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半輪の月を眺む
技術を商う島1
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おはようございます、と挨拶が聞こえた。
グラントは声の主を探してあたりを見回す。
先週二回も読書机で睡眠をとってしまった。
そのせいで図書室にカウチが設置されている。
さっそくそこで眠っていた。
昨夜は暖かくて、綿ニットの寝巻がちょうどぬくぬくして。
毛布まで持ってきておいたのは、成功だったのか失敗だったのか。
またちゃんとしたところで寝られなかった。
上掛けをのけて、扉を開けた。
「亀……?」
小さな亀がそこにいる。
グラントを見上げてちょっとお辞儀をした。
「トーニャ様のお使いで参りました。
本日、シェリー殿下が体調を崩されておいでです。
この週はお休みさせていただきたく」
「分かった。知らせてくれてありがとう。
お大事にと伝えて。あとで何か届けに行こうか?」
「いいえ。見舞いは要らぬとお伝えせよと言いつかっております」
「……、はい」
湖の主には逆らわない。
用が済んだ亀は廊下を歩いて去っていった。
今週。
それでは何をしようか。
読みかけの本を終わらせてしまったあたりに城へダルコがやってきた。
「グラント、今朝トーニャから使いがきてなぁ」
グラントに話しかけながら、どうしてかキッチンへ入っていく。
話を聞くためにそちらへ向かった。
「シェリーが休みたいから今週城に行かないって。
時間が空くだろう? 交易に行かないか。
ここから二日ばかり船で行ったところに島があるんだよ」
キッチンで勝手に朝食をとりながら海砦の頭領は話す。
「ウーシーも誘おう。そこは人を商う島なんだ」
「人を売っているってこと?」
同じように朝食をもらいながらグラントは聞いた。
シュッツフォルトは奴隷の売買を禁止する国際条約に批准している。
例え助けるためでも人を買ってはいけない。
「訳ありも混じってるけど、そうじゃないのも多いさ。
見本市があってな、そこでは自分の技術を売ったりできる。
時々掘り出し物みたいな人材もあるんだ。職人の技術が売り買いされたりもしてる。
ラグラスは色んな人材が絶えてしまったから、復興には買ってくるって方法が近道だろ」
「売っているのは人材だけ?」
「普通に商店街も広がってる。
職人が住み着いて店を開いたり学校を開いたりもしてるよ」
「面白そう」
「ウーシーも、新しい技術が見られて興味深いんじゃないかと思うんだ」
「そうだね」
話していたら、エルネストが顔を出した。
海砦の頭領を見て一瞬戸惑う。
悪戯にでも誘いにきたのかという疑惑が見てとれた。
「おう、エルネスト。グラントと今、旅に出ることに決まったからな。
ウーシーも行く。たぶん。留守と資金をよろしくぅ」
口をぱかっと開けて笑う。
「どこへ行くんだ?」
厄介ごとでなければ鷹揚な主城の守り手は話を進めた。
「ああ、あそこだよ」
そしてダルコはとんでもない名を口にする。
「奴隷島」
「……」
そんなとこには行けない。
グラントのかたまった頬に気がついて、ダルコは言い直した。
「ちゃんとした通り名は職人島だ」
鉄砦に話しに行ったら、ウーシーは一秒後に砦の臨時責任者を決めた。
任命されたのは年の近い、シュトラールでも顔を合わせたことがある人間だ。
とても迷惑そうにしているのを無視する。
修道院はフットマンに任せた。
万が一の避難経路をよく教えておく。
遠くに雨雲を見ながら、翌る日の昼過ぎに小型帆船が港を出た。
物を大量にやり取りするという商いではないので船は小さくていいのだ。
リナたちがいる貿易島はラグラスから帆船で十日前後かかる。
魔物が協力すればもっと早くなる。
あの島でする商売はふた通りだ。
一つは国同士で行う取引。登録所に荷を登録して行う。
もう一つは普通の交易。こちらは店舗を期限つきで借りて行う。
