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くずれゆく森
油井の救難
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狼煙?
山の向こうから立ち上った黒煙を見た。
国境の外にいる兵士たちがずっと向こうの異常事態にざわめく。
もう真冬寄りの冬だ。
この辺りにも膝下ほどの雪が積もって昼間も溶けない。
氷のようになった地面の上を、砂塵のように渦巻いて飛ぶ新しい雪。
晴れているほど気温は低くなった。
砲撃の訓練場が慌ただしくなったのはそんな頃だった。
あと二週間で兵役期間が修了する。
ひと月違いで新たな兵役対象者がやってきた。
部屋替えして彼らと二人部屋になった。
ユハの小隊は現在十名で活動している。
黒煙の確認部隊として数十名が向かうことになった。
ユハの部隊もそれについていく。
「ヘーレはな、ここ何年か、うちの兵士が行方不明になる事案が発生してるんだ。
魔物がうろつく土地だし、大型の生き物が多い。
そりゃあ正規の手続きを踏んだって事故に巻き込まれることもある。
だけどなんか、こう、背筋がざわつくんだよなあ」
気をつけて行動してな、と、ユハは新兵たちに注意した。
コンウェイは先だってヘーレ領に出てしまった時の様子を思い出す。
運が良かったのはグラントだけではないようだ。
大蛇との遭遇を避け、馬車の一団は一度南へ向かった。
辺境領を過ぎたところで安全の確認されているトンネルを通る。
「大砦」
ラグラスの近くに出て、グラントは声を上げた。
木々の向こうに大砦が見える。
とてつもなく大きな投石機が一台、屋上に置いてあった。
怒られたのにまだ載せたままでいるようだ。
「この辺りの道、ラグラスで整備してくれたんだな」
馬車の中でユハが言う。
屋根に登っている隊員に声をかけた。
その彼もまた小柄で軽い。
辺りを見回して逐一報告をしていた。
「なんか見えた? 黒い煙はやはり火事かな?」
「わ…っかんないです。でも、動いている旗が見えますよ」
伸びあがって様子を見ている。
「どんな旗?」
「花、です。あれは少し前までこの辺に咲いてた魔物のシチの花だ。
それと、六角形の角に丸い図柄がある旗」
グラントが立ち上がって屋根に飛びついた。
素早くよじ登って隊員と同じ方を見やる。
少し先で合流するように、空に魔法で道案内を書いた。
あれはウーシーだ。
どこかへ進軍している。
「ラグラスの鉄砦が出撃しています。
黒い煙の事情を知っているんだと思います」
屋根から一度報告した。
ユハは了解と頷く。
山を崩すような音が遠くから伝わった。
そちらは森が広がるばかりで、あるとしたら、落石か。
「投げていいです?」
空を指してグラントは隊員に聞いた。
「突然だね、ずいぶん」
困った顔をしたが、鉱石の魔物は後輩のために飛んでみることにする。
「見るのは前方、歩いて約半日の距離です。
滞空している間に右手の崖の上を注意していてください」
「おう」
隊員は体をそちらに向けた。
杖が振られるのと同時にぶち上がる。
「高っかい!」
人間より頑丈だと思われているせいだ。
低い雲と同じ高さに飛んで、言われた方を確認する。
燃えているのは森の中の小さな町だ。
そこへ飛んできているのは丸太か?
