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闇に寄り添い、願いを結ぶ
願いのゆくえ
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真冬の最中、ヘイゼルら捕えられていた豪商たちは解放された。
重課税の処分も取り消しになった。
まだ公に宣言されてはいないが、ダヴィが元気になったのだ。
ウィラードが極秘のうちに入城していく日か経っている。
森の公爵は国を乱すことをやめたのではないかと憶測が流れた。
ダヴィ王がちゃんと話をしてくれたのに違いない。
都の人々は期待に目を輝かせた。
グラントはこの冬、ラグラスに帰り損ねている。
思ったよりも大ごとになってしまったのだ。
都で起こった全てのことに関わったために足止めをされていた。
シェリーがひとに戻った時、ウィラードは大変な状態で。
グラントとジェロディが同時に処置してなんとか命を繋ぎ止めている。
城の神官や呪い師が奔走する中、ダヴィが魔法で薬を作ってくれた。
ヴァルトに残ったレイがクイルの隊員とホルストらの棺を回収してきた。
精霊を呼ぶのに使う呪符が前ヘーレ公の手にあった。
バロールでしか使わない符で、ウィラードには手に入れようのない品だ。
ホルストの再審議で判決は覆った。
ダヴィが預かっていた証拠とウィラードやジェロディの証言が採用されたのだ。
ホルストとその子息は王族の身分が復活し、王家の墓所に安置された。
兵役完了の書類とともにコンウェイが封印されたグラントの入れ墨を持ってきて。
アッシャーがあっという間に戻した。
人生で一番というくらいの大声にウーシーはしつこく大笑いした。
残念な出来事もあった。
ヘーレからの報告で、ラーポたちが確認した赤い石は相当数にのぼった。
ブレイズの証言では全て同胞である。
封印の解き方が分からず、目下のところ王宮にて保管されることになった。
彼らは石の中では時が止まっている。
壊したらどうなるのか。そもそも出たいのか、出たくないのか。
謎だらけなのだ。
落ち着いたら人を集めて委員会を組織することになった。
ブレイズだけは意思が決まった。
壊れて消えてしまってもいい。
ウーシーに持っていてもらいたいのだ。
ラグラスの領民として過ごしたい。
そんなわけで、ラグラスには石の領民が誕生した。
そんな折、牢獄に隔離されていたヘーレ公バルトサールが襲われた。
これを使うと決めた張本人が消えた。
最も詳細を知る者を失って、いよいよ石の処遇は不透明になった。
同時にレミーの行方も分からなくなった。
牢獄の騒動のどさくさで誰も見ていなかった。
ちょっと笑ってしまったのは、カーラの輿入れが決まったことだ。
それを知ったのは春の近い日。
ウィラードが動けるまでに回復してすぐだ。
「殿下に似合いの国だと思ってね。
前から目をつけていたのだよ」
バレットでお茶を飲みながらアッシャーがゆったりと話す。
もうお茶のセットごとやってくる光景にも慣れてしまった。
周辺の住民は気軽に従者たちへ話しかけている。
バレットの館にとんでもない顔ぶれが揃っていた。
グラントはヒいた目で端に座っている。
隣の席にはシェリーがいた。
ホールのテーブルについているのは、アッシャーと、レイとウーシーと。
コーマック、ジェロディ、ダヴィ、そしてウィラードだ。
アッシャーが人のうちでお茶をしながら話そうと勝手に集めた面々である。
「先方の王子もカーラ殿下をいたく気に入っているんだ。
これはこれは良い縁があったものだよ」
カーラの警護のためと、アッシャーは西のとある国へ連れて行った。
国王はアッシャーと同じ鉱石の魔物。
その子息がカーラを気に入ったのだという。
ならばと置いてきてヘーレの戦闘に間に合ったのだ。
「私はグラントの人生を手伝いたいと言ったろう?」
そう言って笑うきれいな顔を、エルネストたちはなんと評するのだろう。
春が始まる頃、向こうの王子がカーラを連れてやってくる。
そして夏の前に婚礼の行列とともにシュッツフォルトを旅立つ予定だ。
「弟のことについては、コーマックに難儀させてばかりで申し訳ない」
ダヴィがじじいに謝った。
「謝ってくださる必要はありません」
コーマックが少し笑いながら言うのに、グラントは心の中で同調する。
このじじいは昔のツテを使ってジャックス夫妻を外国の王家の養子にしてしまった。
ちょうど後継者が絶えて次の王をどうするかという所だった。
遠い遠い海の向こうの国だ。
現役時代にそんな所へ恩を売っていたコーマック。
そのことを思い出したのは、なすりつけられた難癖に腹がおさまらなかったからだ。
やられたままではいないところが武将というものなのかもしれない。
もはや王の代行ではなくなった。
王宮にしばらく出禁になったジャックスは都の中に滞在するうちに居心地悪くなった。
王の権威を剥がされたジャックスに都の人々はキツくあたったのだ。
逃げたいとそればかり考えていた所へ養子の話がきた。