どちらにするかで税金はずいぶん違うのだ。
そして無論、荷を売らなくても個人的に買い物などを楽しむのは構わない。
ダルコは海の上の人間たちの暮らしもよく知っていた。
近海にはいくつもの島嶼国が点在する。
暮らしはその年の環境に左右されるので、しょっちゅう人が入れ替わった。
今時期は売り買いする島は暇な方。
だから予約しなくても宿は空いているだろう。
真夏に混み合っているのは砂浜を持つ国だ。
それか家族でゆったり過ごせる高原がある国。
「ラグラスにも砂浜はあるんだが」
ダルコは帆船の甲板に胡座をかいて説明する。
「森が迫ってて安息って感じじゃないんだよな。
第一この冷たい海で何を遊ぶんだ。夏にこごえっちまう」
グラントもウーシーも、泳いだことがない。
水に落ちたことはあるが、遊泳というものをしたことがなかった。
冷たい海と砂浜でどうやって遊ぶのかわからない。
日が暮れる直前、小さな島影を見つけた。
そこで錨を下ろさせてもらおうと近寄る。
「お店だ」
雨雲が厚みを増していた。
玄関灯は片付けられていたが家の明かりがついているので声をかける。
出てきたのは老人だった。
停泊しても構わないと言う。
「あ、ここ本屋だ」
船からウーシーが気づいた。
開いた扉の隙間からは本の山が見える。
途端にグラントが興味を惹かれて外を覗いた。
「魔法使いだ」
ますます興味深そうに眺める。
年寄り相手に真夜中に上がろうとしたところをダルコに止められた。
仕方がないので朝を待つことにする。
泉のない小さな島だ。
何の魔法使いでどんなふうに暮らしているんだろう。
朝、本屋の看板を掲げる音を合図にグラントは船を下りた。
もじゃもじゃの白髪が一歩ごとに揺れる。
どこかの高官のような服を着た、小柄な魔法使い。
「おはようございます。
あの、ちょっとの間お話ししてもいいでしょうか?」
おはよう、と返した老魔法使いは、グラントの杖を見て気づいたような声を出した。
「魔法使いか」
「はい。今は魔法使いです。
でも将来は本屋をやりたくて。
お店を見せてもらってもいいですか?」
「どうぞ」
中を見せてもらうと、そこは魔法使いの勉強に使う本が多かった。
「私が子どもの頃から使っていた教科書だよ。
生きているうちにに売ってしまおうと考えたんだ」
「こんなに本で学習できたなんて、代々魔法使いだったのですか?」
グラントは、師匠があれなので、ほぼ口伝になっている。
店主は一つ首肯した。
「代々魔法使いを継いで、国の要職についていたこともあったんだが。
私の代で子孫が絶えてしまうんだよ。
魔法使いにしか要らない本は、残しておいても仕方ないだろう?」
グラントは山積みにしてある本から一冊取り出す。
「読んでも構いませんか」
「いいよ」
ぱらぱらページをめくった。
「これを、買いたいです」
店主に表紙を示す。
魔法使いになる方法について書かれた本だ。
銀貨十枚と交換する。
「あなたは何の魔法使いですか?」
「若い頃は水の精霊の力を得て戦う魔法使いだった。
今はただの海の漂流者だよ」
「漂流?」
グラントの不思議そうな顔に、老店主は下を指さした。
「この島は大きな海蛇の背中なんだ。
彼が陸地まで店を運んでくれて、私は商売をする。
水や食料を買ったら、また漂流だ」
「いい生活ですね」
羨しい。
ダルコに出るぞと呼ばれて船に戻った。
職人島、という響きから、こぢんまりした小さな島を想像していた。
ここも山がない。
森はなく、人工林が一部にあるくらいだ。
川もどこかの職人たちの練習に使うために残している。
自然のものは見当たらなかった。
「何ぃ? これ」
ウーシーがびっくり顔だ。
「島全体が管理された市場なんだよ」
ダルコが言った。
「ここの主はシャスティっていう人間で、ドレスのデザイナーだ。
他にも実力者の中にはデザイナーがいる。城や甲冑や、街区なんかのな。
そういう者たちは大抵学校を開いてるんだ」
「ダルコは貿易島に来たことがあるの?」
