なのか? リロイんちは」
 少し離れたところから聞いてきたのはエギルマールだった。

 彼の私服はこだわりが覗いていた。
 貴族のようではなかったが、父親が大きな荷物を運んでいた。

「どうかな? もしかしたらそうかもしれない。
 私が生まれる前に戦場になったそうだから」
「金属の鎧見るの初めてなのか? 手作りしか見たことない?」
「あまり買わない。領内にいる鍛治職人に頼むことが多い。
 なんでも作ってくれるよ。器用なんだ」

 なんだかエギルマールは勝ち誇った色が浮かぶ顔をしている。
 リロイはそっとクレイグを見た。

 素知らぬ風で拭き終えた剣を振っている。

「エギルマールの家は?」

 話題を変えた。
 彼は制服の生地を引っ張って見せる。

「織物だ。諸国を相手に手広くやってる」
「豪商か。ヘイデンの意匠は人気だものな」
「小国群にも父はよく出かけるし、館に服飾の意匠家たちをよく招くよ。
 今度捨てられそうな古着があったらやろうか?」

 クレイグの振る剣が止まった。

 リロイの目がすっと青ざめる。
 領地ロードを軽んじられて嫌がるのはクレイグの方だ。
 隣の領地の息子であるのに。

「とんだ愚か者がいる」

 武器庫の中からカムが言う。

「あなたは没落貴族と勘違いしているのではない?
 リロイは生まれる前に領地が戦場になったと言ったでしょ」

 彼女は中で小さめの武具を吟味しているらしかった。

「貧乏なのは領地経営がうまく行ってないからではないのよ?
 努力して這いあがろうとしてる最中なの。
 それをそんなふうに見下したような顔をして……」
「見下したわけじゃない」
「いや、貧しくはないぞ」

 クレイグがそもそもの認識を正す。

「クレイグ、やめて。資産の大きさなんて関わりないことだよ。
 見習いの働きに実家の規模なんて関係ない」
「……そうだね。みんな同じ見習いという身分なんだから」

 カムのそばで小さな声がした。
 全員驚いてそちらを見る。

 暗がりに埋もれるようにして槍を磨いている王子エミールがいた。
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