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第三章
chapter【3−1】
しおりを挟む「ただいまー。萌々ちゃーん、お兄ちゃんが帰ってきたよー……あれ? いらっしゃい。君、確か、バスケ部の子ですよね。煌に用ですか?」
「あっ、宮ちゃん先生。こんにちは! そうです。俺、バスケ部の武田慎吾です。今日は尊敬する宮さまの生態をつぶさに観察……違った! 宮さまのディテール情報を五感でねっとりと拾い上げるため……これも違った! 宮さまにご招待されてお邪魔してます。よろしくですっ」
「『宮さま』? あぁ、煌のことですか。はい、ゆっくりしていってくださいね」
浴衣製作のために必要な計測は全て終わった。
でも、武田くんを家に呼ぶための餌にした煌兄ちゃんが帰宅するまでの間、二人で映画でも観ながらまったり過ごそうとディスクを選んでる最中に、晶《しょう》兄ちゃんがなぜか帰ってきた。
なんで帰ってくるのよぅ。晶兄ちゃんは、自分の家に帰りなさいよぅ。
祥徳の養護教諭に、ジト目を向ける。唇が尖る。
そりゃ、たまーにこんな風にふらっと帰ってきたりするけど、何も武田くんが来てる日に帰ってこなくてもいいじゃん! 一人暮らしの家に帰れ!
「晶兄ちゃん、今日は何の用?」
空気を読まない長兄に不満が大爆発したから、めちゃつっけんどんな言い方になった。
「ん? 萌々ちゃんはどうしたのかな? そんな膨れっ面して。可愛いお顔が台無しですよー。というか、大好きなお兄ちゃんにそんな言い方するなんて悪い子だな。悪い子には、お、仕、置、き!」
「うぎゃああぁ! やめてぇ!」
ディスクを物色するためにリビングの床にぺたんと座っていた私の背中に、変態が覆い被さってきた。その上、ぎゅっと抱きしめて頬ずりまでされてる!
「ほら、素直に『晶兄ちゃん大好き』って、言ってみな?」
「いぃやあぁぁーっ!」
こんな子ども扱いされてるとこ、大好きな武田くんに見られたくないぃ!
「ふあぁ……敬語キャラじゃない宮ちゃん先生、めちゃめちゃかっけー! お、俺、なんかドキドキしてきたっ」
……え?
「ギャップ萌え、最高! 宮ちゃん先生、敬語紳士だと思ってたけど、白衣脱いだら『俺様キャラ』なんすかっ? かっけーっす! 堪んないっす!」
ちょ、武田くん?
「宮さまが帰ってきたら『俺様対決』ヤッてほしいっす。『大人の色気俺様』VS『野性的ヤンチャ俺様』で! 俺、二人ともにアライグマ饅頭5個ずつ、賭けますんで!」
「あははっ! 武田くんだったっけ? 君、面白いね。うん、気に入った。よし、今から君にとても良いモノを見せてあげよう。特別に、だよ」
「えっ、『良いモノ』っすか? な、なんだろっ? 慎ちゃん、ドキドキしちゃう。あ、そうだ。バッチリしっかり見えるように眼鏡かけちゃおうかしらっ?」
「お、君も『たまに眼鏡キャラ』なのか? 気が合うね。俺も普段はかけないけど眼鏡を持ち歩いてるんだよ」
「ふおぉ! 宮ちゃん先生と『気が合う』とか、嬉しいっす! しかし、『気』以外も合うとこを探さねば!」
あーのぅ、武田く……。
「じゃあ、武田くん。ここ、見てご覧。うちの萌々ちゃんのコレクションだよ。こんなのばっかり買い集めては、夜な夜な観てるんだ。もう、堪らなく可愛いだろ?」
「んぎゃああぁぁーっ!」
晶兄ちゃん、何してんのっ? 武田くんに、ナニ見せてんのっ?
それ! 私の秘蔵の幕末&戦国ものアニメの円盤んんんーっ!
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