船員が下船の準備をしている。
海の魔物も混じっていた。
大きな階段を一人でかけている。
「あるよ。領主と色んなとこに行った。
ラグラスは一領地というより、公国みたいだったからな」
最盛期には5万人の人口があった辺境領だ。
宿を探すために案内館へ入る。
中心部に近い、主人が一人でやっている宿にした。
この島は常時三十万人の人がいる。
端から端まで走ったらやっぱりニ時間くらいかかるかもしれない。
春に行ったオーディの島より落ち着いているが、街灯の数を見るに、夜も盛況なのだ。
居酒屋が多い。賭け事の店は少ない。
本屋が、港に近い。
やはり環状に道が走っていた。
公園はこちらはテーブルを挟んで向かい合う形のベンチである。
話し合っている機会が多いのだ。
宿のある区域との分かれ道でダルコが言う。
手には今日の市の目録があった。
「宿に挨拶したら、島を好きに見て来たらいいよ。
俺のことを思い出したら見本市に来てくれ。
島の真ん中だ。日の出から日没までやってる」
見本市。
不穏なものを想像してしまう。
宿屋の主人ベグリーに挨拶した。
体格のいい男性で、もとは機械を組み立てる職人だという。
腰痛が原因で引退した。
僧侶でみてあげたら腰が楽になったと喜んでくれた。
時間を確認して、今はご飯どきだと知る。
ウーシーと一緒に店の方へ出た。
ごはんと言いながら酒しか頼んでない親友をうっそりと見る。
「グラントが春に行った時は何がメインの島?」
「燃料と鉱石の取引が主だった。
交易の店舗は本当にたくさんあったよ。
ないものがないくらい」
カバンから紙を数枚取り出して、ウーシーはメモ書きをざっと読んだ。
歩きながら興味のある店を書き留めている。
「色んな店があって面白いなあ。
さっき石の研磨機の店の隣に蜂蜜酒の醸造所があったろ?
もーどっち覗こうかなあ。迷うよなー」
それは、趣味と趣味の二択か。
「修道院で使う方にしなよ」
グラントの言葉に、修道士は束の間まじめに考えた。
「じゃ、醸造だな」
うん。
確信をもって頷く。
「今、ラガー作って砦の作業員に売ろうと思ってんの。
子どもたちあっという間に作るの上手になっちゃってさー。
もうすぐ出来上がるんだ。楽しみー」
「修道院はそういうところって思っちゃうから。
どうなの、子どもに酒造って」
「今は畑だって苗を育てるくらいしかできないだろ?
仕事がすぐなくなると、寂しくなっちゃうと思って醸造始めたわけ」
城に通って、牧場にいるスイートとチーズ作りも行っている。
実験好きのウーシーは、そこにあるもので何かを作り出すのが上手だ。
ウーシーは蜂蜜酒の醸造所に腰を据えて事細かに質問した。
樽をいくつか買い付けてラグラスの船に運ぶよう頼む。
どれがそれだと聞かれ、グラントは幻で船の姿を見せた。
島の中心の見本市のエリアへ入る。
鹿でも飼育しているような背の高い柵が目に飛び込んできた。
柵の内側に布のテントが張り付けられている。
雨が降ったら辛そうだ。
ダルコが誰かと話している。
グラントとウーシーが近づくと、気づいて手を挙げた。
「よう。こっち来たか。
……こいつ、前の月にうちに攻め込んできたやつの元部下」
目の前の青年を指さして紹介する。
まだ二十歳にはなっていなそうな彼の背後には、父親ほどの年の男性が三名ついていた。
監視員らしい。
「あんまり死者が出なかったからな。
隣国では軽微な罪の人間の扱いに困ってるんだと」
監視員たちにグラントをラグラス公であると伝えた。
書類を持っている者がそばに来る。
「彼の今の扱いが書かれたものです。一度お読みください」
名前はテッド。十八歳。授かったばかりの騎士の称号を剥奪された。
クーデターに加わった理由は弱い。
友人が参加するというので加勢した。
専門は剣士。戦歴については従騎士として二回、盗賊の取り締まりに参加している。
実家は農家だ。
労役刑二年。または罰金として金貨十枚を納めること。
「この条件ならどっちかは叶えられそうだよねえ?
