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半輪の月を眺む
人魚の予言
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グラントがラグラスを後にしたのは数週間以内のことだ。
その期間に砦の整備が進んでいる。
魔物の力をもっても苦労したに違いない。
実際、トーニャの湖の亀たちは、疲労困憊している。
鉄砦から出発した機関車は三両編成だ。
先頭車にいる運転士は隣国からの補償でやってきた人間で、助士はシュトラールにいた人間である。
中間車は食堂車だ。
最後尾は貨車で、山ほどの薪を積んでいる。
港の地域の住人は薪を自分で調達する時間がないので売りに行くのだそう。
鉄砦と呼ばれる理由。
それは、背後にいくつも鉱山を抱えているからだと知ったのは、グラントが発ってからだった。
人が足りず、鉄を掘り出すので精一杯だった。
鋳造はサイラに任せた。
突貫で海砦まで直線の軌道を敷いた。
完成した時、ダルコが大笑いしながら褒めてくれた。
そんな話を、ウーシーはきらきらした目で語る。
食堂車には六人がけのテーブルが据え付けられていた。
小さなキッチンがある。
係がお茶をいれていた。
使われている陶器は古いもので、もともとトーニャの近くに住んでいた人間たちの手仕事だという。
今は伝統が途絶えてしまったが大切な思い出だった。
「綺麗」
グラントに見せてもらって、シェリーは嘆息する。
「トーニャ、これはもうする人がいない? 復活できないんですか?」
「絵付けなどしている場合ではなくなってしまったのよね。
私としても残念。気に入っていたのに。
産業でやっていたことだから、記録はたくさん残ってるのだけど」
エリンに見せたくなった。
きっと彼女も好きになる。
「昔はこの食器を使ってお茶会をしていたの。
代金をもらって行う観光業ね。
私はあまり姿を見せなかったけれど、うちの者が取り仕切っていた」
トーニャは懐かしそうに言った。
あの景観なら、湖を見せるだけで料金が取れそうである。
「トーニャの城が見えます」
窓の外を見ていたアリアが指差した。
湖の辺りの城は絵画のように美しい。
そのたもとに桟橋があった。
船で湖に出ることもあるのかと尋ねると、少し前まではそれが唯一の城への道だったと答えが来る。
人魚のトーニャは陸路なんか必要ない。
この度新しく街道を作ったのは、新しい領主たちのため。
「この後ろに主城がある。エルネストが守ってる」
グラントの声にシェリーは振り返った。
視界は回って、山をまるごと敷地にするラグラスの城が見える。
明日から通う予定の城だ。
エルネストはグラントと同じくらい背が高い青年の姿の精霊だった。
港では彼がシェリーを招いてくれたのだと紹介された。
意志の強そうな顔をした盾の精霊。
ラグラスへの思い入れが一番身に染み込んでいるのは彼だ。
湖を過ぎると畑が見えてきた。
「ここの開墾に力を入れてて人手が足りなかったんだよね」
ウーシーが言う。
畑には麦が植えてあった。
果樹の苗木も見える。
農場主の館が建っていた。
農民の家が並び、納屋などもある。
小さな農村だ。
畑の真ん中に切り株が残されていたり、おかしなところに木が生えていたりする。
手が間に合わなかったのだ。
「エルネストがさ、とにかく畑の面積を確保しろって指揮したの。
グラントが戻ったら整備を頼むから、とにかく見栄えを気にせずやれって」
そうだ。
冬が来るまでに穀物を確保しなければならない。
人口が増えたのだから。
城や街区の準備をしながら、彼は領地に必要なことも指示できる。
領主のためにしなければならないことをよく知っていた。
領主がいるなら。
支柱のあるなしで、守りの指針は大きく異なる。
海砦ではダルコが出迎えた。
「無事に着いたな」
機関車が停まったのを見て近づいてくる。
「ちゃんと動くんだなあ。大したもんだわ。
薪もありがとうな。ウーシー」
森林の侵食が激しい鉄砦では、売るほど薪が作れるのだ。
ダルコに言われて薪を倉庫に運ぶ者が集まる。
金色に縁取られた瞳が、幻術を操り続けるグラントにとまった。
「グラント、ずっとシェリーに景色を見せてるのか?
