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その声で名前を呼んで、何度でも
大好きだよ
しおりを挟むこの類い稀な美形の前で、例えば涎を垂らすとか、いびきをかくとか、鼻息荒く寝言を言うとか、まさかそんな粗相を……。
「寝言? ううん、何にも言ってなかったよ。正直、ムニャムニャしながら俺の名前とか言ってくんないかなって期待して、ずっと見つめてたんだけどさ。行儀の良い寝姿だけを堪能してた時間だったよ。残念ながら肩透かしー」
「肩透かし?」
「うん。寝顔がすっげぇ可愛いから、この顔で『リュカ、好き』って寝言を言ってくれたら、間髪入れずにめっちゃ濃厚なキスして起こしてやろうって目論んでたんだ。ほら、お姫様は王子のキスで目覚める的な定番のアレをやりたくってさ」
「お、おひ?」
お姫様って……。
姫とか王子とか、全く何を言ってるんだろう。ずっと働き詰めで疲れてるだろうに、せっかくの休みに早くから起きて何してるんだろう。
相手に物申したいことは幾らでもある。
「そっか。変な寝言を言ってなかったなら良かった」
けれど、自分が口にしたのは別のこと。ゆるりと抱きしめてくれている恋人の表情に、鼓動が跳ね上がったからだ。『愛しい、愛しい』と、自分への愛情を隠していない柔らかな微笑に胸を撃ち抜かれてしまった。
本気で、自分たちを姫と王子になぞらえているこの恋人が、僕も心から愛おしいんだ。
あー、でも困ったな。
顔が熱くなってきたよ。じわじわ、じわじわ。頬は火照るし、脈も早まっていく。いつもこうだ。『好き』って思うだけで、全身に熱が溜まる。
僕、ほんとにこの人のことが好きなんだなぁ。
「詩音?」
好き好きって心の中で連呼してたら、何とも言えない優しい響きで名を呼ばれた。
「はい」
「俺の名前、呼んで?」
「リュカ」
「もう一回」
「リュカ」
「好きだよ、詩音」
「僕も」
このやり取りは、昨夜も行われた。
二人で身体を重ね、熱を分かち合いながら名を呼び合った。
快楽の海でどろどろに蕩かされる合間、何度も愛を伝えた。飽きもせず。
「好き。リュカ。大好きだよ」
飽きるわけがない。キスの最中、唇を触れ合わせたまま『好き』をくれる相手が僕はとても好きで。同じ言葉を返せることが本当に嬉しいんだから。
飽きるどころか、何度、伝えたって足りない。
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