どうしてここで売りに出されてるの?」
ウーシーが横から聞いた。
「彼のような兵士が三百人います。
国内ではもはや仕事に就けず、金貨十枚を出してくれる縁者もいない」
金貨十枚の値がついた兵士は顔を上げる。
「牢獄内は過密になっていて暴動の危険があるんです。
できれば戻りたくない。警吏だって鎮圧したくないと言うんです」
訓練された兵士の起こす騒ぎは、確かに怖かった。
監視員も重ねて言う。
「そもそも国の転覆を図った人間に出す飯代の方が罰金よりかかると。
民の間からも批判が高まっているのです。
しかし、一度決まった判決を変更するわけにもいきません。
それで、ここへ就職活動に来ました。
成功すれば彼らは罰金を支払い、国外に去れる」
「騎士の資格を持っていた兵士が金貨十枚で売られてるの?」
傭兵だったら働いてもらえるのは一年ちょっとくらいの額だ。
「就職活動です。自主的な」
決してあれではない。
「どこに行こうと、わだかまりはないんですか?」
グラントの質問に、監視員はテッドを見る。
慌てた様子の十八歳の剣士は首を横に振った。
「ありません、ラグラス公。
むしろあそこに戻れるならそれがいいという者は割といます」
捕虜の間、腹一杯食べさせた効果だろうか。
肌つや良くして返した。
「故郷に近いところがいいんです。呼び寄せたい家族がいる者も多い」
グラントは書類の下の方を読む。
代金の収納期限は2ヶ月後だ。
「採用希望の署名はどこにしたら良いでしょう?
わたしとしては三百人に来てもらってもいいのですが」
三百人一気に内定が出て監視員は驚く。
「本当ですか? それはありがたい話です」
「ただ、ラグラスに来るのは辞退したいという人もいるでしょうし。
こちらも入国させるにあたって条件を出したいと思います。
それで合意できた人だけ、ということにしていいですか?」
「それはもう」
監視員たちは顔を見合わせて安堵していた。
「では、日を改めて文書出しとくわ」
ダルコはグラントから受け取った書類を一読すると相手に返す。
「じゃ、ラグラス公、他の人材も見てみよう」
にやっと笑って歩き出した。
「ダルコ、金貨三千枚もラグラスにあるんだね?」
ウーシーが尋ねる。海砦の頭領は肩をすくめた。
「ねえよ」
ひそめた声で笑いながら答える。
「毎年の税だってようやく現物で納めてるくらいだ。
金策はウーシーたちの方が得意だろ? なんか考えてくれ。
計画ができれば俺たちが動く」
「ええ……」
少しも慌てるそぶりがなかった。
さすがにウーシーもヒく。
「港に大釜はある?」
グラントがすぐに何か思いついたように聞いた。
「海の魔物たちは、鯨の死期を知れる?」
「近くにいれば連絡してもらうことができるぞ」
ダルコの答えに、魔法使いはゆっくりとした口調で言う。
「大きな鯨の脳油を甕に二、三集めて。種類の違うものは混ぜないでほしい。
それをオーディさんの島で量り売りしてみよう。
確か交易の許可は取ってあったよね? あとは品名を入れるだけだった」
「おう」
「小売の資材は現地で手に入る。荷が用意できたら売りに出て」
ダルコはひゃっひゃっと笑った。
「やっぱりな。正解だったろ?」
そばに海の魔物を呼んで鯨の捜索を言いつける。
それからグラントを見た。
「ラグラスには領主が要る」
グラントは声の主を探してあたりを見回す。
先週二回も読書机で睡眠をとってしまった。
そのせいで図書室にカウチが設置されている。
さっそくそこで眠っていた。
昨夜は暖かくて、綿ニットの寝巻がちょうどぬくぬくして。
毛布まで持ってきておいたのは、成功だったのか失敗だったのか。
またちゃんとしたところで寝られなかった。
上掛けをのけて、扉を開けた。
「亀……?」