朝から働いてたんだろ? 平気か?」
「うん。大丈夫だよ。戦ってるのではないから平気」
魔法で戦い続ける体力はないが日常づかいなら問題ない。
こんなところが魔法使いとして就職できなかった理由だ。
会ったついでにラグラスの裁判記録について話し込んでしまう。
法律家が見つかるまで慣習法でいいのでは。
それにしたって人員が足りないという話に結着する。
「シェリー、歩いてみましょうか」
シェリーの手を取って、トーニャが言った。
アリアの手も繋いで客車を出る。
「グラント、シェリーと散歩してくる。
装具を新しくしたから試したいの。私が支えるからダルコと話してて」
「分かった。ありがとう」
グラントの返事に軽く笑って歩き始める。
普通の女性に見えて、トーニャは怪力だ。
破城槌に耐えた城門を一人で開けた。
片手でシェリーを支えることくらい造作もない。
港の舗装路は隣国から送られた石でできている。
歩きやすかった。
「ここはいち早く昔に戻ったみたい。
かつては外国人街がいくつも隣り合っていてね。
……魔物街というのはなかったかしらね。
魔物たちはお気に入りの街区に住んで。
だからそのうちにここの住民は魔物の血を引く者が増えていったの」
王都とは雰囲気の違う街並み。
もともと住んでいた住民よりも移住者が多い。
地元の資材を使って隣国風の建物を建てて住んでいるから目新しかった。
「復興前のこの景色、憶えていてほしい。
きっとすぐに変わるのよ」
港を歩く人魚に漁師たちが声をかける。
それに応じながら、彼女はシェリーを紹介した。
漁師たちは今日網にかかった銀貨を見せてくれた。
見たことないんだけど知ってる? と湖の頭領に気軽に尋ねる。
「……シェリーに触らせてもいい?」
トーニャの言葉に、あげるよと漁師は渡した。
潮のにおいがする。シェリーは片手でそれを確かめる。
「ラグラスの銀貨」
トーニャが教えてくれた。
最盛期、公国並みの力があった辺境領では貨幣を鋳造していた。
金属の配合割合は定められている。
それを守り、認定されればちゃんと使える通貨になった。
「都では国内の通貨しか流通してないでしょう?
でもここは色々な人が訪れた。両替業も盛んだったの。
あそこまでではなくてもいいけれど」
トーニャはため息とともに言う。
「もう少しだけ、人間に住みやすくなってもらいたい」
「トーニャもここが好きなんですね」
シェリーの言葉に肩をすくめた。
「そうなのかしら。慣れただけかもしれない。
慣れって手放し難いでしょう」
それから、気付いたようにシェリーを見た。
「あら、シェリー」
アリアの手を離して、よくその顔を確かめる。
「私は時々未来が見えるのだけど、今見えていること、話してもいい?」
予言。
アリアが口を開けてシェリーを見上げた。
「長生きの人魚の中には予言ができる者がいます、シェリー。
当たるのですよ」
シェリーはアリアのおでことトーニャの方を見比べる。
「当たるかどうかは、シェリー次第」
そう笑うトーニャにシェリーは「聞きたいです」と答えた。
「将来、リケをもらう話が来そうよ。地権の証明書が届く」
驚きと、ちょっとだけしゅんとなるような感じがする。
「その頃にはシェリーの目は、見えるようになっているみたい。
ここで治す方法が見つかるのかしらね。そうなると嬉しい」
トーニャの言葉に、いますぐ主城へ走っていきたいような衝動に駆られた。
アリアもそわそわと足を動かし始める。
「早く探しにいきたいです。明日からなんて」
「平気。明日から声が枯れるまで読んでもらうんだから。
今日くらい我慢できる」
理性を振りかざすシェリーの声は震えていた。
我慢の時点で待ちきれていない。
「精霊の声は枯れません」
足をぱたぱたしたままアリアは口を尖らせた。
精霊の力を侮ってもらっては困る。
「耳が落ちるほど読んで聞かせますよ」
そんなアリアの手を探し当てて握った。
そうしながら、シェリーは疑問が一つ頭に引っかかる。
なぜリケをもらう話が来るのだろう。
どんな状況なのだろうか。