低い崖の上を、旗印のない部隊が動いている。
投石機ではない。
軌道は大砲のものだった。
空気を震わせて、細長い砲弾が油井にできた防護壁に当たる。
あの部隊はヘイゼルの油井を襲っていた。
ラグラスは鉄道沿いに兵を進めている。
「見えた」
グラントの魔法に受け止められてすぐ隊員は状況を教えた。
ユハが中から大隊長に報告してくるよう命じる。
その隊員は車を飛び降りて走っていった。
少し先で部隊が出会う。
馬車が止まった。
待つ間もなくウーシーが馬で駆け寄ってきた。
「グラント! 見た? 見た? 大砲だった!」
山の向こうから立ち上った黒煙を見た。
国境の外にいる兵士たちがずっと向こうの異常事態にざわめく。
もう真冬寄りの冬だ。
この辺りにも膝下ほどの雪が積もって昼間も溶けない。
氷のようになった地面の上を、砂塵のように渦巻いて飛ぶ新しい雪。
晴れているほど気温は低くなった。
砲撃の訓練場が慌ただしくなったのはそんな頃だった。
あと二週間で兵役期間が修了する。
ひと月違いで新たな兵役対象者がやってきた。
部屋替えして彼らと二人部屋になった。
ユハの小隊は現在十名で活動している。
黒煙の確認部隊として数十名が向かうことになった。
ユハの部隊もそれについていく。
「ヘーレはな、ここ何年か、うちの兵士が行方不明になる事案が発生してるんだ。
魔物がうろつく土地だし、大型の生き物が多い。
そりゃあ正規の手続きを踏んだって事故に巻き込まれることもある。
だけどなんか、こう、背筋がざわつくんだよなあ」
気をつけて行動してな、と、ユハは新兵たちに注意した。
コンウェイは先だってヘーレ領に出てしまった時の様子を思い出す。
運が良かったのはグラントだけではないようだ。
大蛇との遭遇を避け、馬車の一団は一度南へ向かった。
辺境領を過ぎたところで安全の確認されているトンネルを通る。
「大砦」
ラグラスの近くに出て、グラントは声を上げた。
木々の向こうに大砦が見える。
とてつもなく大きな投石機が一台、屋上に置いてあった。
怒られたのにまだ載せたままでいるようだ。
「この辺りの道、ラグラスで整備してくれたんだな」
馬車の中でユハが言う。
屋根に登っている隊員に声をかけた。
その彼もまた小柄で軽い。
辺りを見回して逐一報告をしていた。
「なんか見えた? 黒い煙はやはり火事かな?」
「わ…っかんないです。でも、動いている旗が見えますよ」
伸びあがって様子を見ている。
「どんな旗?」
「花、です。あれは少し前までこの辺に咲いてた魔物のシチの花だ。
それと、六角形の角に丸い図柄がある旗」
グラントが立ち上がって屋根に飛びついた。
素早くよじ登って隊員と同じ方を見やる。
少し先で合流するように、空に魔法で道案内を書いた。
あれはウーシーだ。
どこかへ進軍している。
「ラグラスの鉄砦が出撃しています。
黒い煙の事情を知っているんだと思います」
屋根から一度報告した。
ユハは了解と頷く。
山を崩すような音が遠くから伝わった。
そちらは森が広がるばかりで、あるとしたら、落石か。
「投げていいです?」
空を指してグラントは隊員に聞いた。
「突然だね、ずいぶん」
困った顔をしたが、鉱石の魔物は後輩のために飛んでみることにする。
「見るのは前方、歩いて約半日の距離です。
滞空している間に右手の崖の上を注意していてください」
「おう」
隊員は体をそちらに向けた。
杖が振られるのと同時にぶち上がる。
「高っかい!」
人間より頑丈だと思われているせいだ。
低い雲と同じ高さに飛んで、言われた方を確認する。
燃えているのは森の中の小さな町だ。
そこへ飛んできているのは丸太か?
低い崖の上を、旗印のない部隊が動いている。
投石機ではない。
軌道は大砲のものだった。
空気を震わせて、細長い砲弾が油井にできた防護壁に当たる。
あの部隊はヘイゼルの油井を襲っていた。
ラグラスは鉄道沿いに兵を進めている。
「見えた」
グラントの魔法に受け止められてすぐ隊員は状況を教えた。
ユハが中から大隊長に報告してくるよう命じる。
その隊員は車を飛び降りて走っていった。
少し先で部隊が出会う。
馬車が止まった。
待つ間もなくウーシーが馬で駆け寄ってきた。
「グラント! 見た? 見た? 大砲だった!」
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