小さな亀がそこにいる。
グラントを見上げてちょっとお辞儀をした。
「トーニャ様のお使いで参りました。
本日、シェリー殿下が体調を崩されておいでです。
この週はお休みさせていただきたく」
「分かった。知らせてくれてありがとう。
お大事にと伝えて。あとで何か届けに行こうか?」
「いいえ。見舞いは要らぬとお伝えせよと言いつかっております」
「……、はい」
湖の主には逆らわない。
用が済んだ亀は廊下を歩いて去っていった。
今週。
それでは何をしようか。
読みかけの本を終わらせてしまったあたりに城へダルコがやってきた。
「グラント、今朝トーニャから使いがきてなぁ」
グラントに話しかけながら、どうしてかキッチンへ入っていく。
話を聞くためにそちらへ向かった。
「シェリーが休みたいから今週城に行かないって。
時間が空くだろう? 交易に行かないか。
ここから二日ばかり船で行ったところに島があるんだよ」
キッチンで勝手に朝食をとりながら海砦の頭領は話す。
「ウーシーも誘おう。そこは人を商う島なんだ」
「人を売っているってこと?」
同じように朝食をもらいながらグラントは聞いた。
シュッツフォルトは奴隷の売買を禁止する国際条約に批准している。
例え助けるためでも人を買ってはいけない。
「訳ありも混じってるけど、そうじゃないのも多いさ。
見本市があってな、そこでは自分の技術を売ったりできる。
時々掘り出し物みたいな人材もあるんだ。職人の技術が売り買いされたりもしてる。
ラグラスは色んな人材が絶えてしまったから、復興には買ってくるって方法が近道だろ」
「売っているのは人材だけ?」
「普通に商店街も広がってる。
職人が住み着いて店を開いたり学校を開いたりもしてるよ」
「面白そう」
「ウーシーも、新しい技術が見られて興味深いんじゃないかと思うんだ」
「そうだね」
話していたら、エルネストが顔を出した。
海砦の頭領を見て一瞬戸惑う。
悪戯にでも誘いにきたのかという疑惑が見てとれた。
「おう、エルネスト。グラントと今、旅に出ることに決まったからな。
ウーシーも行く。たぶん。留守と資金をよろしくぅ」
口をぱかっと開けて笑う。
「どこへ行くんだ?」
厄介ごとでなければ鷹揚な主城の守り手は話を進めた。
「ああ、あそこだよ」
そしてダルコはとんでもない名を口にする。
「奴隷島」
「……」
そんなとこには行けない。
グラントのかたまった頬に気がついて、ダルコは言い直した。
「ちゃんとした通り名は職人島だ」
鉄砦に話しに行ったら、ウーシーは一秒後に砦の臨時責任者を決めた。
任命されたのは年の近い、シュトラールでも顔を合わせたことがある人間だ。
とても迷惑そうにしているのを無視する。
修道院はフットマンに任せた。
万が一の避難経路をよく教えておく。
遠くに雨雲を見ながら、翌る日の昼過ぎに小型帆船が港を出た。
物を大量にやり取りするという商いではないので船は小さくていいのだ。
リナたちがいる貿易島はラグラスから帆船で十日前後かかる。
魔物が協力すればもっと早くなる。
あの島でする商売はふた通りだ。
一つは国同士で行う取引。登録所に荷を登録して行う。
もう一つは普通の交易。こちらは店舗を期限つきで借りて行う。
どちらにするかで税金はずいぶん違うのだ。
そして無論、荷を売らなくても個人的に買い物などを楽しむのは構わない。
ダルコは海の上の人間たちの暮らしもよく知っていた。
近海にはいくつもの島嶼国が点在する。
暮らしはその年の環境に左右されるので、しょっちゅう人が入れ替わった。
今時期は売り買いする島は暇な方。
だから予約しなくても宿は空いているだろう。
真夏に混み合っているのは砂浜を持つ国だ。
それか家族でゆったり過ごせる高原がある国。