もしかしたらトーニャはそれも見えていて。
シェリーの思いに添う形ではないから、口にしなかった。
その期間に砦の整備が進んでいる。
魔物の力をもっても苦労したに違いない。
実際、トーニャの湖の亀たちは、疲労困憊している。
鉄砦から出発した機関車は三両編成だ。
先頭車にいる運転士は隣国からの補償でやってきた人間で、助士はシュトラールにいた人間である。
中間車は食堂車だ。
最後尾は貨車で、山ほどの薪を積んでいる。
港の地域の住人は薪を自分で調達する時間がないので売りに行くのだそう。
鉄砦と呼ばれる理由。
それは、背後にいくつも鉱山を抱えているからだと知ったのは、グラントが発ってからだった。
人が足りず、鉄を掘り出すので精一杯だった。
鋳造はサイラに任せた。
突貫で海砦まで直線の軌道を敷いた。
完成した時、ダルコが大笑いしながら褒めてくれた。
そんな話を、ウーシーはきらきらした目で語る。
食堂車には六人がけのテーブルが据え付けられていた。
小さなキッチンがある。
係がお茶をいれていた。
使われている陶器は古いもので、もともとトーニャの近くに住んでいた人間たちの手仕事だという。
今は伝統が途絶えてしまったが大切な思い出だった。
「綺麗」
グラントに見せてもらって、シェリーは嘆息する。
「トーニャ、これはもうする人がいない? 復活できないんですか?」
「絵付けなどしている場合ではなくなってしまったのよね。
私としても残念。気に入っていたのに。
産業でやっていたことだから、記録はたくさん残ってるのだけど」
エリンに見せたくなった。
きっと彼女も好きになる。
「昔はこの食器を使ってお茶会をしていたの。
代金をもらって行う観光業ね。
私はあまり姿を見せなかったけれど、うちの者が取り仕切っていた」
トーニャは懐かしそうに言った。
あの景観なら、湖を見せるだけで料金が取れそうである。
「トーニャの城が見えます」
窓の外を見ていたアリアが指差した。
湖の辺りの城は絵画のように美しい。
そのたもとに桟橋があった。
船で湖に出ることもあるのかと尋ねると、少し前まではそれが唯一の城への道だったと答えが来る。
人魚のトーニャは陸路なんか必要ない。
この度新しく街道を作ったのは、新しい領主たちのため。
「この後ろに主城がある。エルネストが守ってる」
グラントの声にシェリーは振り返った。
視界は回って、山をまるごと敷地にするラグラスの城が見える。
明日から通う予定の城だ。
エルネストはグラントと同じくらい背が高い青年の姿の精霊だった。
港では彼がシェリーを招いてくれたのだと紹介された。
意志の強そうな顔をした盾の精霊。
ラグラスへの思い入れが一番身に染み込んでいるのは彼だ。
湖を過ぎると畑が見えてきた。
「ここの開墾に力を入れてて人手が足りなかったんだよね」
ウーシーが言う。
畑には麦が植えてあった。
果樹の苗木も見える。
農場主の館が建っていた。
農民の家が並び、納屋などもある。
小さな農村だ。
畑の真ん中に切り株が残されていたり、おかしなところに木が生えていたりする。
手が間に合わなかったのだ。
「エルネストがさ、とにかく畑の面積を確保しろって指揮したの。
グラントが戻ったら整備を頼むから、とにかく見栄えを気にせずやれって」
そうだ。
冬が来るまでに穀物を確保しなければならない。
人口が増えたのだから。
城や街区の準備をしながら、彼は領地に必要なことも指示できる。
領主のためにしなければならないことをよく知っていた。
領主がいるなら。
支柱のあるなしで、守りの指針は大きく異なる。
海砦ではダルコが出迎えた。
「無事に着いたな」
機関車が停まったのを見て近づいてくる。
「ちゃんと動くんだなあ。大したもんだわ。
薪もありがとうな。ウーシー」
森林の侵食が激しい鉄砦では、売るほど薪が作れるのだ。
ダルコに言われて薪を倉庫に運ぶ者が集まる。
金色に縁取られた瞳が、幻術を操り続けるグラントにとまった。
「グラント、ずっとシェリーに景色を見せてるのか?
