その声で名前を呼んで、何度でも

冴月希衣@商業BL販売中

文字の大きさ
3 / 5
その声で名前を呼んで、何度でも

大好きだよ

しおりを挟む



 この類い稀な美形の前で、例えば涎を垂らすとか、いびきをかくとか、鼻息荒く寝言を言うとか、まさかそんな粗相を……。
「寝言? ううん、何にも言ってなかったよ。正直、ムニャムニャしながら俺の名前とか言ってくんないかなって期待して、ずっと見つめてたんだけどさ。行儀の良い寝姿だけを堪能してた時間だったよ。残念ながら肩透かしー」
「肩透かし?」
「うん。寝顔がすっげぇ可愛いから、この顔で『リュカ、好き』って寝言を言ってくれたら、間髪入れずにめっちゃ濃厚なキスして起こしてやろうって目論んでたんだ。ほら、お姫様は王子のキスで目覚める的な定番のアレをやりたくってさ」
「お、おひ?」
 お姫様って……。
 姫とか王子とか、全く何を言ってるんだろう。ずっと働き詰めで疲れてるだろうに、せっかくの休みに早くから起きて何してるんだろう。
 相手に物申したいことは幾らでもある。
「そっか。変な寝言を言ってなかったなら良かった」
 けれど、自分が口にしたのは別のこと。ゆるりと抱きしめてくれている恋人の表情に、鼓動が跳ね上がったからだ。『愛しい、愛しい』と、自分への愛情を隠していない柔らかな微笑に胸を撃ち抜かれてしまった。
 本気で、自分たちを姫と王子になぞらえているこの恋人が、僕も心から愛おしいんだ。

 あー、でも困ったな。
 顔が熱くなってきたよ。じわじわ、じわじわ。頬は火照るし、脈も早まっていく。いつもこうだ。『好き』って思うだけで、全身に熱が溜まる。
 僕、ほんとにこの人のことが好きなんだなぁ。
詩音しおん?」
 好き好きって心の中で連呼してたら、何とも言えない優しい響きで名を呼ばれた。
「はい」
「俺の名前、呼んで?」
「リュカ」
「もう一回」
「リュカ」
「好きだよ、詩音」
「僕も」
 このやり取りは、昨夜も行われた。
 二人で身体を重ね、熱を分かち合いながら名を呼び合った。
 快楽の海でどろどろに蕩かされる合間、何度も愛を伝えた。飽きもせず。
「好き。リュカ。大好きだよ」
 飽きるわけがない。キスの最中、唇を触れ合わせたまま『好き』をくれる相手が僕はとても好きで。同じ言葉を返せることが本当に嬉しいんだから。
 飽きるどころか、何度、伝えたって足りない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...