「ラグラスにも砂浜はあるんだが」
ダルコは帆船の甲板に胡座をかいて説明する。
「森が迫ってて安息って感じじゃないんだよな。
第一この冷たい海で何を遊ぶんだ。夏にこごえっちまう」
グラントもウーシーも、泳いだことがない。
水に落ちたことはあるが、遊泳というものをしたことがなかった。
冷たい海と砂浜でどうやって遊ぶのかわからない。
日が暮れる直前、小さな島影を見つけた。
そこで錨を下ろさせてもらおうと近寄る。
「お店だ」
雨雲が厚みを増していた。
玄関灯は片付けられていたが家の明かりがついているので声をかける。
出てきたのは老人だった。
停泊しても構わないと言う。
「あ、ここ本屋だ」
船からウーシーが気づいた。
開いた扉の隙間からは本の山が見える。
途端にグラントが興味を惹かれて外を覗いた。
「魔法使いだ」
ますます興味深そうに眺める。
年寄り相手に真夜中に上がろうとしたところをダルコに止められた。
仕方がないので朝を待つことにする。
泉のない小さな島だ。
何の魔法使いでどんなふうに暮らしているんだろう。
朝、本屋の看板を掲げる音を合図にグラントは船を下りた。
もじゃもじゃの白髪が一歩ごとに揺れる。
どこかの高官のような服を着た、小柄な魔法使い。
「おはようございます。
あの、ちょっとの間お話ししてもいいでしょうか?」
おはよう、と返した老魔法使いは、グラントの杖を見て気づいたような声を出した。
「魔法使いか」
「はい。今は魔法使いです。
でも将来は本屋をやりたくて。
お店を見せてもらってもいいですか?」
「どうぞ」
中を見せてもらうと、そこは魔法使いの勉強に使う本が多かった。
「私が子どもの頃から使っていた教科書だよ。
生きているうちにに売ってしまおうと考えたんだ」
「こんなに本で学習できたなんて、代々魔法使いだったのですか?」
グラントは、師匠があれなので、ほぼ口伝になっている。
店主は一つ首肯した。
「代々魔法使いを継いで、国の要職についていたこともあったんだが。
私の代で子孫が絶えてしまうんだよ。
魔法使いにしか要らない本は、残しておいても仕方ないだろう?」
グラントは山積みにしてある本から一冊取り出す。
「読んでも構いませんか」
「いいよ」
ぱらぱらページをめくった。
「これを、買いたいです」
店主に表紙を示す。
魔法使いになる方法について書かれた本だ。
銀貨十枚と交換する。
「あなたは何の魔法使いですか?」
「若い頃は水の精霊の力を得て戦う魔法使いだった。
今はただの海の漂流者だよ」
「漂流?」
グラントの不思議そうな顔に、老店主は下を指さした。
「この島は大きな海蛇の背中なんだ。
彼が陸地まで店を運んでくれて、私は商売をする。
水や食料を買ったら、また漂流だ」
「いい生活ですね」
羨しい。
ダルコに出るぞと呼ばれて船に戻った。
職人島、という響きから、こぢんまりした小さな島を想像していた。
ここも山がない。
森はなく、人工林が一部にあるくらいだ。
川もどこかの職人たちの練習に使うために残している。
自然のものは見当たらなかった。
「何ぃ? これ」
ウーシーがびっくり顔だ。
「島全体が管理された市場なんだよ」
ダルコが言った。
「ここの主はシャスティっていう人間で、ドレスのデザイナーだ。
他にも実力者の中にはデザイナーがいる。城や甲冑や、街区なんかのな。
そういう者たちは大抵学校を開いてるんだ」
「ダルコは貿易島に来たことがあるの?」
船員が下船の準備をしている。
海の魔物も混じっていた。
大きな階段を一人でかけている。
「あるよ。領主と色んなとこに行った。
ラグラスは一領地というより、公国みたいだったからな」
最盛期には5万人の人口があった辺境領だ。