朝から働いてたんだろ? 平気か?」
「うん。大丈夫だよ。戦ってるのではないから平気」
魔法で戦い続ける体力はないが日常づかいなら問題ない。
こんなところが魔法使いとして就職できなかった理由だ。
会ったついでにラグラスの裁判記録について話し込んでしまう。
法律家が見つかるまで慣習法でいいのでは。
それにしたって人員が足りないという話に結着する。
「シェリー、歩いてみましょうか」
シェリーの手を取って、トーニャが言った。
アリアの手も繋いで客車を出る。
「グラント、シェリーと散歩してくる。
装具を新しくしたから試したいの。私が支えるからダルコと話してて」
「分かった。ありがとう」
グラントの返事に軽く笑って歩き始める。
普通の女性に見えて、トーニャは怪力だ。
破城槌に耐えた城門を一人で開けた。
片手でシェリーを支えることくらい造作もない。
港の舗装路は隣国から送られた石でできている。
歩きやすかった。
「ここはいち早く昔に戻ったみたい。
かつては外国人街がいくつも隣り合っていてね。
……魔物街というのはなかったかしらね。
魔物たちはお気に入りの街区に住んで。
だからそのうちにここの住民は魔物の血を引く者が増えていったの」
王都とは雰囲気の違う街並み。
もともと住んでいた住民よりも移住者が多い。
地元の資材を使って隣国風の建物を建てて住んでいるから目新しかった。
「復興前のこの景色、憶えていてほしい。
きっとすぐに変わるのよ」
港を歩く人魚に漁師たちが声をかける。
それに応じながら、彼女はシェリーを紹介した。
漁師たちは今日網にかかった銀貨を見せてくれた。
見たことないんだけど知ってる? と湖の頭領に気軽に尋ねる。
「……シェリーに触らせてもいい?」
トーニャの言葉に、あげるよと漁師は渡した。
潮のにおいがする。シェリーは片手でそれを確かめる。
「ラグラスの銀貨」
トーニャが教えてくれた。
最盛期、公国並みの力があった辺境領では貨幣を鋳造していた。
金属の配合割合は定められている。
それを守り、認定されればちゃんと使える通貨になった。
「都では国内の通貨しか流通してないでしょう?
でもここは色々な人が訪れた。両替業も盛んだったの。
あそこまでではなくてもいいけれど」
トーニャはため息とともに言う。
「もう少しだけ、人間に住みやすくなってもらいたい」
「トーニャもここが好きなんですね」
シェリーの言葉に肩をすくめた。
「そうなのかしら。慣れただけかもしれない。
慣れって手放し難いでしょう」
それから、気付いたようにシェリーを見た。
「あら、シェリー」
アリアの手を離して、よくその顔を確かめる。
「私は時々未来が見えるのだけど、今見えていること、話してもいい?」
予言。
アリアが口を開けてシェリーを見上げた。
「長生きの人魚の中には予言ができる者がいます、シェリー。
当たるのですよ」
シェリーはアリアのおでことトーニャの方を見比べる。
「当たるかどうかは、シェリー次第」
そう笑うトーニャにシェリーは「聞きたいです」と答えた。
「将来、リケをもらう話が来そうよ。地権の証明書が届く」
驚きと、ちょっとだけしゅんとなるような感じがする。
「その頃にはシェリーの目は、見えるようになっているみたい。
ここで治す方法が見つかるのかしらね。そうなると嬉しい」
トーニャの言葉に、いますぐ主城へ走っていきたいような衝動に駆られた。
アリアもそわそわと足を動かし始める。
「早く探しにいきたいです。明日からなんて」
「平気。明日から声が枯れるまで読んでもらうんだから。
今日くらい我慢できる」
理性を振りかざすシェリーの声は震えていた。
我慢の時点で待ちきれていない。
「精霊の声は枯れません」
足をぱたぱたしたままアリアは口を尖らせた。
精霊の力を侮ってもらっては困る。
「耳が落ちるほど読んで聞かせますよ」
そんなアリアの手を探し当てて握った。
そうしながら、シェリーは疑問が一つ頭に引っかかる。
なぜリケをもらう話が来るのだろう。
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