お気に召すまま、齧りついて

冴月希衣@商業BL販売中

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お友だち、さらに増える

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「お? なんだ、これ。意外と旨いじゃねぇか。いける、いけるっ」

「あら、ほんと。あわびの言う通りだわっ。どろどろの見た目がちょっとアレだけど、お味は最高よ。通頼ちゃん、これは何の乳かしら? 牛?」

「はい、牛の乳です。我が邸の牛は、但馬国たじまのくにの荘園から届く優良な牛でして。お出ししたものは、らくとも、『にゅうのかゆ』とも呼ばれている食べ物なのですが、お気に召していただけたようで幸いです」

「ふーん。『にゅうのかゆ』ねぇ。牛の乳から作った粥、ってことかしら。ねぇ、通頼ちゃん? これの作り方をアタシに教えてくれない? 光成ちゃんにお願いして、大納言家でも作ってもらうわ。光成ちゃんの妹姫も猫を飼ってるから、ちょうどいいと思うの」


 ――季節は秋。

 身を痛めつけていた残暑はいつの間にか遠のき、涼風がうなじをくすぐる時候に移り変わっていた。

「かしこまりました、朱鷺丸殿。では後ほど、紙に詳しくしたため、お渡しいたします」

「嬉しいわぁ。通頼ちゃん、ありがとっ」

 偶然出会った人語を話す猫ちゃんたちは、その後、頻繁に我が邸に遊びに来てくれている。僕が願った通り、『友だち』として。

 ああぁ、夢のようだ。その上――。

「みちより! うずらまるも! うずらまるも、これ、つくる。だから、うずらまるにも、つくりかたをおしえろ」

「あ、はいっ。承知いたしました。では、うずら丸殿にも、同じ覚え書きを後ほどお渡しいたしましょう」

 その夢の如き日々に、輪をかけて幸せ気分が膨らむ変化が起きている。

「うん、たのむ。『にゅうのかゆ』とてもうまい。うずらまる、しあわせ」

「そのようにおっしゃっていただけて、僕も幸せですぅ。木桶に三杯ぶん、たっぷり作りましたので、皆様、全部どうぞーっ」

 人語を操る猫が、三匹に増えているのだ。嬉しいことに!

 こんな、ご都合主義な幸運が僕に舞い降りて良いのだろうかっ!


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