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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】
Summer Breeze【4−9】
しおりを挟む「ん、待っ……ふぁ」
唇を合わせた状態で伝える制止の声は、熱っぽくキスを深めてくる奏人のせいで、互いの口内を震わせる効果にしかならない。
「かな、と」
それでも、もう一度と名前を呼んでみれば、下唇だけを触れ合わせたまま低めた声が返ってきた。
「涼香が嫌なら、何もしないよ」
奏人?
「君が、嫌だって言うことはしないと約束する。だから、俺とふたりきりになるのを嫌がることだけはしないで。ね?」
あ、そんな顔しないで。私、そんな切なそうな奏人の顔、見たくないの。
ぎゅっと胸を締めつけられて、気づけば「うん、しない」と返事をしていた。
「ありがとう。なら早速、涼香の『嫌』のボーダーライン、確認していい?」
え?
「キスは、いい? それから、ここは? ここに痕を残すのは構わない?」
再び私の唇をかすめた奏人の唇は、次に首筋におりていった。
え? ちょっと待って?
まさか、順番に確認していくの? 今から? 嘘でしょ?
これじゃ、また振り出しに戻ってるじゃない!
「ここも、いいよね? 襟元で隠れる位置ならいいって、前に教えてくれてたし」
「奏人っ? あの、あのっ……」
どうしよう。唇が! 首筋から下におりてくぅ。
えっと、えっと……これ以上は駄目よ。駄目って言わなくちゃ。駄目って……。
「……ぁっ」
「ん? 今の、感じた?」
わああぁ! 私のばかぁ!
鎖骨にちゅうって吸いつかれて、ぴくんっとかしてる場合じゃないのよぅ!
「かっ、奏人! だだっ、駄目! も、もう、嫌! ですっ」
奏人は、私を押さえつけたりしてない。だから、ちゃんと言えばわかってくれるはず。
「……ん、了解。もうやめるね。はい、起きられる?」
「あ、うん」
すっと私から離れた奏人が差し出してくれた手に掴まって、私もビーチマットから身を起こした。
な、なんだか、ずいぶん長く横たわってたような気がするわ。
でも、良かった。ほらね、やっぱり奏人はわかってくれ……。
「でも、白い肌って、触りたくなるよね。無性に。そして、離れがたい」
「え? あっ!」
待って? どうして私、奏人の膝に乗ってるの? しかも後ろ向きに!
「最後に、背中にひとつだけ、痕を残させて? いい?」
ずるい! こんな良い声を不意打ちで落としてくるなんて。その上『駄目?』じゃなく、『嫌?』でもなく。『いい?』としか聞かないなんて……。
あなたのことが大好きな私は、首を縦に振るしか、選択肢はないじゃない。
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