それが途方もなく遠い国で。
しかもカーラとは真逆の方向で。
簡単に帰っては来られない国だと知ったのは承諾したあとだ。
その国は侍従長の権力が強い。
王は然るべき身分で育った者なら誰だっていいのだそうだ。
国家を運営する役人組織が確立されているから。
王に君臨する力など与えない。
「レイにはこれを」
シェリーが装飾の美しい箱を差し出した。
グラントが手伝ってレイに渡す。
中を確かめたレイはやれやれと息を吐いた。
「感謝します。返してもらえて本当に助かります」
これから親に投げつけるんじゃないかとグラントは不安になる。
リケの売買を中止させるにあたっては、レイにはいま強力な武器があった。
侯爵の身分を得た。
親に結納品を用意してもらう必要はない。
北の辺境伯ケイレブが雪解けを待って都に来る。
それと一緒に叙勲を受けるのだ。
西の辺境伯にはクイルの団長が内定している。
国の北西部の防衛は事実上クイルが担うことになった。
「ウィラード卿はお加減は? その後どうですか」
ジェロディの問いに一瞬その場が静まる。
「まだ剣は振れませんが、生きていく上で不自由はありません」
すっかり落ち着いた声でウィラードは答えた。
彼は公爵の身分を剥奪されている。
今は騎士爵。
そして春からはシュトラールの主となる予定だ。
「また動けること自体が夢のようです」
ダヴィがその肩に手を添える。
労わるような表情だ。
ウィラードには任務が下っている。
赤い石の調査を行うこと。
ダヴィの御代のうちに必ずやり遂げよ。
彼の処遇を審議する場でそのように決まった。
ウィラードは祖父のことを思って行動しただけだ。
レミーに嘘を吹き込まれて育ちながら、最後は自ら決別していた。
無茶を起こしたのも焦りからだった。
その場にいたのがダヴィならウィラードが怒ることもなかった。
シェリーとグラントが寛大な処遇を求めたことも大きい。
本当のことを知っていれば起きなかったことだ。
嘘に気づけたからこその策だった。
それに、と言うウィラードは端と端に離れたグラントを見やる。
「グラント・ルースには剣でも魔物の力でも敵わなかった。
せめて彼を追い出して館をいただけるのは気分がいい」
「わたしは魔法使いです。
バレットは僥倖で賜っただけ」
飛んできた矢をかわすようにグラントはぼそりと答えた。
「本屋をやりたかっただけなんですよ」
忙しくてゆっくり物件を見て回る時間などなかった。
この二年ほど。
やっと本当に元の生活に戻れる。
じじいと師匠があさってを見ているのが不穏だけれども。
暦が始まる数日前、ダヴィは王になったことを宣言した。
外の伯爵たちが税金を持って駆けつけた。
都も落ち着きを取り戻した。
新しいノルトエーデ公には珠のような女の子が母とともに随行してきた。
喜びの春になった。
重課税の処分も取り消しになった。
まだ公に宣言されてはいないが、ダヴィが元気になったのだ。
ウィラードが極秘のうちに入城していく日か経っている。
森の公爵は国を乱すことをやめたのではないかと憶測が流れた。
ダヴィ王がちゃんと話をしてくれたのに違いない。
都の人々は期待に目を輝かせた。
グラントはこの冬、ラグラスに帰り損ねている。
思ったよりも大ごとになってしまったのだ。
都で起こった全てのことに関わったために足止めをされていた。
シェリーがひとに戻った時、ウィラードは大変な状態で。
グラントとジェロディが同時に処置してなんとか命を繋ぎ止めている。
城の神官や呪い師が奔走する中、ダヴィが魔法で薬を作ってくれた。
ヴァルトに残ったレイがクイルの隊員とホルストらの棺を回収してきた。
精霊を呼ぶのに使う呪符が前ヘーレ公の手にあった。
バロールでしか使わない符で、ウィラードには手に入れようのない品だ。
ホルストの再審議で判決は覆った。
ダヴィが預かっていた証拠とウィラードやジェロディの証言が採用されたのだ。
ホルストとその子息は王族の身分が復活し、王家の墓所に安置された。
兵役完了の書類とともにコンウェイが封印されたグラントの入れ墨を持ってきて。
アッシャーがあっという間に戻した。
人生で一番というくらいの大声にウーシーはしつこく大笑いした。
残念な出来事もあった。
ヘーレからの報告で、ラーポたちが確認した赤い石は相当数にのぼった。
ブレイズの証言では全て同胞である。
封印の解き方が分からず、目下のところ王宮にて保管されることになった。
彼らは石の中では時が止まっている。
壊したらどうなるのか。そもそも出たいのか、出たくないのか。
謎だらけなのだ。
落ち着いたら人を集めて委員会を組織することになった。
ブレイズだけは意思が決まった。
壊れて消えてしまってもいい。
ウーシーに持っていてもらいたいのだ。
ラグラスの領民として過ごしたい。
そんなわけで、ラグラスには石の領民が誕生した。
そんな折、牢獄に隔離されていたヘーレ公バルトサールが襲われた。
これを使うと決めた張本人が消えた。
最も詳細を知る者を失って、いよいよ石の処遇は不透明になった。
