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その声で名前を呼んで、何度でも
久しぶりの休日
しおりを挟む「……ん」
掠れた音は、自分が零した寝起きの声。
閉じたままの瞼に朝の訪れを知らせる白い光が当たっているけれど、まだ目を開ける気にはなれない。
意識の半分は、まだ夢で揺蕩っている。それなら、もう少し……。
「起きたの?」
「ん……え?」
もう少しだけ夜を引きずっていたいと枕にこめかみを擦りつけた瞬間、柔らかな囁きが耳に落ちた。
「あっ! お、おはようっ」
驚愕が眠気を吹き飛ばし、カッと目を見開く。正面に、輝く笑顔が見える。
「おはよ。まだ眠いのに驚かせたか? ごめん」
挨拶を返してくれた相手の笑みが眩しい。つい最近、単なる仕事仲間から恋人に昇格できた、大好きな人だ。
「悲しそうな声が聞こえた気がした。嫌な夢でも見た?」
恋してる人が、おはようのキスとともに聡い問いも降らせてくれるものだから、僕は素直に頷くんだ。
「うん。でも、大丈夫」
八割だけ、真実を答える。残りの二割は虚勢だ。覚醒が遅かったのは、夢の中の自分が走りながら泣いていたことを覚えているから。
「心配いらないよ。それより、いつから起きてたの? あ、もしかして、お腹すいた?」
まだ意識の片隅に残っている夢の断片はどこか切ない感情を僕に突きつけていたけれど、笑って虚勢を張った。
今日は、久しぶりに二人きりで過ごせる休日だからだ。
「お腹はまだすいてないよ。あと、いつから起きてたかは、よく覚えてないなぁ。ふと目が覚めたら目の前にお前の寝顔があって。それで、めちゃ可愛いなぁって、じーっと見てただけだからなぁ。あ、でも、見てる間に外が明るくなったから、たぶん、一時間くらい前?」
「え……」
一時間? この人、一時間って言った? 一時間も僕の寝顔を見てたってこと?
「どうした? 俺、なんか変なこと言ったか?」
相手の告白を聞き間違いだと思いたい。聞き間違いでないのならクレームをつけたい。
「ううん。変なことは何も」
けれど、あまりにも幸せそうな微笑を見せてくれているから、余計なことを言うのはやめた。
大好きなヘーゼルの瞳に一時間も凝視されていた事実はかなりの衝撃を自分に与えたけれど、相手がにこにこと機嫌良く笑っているのだから、寝顔を観察されていた羞恥心は伝えなくてもいいと思ったんだ。
「あ、これだけは聞かせてほしいかな。僕、おかしな寝言とか言ってなかった?」
ただ、相手の目に自分がどう映っていたのか、それだけは気になる。
何しろ、この恋人は顔立ちが整いすぎている。誰もが見惚れる容貌の持ち主に無防備な姿を晒していた間、自分は何かやらかしていなかっただろうか。
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