宿を探すために案内館へ入る。
中心部に近い、主人が一人でやっている宿にした。
この島は常時三十万人の人がいる。
端から端まで走ったらやっぱりニ時間くらいかかるかもしれない。
春に行ったオーディの島より落ち着いているが、街灯の数を見るに、夜も盛況なのだ。
居酒屋が多い。賭け事の店は少ない。
本屋が、港に近い。
やはり環状に道が走っていた。
公園はこちらはテーブルを挟んで向かい合う形のベンチである。
話し合っている機会が多いのだ。
宿のある区域との分かれ道でダルコが言う。
手には今日の市の目録があった。
「宿に挨拶したら、島を好きに見て来たらいいよ。
俺のことを思い出したら見本市に来てくれ。
島の真ん中だ。日の出から日没までやってる」
見本市。
不穏なものを想像してしまう。
宿屋の主人ベグリーに挨拶した。
体格のいい男性で、もとは機械を組み立てる職人だという。
腰痛が原因で引退した。
僧侶でみてあげたら腰が楽になったと喜んでくれた。
時間を確認して、今はご飯どきだと知る。
ウーシーと一緒に店の方へ出た。
ごはんと言いながら酒しか頼んでない親友をうっそりと見る。
「グラントが春に行った時は何がメインの島?」
「燃料と鉱石の取引が主だった。
交易の店舗は本当にたくさんあったよ。
ないものがないくらい」
カバンから紙を数枚取り出して、ウーシーはメモ書きをざっと読んだ。
歩きながら興味のある店を書き留めている。
「色んな店があって面白いなあ。
さっき石の研磨機の店の隣に蜂蜜酒の醸造所があったろ?
もーどっち覗こうかなあ。迷うよなー」
それは、趣味と趣味の二択か。
「修道院で使う方にしなよ」
グラントの言葉に、修道士は束の間まじめに考えた。
「じゃ、醸造だな」
うん。
確信をもって頷く。
「今、ラガー作って砦の作業員に売ろうと思ってんの。
子どもたちあっという間に作るの上手になっちゃってさー。
もうすぐ出来上がるんだ。楽しみー」
「修道院はそういうところって思っちゃうから。
どうなの、子どもに酒造って」
「今は畑だって苗を育てるくらいしかできないだろ?
仕事がすぐなくなると、寂しくなっちゃうと思って醸造始めたわけ」
城に通って、牧場にいるスイートとチーズ作りも行っている。
実験好きのウーシーは、そこにあるもので何かを作り出すのが上手だ。
ウーシーは蜂蜜酒の醸造所に腰を据えて事細かに質問した。
樽をいくつか買い付けてラグラスの船に運ぶよう頼む。
どれがそれだと聞かれ、グラントは幻で船の姿を見せた。
島の中心の見本市のエリアへ入る。
鹿でも飼育しているような背の高い柵が目に飛び込んできた。
柵の内側に布のテントが張り付けられている。
雨が降ったら辛そうだ。
ダルコが誰かと話している。
グラントとウーシーが近づくと、気づいて手を挙げた。
「よう。こっち来たか。
……こいつ、前の月にうちに攻め込んできたやつの元部下」
目の前の青年を指さして紹介する。
まだ二十歳にはなっていなそうな彼の背後には、父親ほどの年の男性が三名ついていた。
監視員らしい。
「あんまり死者が出なかったからな。
隣国では軽微な罪の人間の扱いに困ってるんだと」
監視員たちにグラントをラグラス公であると伝えた。
書類を持っている者がそばに来る。
「彼の今の扱いが書かれたものです。一度お読みください」
名前はテッド。十八歳。授かったばかりの騎士の称号を剥奪された。
クーデターに加わった理由は弱い。
友人が参加するというので加勢した。
専門は剣士。戦歴については従騎士として二回、盗賊の取り締まりに参加している。
実家は農家だ。
労役刑二年。または罰金として金貨十枚を納めること。
「この条件ならどっちかは叶えられそうだよねえ?