同時にレミーの行方も分からなくなった。
牢獄の騒動のどさくさで誰も見ていなかった。
ちょっと笑ってしまったのは、カーラの輿入れが決まったことだ。
それを知ったのは春の近い日。
ウィラードが動けるまでに回復してすぐだ。
「殿下に似合いの国だと思ってね。
前から目をつけていたのだよ」
バレットでお茶を飲みながらアッシャーがゆったりと話す。
もうお茶のセットごとやってくる光景にも慣れてしまった。
周辺の住民は気軽に従者たちへ話しかけている。
バレットの館にとんでもない顔ぶれが揃っていた。
グラントはヒいた目で端に座っている。
隣の席にはシェリーがいた。
ホールのテーブルについているのは、アッシャーと、レイとウーシーと。
コーマック、ジェロディ、ダヴィ、そしてウィラードだ。
アッシャーが人のうちでお茶をしながら話そうと勝手に集めた面々である。
「先方の王子もカーラ殿下をいたく気に入っているんだ。
これはこれは良い縁があったものだよ」
カーラの警護のためと、アッシャーは西のとある国へ連れて行った。
国王はアッシャーと同じ鉱石の魔物。
その子息がカーラを気に入ったのだという。
ならばと置いてきてヘーレの戦闘に間に合ったのだ。
「私はグラントの人生を手伝いたいと言ったろう?」
そう言って笑うきれいな顔を、エルネストたちはなんと評するのだろう。
春が始まる頃、向こうの王子がカーラを連れてやってくる。
そして夏の前に婚礼の行列とともにシュッツフォルトを旅立つ予定だ。
「弟のことについては、コーマックに難儀させてばかりで申し訳ない」
ダヴィがじじいに謝った。
「謝ってくださる必要はありません」
コーマックが少し笑いながら言うのに、グラントは心の中で同調する。
このじじいは昔のツテを使ってジャックス夫妻を外国の王家の養子にしてしまった。
ちょうど後継者が絶えて次の王をどうするかという所だった。
遠い遠い海の向こうの国だ。
現役時代にそんな所へ恩を売っていたコーマック。
そのことを思い出したのは、なすりつけられた難癖に腹がおさまらなかったからだ。
やられたままではいないところが武将というものなのかもしれない。
もはや王の代行ではなくなった。
王宮にしばらく出禁になったジャックスは都の中に滞在するうちに居心地悪くなった。
王の権威を剥がされたジャックスに都の人々はキツくあたったのだ。
逃げたいとそればかり考えていた所へ養子の話がきた。
それが途方もなく遠い国で。
しかもカーラとは真逆の方向で。
簡単に帰っては来られない国だと知ったのは承諾したあとだ。
その国は侍従長の権力が強い。
王は然るべき身分で育った者なら誰だっていいのだそうだ。
国家を運営する役人組織が確立されているから。
王に君臨する力など与えない。
「レイにはこれを」
シェリーが装飾の美しい箱を差し出した。
グラントが手伝ってレイに渡す。
中を確かめたレイはやれやれと息を吐いた。
「感謝します。返してもらえて本当に助かります」
これから親に投げつけるんじゃないかとグラントは不安になる。
リケの売買を中止させるにあたっては、レイにはいま強力な武器があった。
侯爵の身分を得た。
親に結納品を用意してもらう必要はない。
北の辺境伯ケイレブが雪解けを待って都に来る。
それと一緒に叙勲を受けるのだ。
西の辺境伯にはクイルの団長が内定している。
国の北西部の防衛は事実上クイルが担うことになった。
「ウィラード卿はお加減は? その後どうですか」
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「また動けること自体が夢のようです」
ダヴィがその肩に手を添える。
労わるような表情だ。
ウィラードには任務が下っている。
赤い石の調査を行うこと。
ダヴィの御代のうちに必ずやり遂げよ。
彼の処遇を審議する場でそのように決まった。
ウィラードは祖父のことを思って行動しただけだ。
レミーに嘘を吹き込まれて育ちながら、最後は自ら決別していた。
無茶を起こしたのも焦りからだった。
その場にいたのがダヴィならウィラードが怒ることもなかった。
シェリーとグラントが寛大な処遇を求めたことも大きい。
本当のことを知っていれば起きなかったことだ。
嘘に気づけたからこその策だった。
それに、と言うウィラードは端と端に離れたグラントを見やる。
「グラント・ルースには剣でも魔物の力でも敵わなかった。
せめて彼を追い出して館をいただけるのは気分がいい」
「わたしは魔法使いです。
バレットは僥倖で賜っただけ」
飛んできた矢をかわすようにグラントはぼそりと答えた。
「本屋をやりたかっただけなんですよ」
忙しくてゆっくり物件を見て回る時間などなかった。
この二年ほど。
やっと本当に元の生活に戻れる。
じじいと師匠があさってを見ているのが不穏だけれども。
暦が始まる数日前、ダヴィは王になったことを宣言した。
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