どうしてここで売りに出されてるの?」
ウーシーが横から聞いた。
「彼のような兵士が三百人います。
国内ではもはや仕事に就けず、金貨十枚を出してくれる縁者もいない」
金貨十枚の値がついた兵士は顔を上げる。
「牢獄内は過密になっていて暴動の危険があるんです。
できれば戻りたくない。警吏だって鎮圧したくないと言うんです」
訓練された兵士の起こす騒ぎは、確かに怖かった。
監視員も重ねて言う。
「そもそも国の転覆を図った人間に出す飯代の方が罰金よりかかると。
民の間からも批判が高まっているのです。
しかし、一度決まった判決を変更するわけにもいきません。
それで、ここへ就職活動に来ました。
成功すれば彼らは罰金を支払い、国外に去れる」
「騎士の資格を持っていた兵士が金貨十枚で売られてるの?」
傭兵だったら働いてもらえるのは一年ちょっとくらいの額だ。
「就職活動です。自主的な」
決してあれではない。
「どこに行こうと、わだかまりはないんですか?」
グラントの質問に、監視員はテッドを見る。
慌てた様子の十八歳の剣士は首を横に振った。
「ありません、ラグラス公。
むしろあそこに戻れるならそれがいいという者は割といます」
捕虜の間、腹一杯食べさせた効果だろうか。
肌つや良くして返した。
「故郷に近いところがいいんです。呼び寄せたい家族がいる者も多い」
グラントは書類の下の方を読む。
代金の収納期限は2ヶ月後だ。
「採用希望の署名はどこにしたら良いでしょう?
わたしとしては三百人に来てもらってもいいのですが」
三百人一気に内定が出て監視員は驚く。
「本当ですか? それはありがたい話です」
「ただ、ラグラスに来るのは辞退したいという人もいるでしょうし。
こちらも入国させるにあたって条件を出したいと思います。
それで合意できた人だけ、ということにしていいですか?」
「それはもう」
監視員たちは顔を見合わせて安堵していた。
「では、日を改めて文書出しとくわ」
ダルコはグラントから受け取った書類を一読すると相手に返す。
「じゃ、ラグラス公、他の人材も見てみよう」
にやっと笑って歩き出した。
「ダルコ、金貨三千枚もラグラスにあるんだね?」
ウーシーが尋ねる。海砦の頭領は肩をすくめた。
「ねえよ」
ひそめた声で笑いながら答える。
「毎年の税だってようやく現物で納めてるくらいだ。
金策はウーシーたちの方が得意だろ? なんか考えてくれ。
計画ができれば俺たちが動く」
「ええ……」
少しも慌てるそぶりがなかった。
さすがにウーシーもヒく。
「港に大釜はある?」
グラントがすぐに何か思いついたように聞いた。
「海の魔物たちは、鯨の死期を知れる?」
「近くにいれば連絡してもらうことができるぞ」
ダルコの答えに、魔法使いはゆっくりとした口調で言う。
「大きな鯨の脳油を甕に二、三集めて。種類の違うものは混ぜないでほしい。
それをオーディさんの島で量り売りしてみよう。
確か交易の許可は取ってあったよね? あとは品名を入れるだけだった」
「おう」
「小売の資材は現地で手に入る。荷が用意できたら売りに出て」
ダルコはひゃっひゃっと笑った。
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そばに海の魔物を呼んで鯨の捜索を言いつける。
それからグラントを見た。
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