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弐
妖猫、うずら丸
しおりを挟む「ねぇ、うずら丸ちゃん? 今、『これを作る』って言ってたけど。当然、うずらまるちゃんが実際に作るわけじゃないでしょ?」
「はい、ときまるさま。『にゅうのかゆ』をつくるのは、うずらまるじゃないよ。まもりだ。まもりにたくさんつくらせるから、ときまるさまも、うずらまるといっしょに『にゅうのかゆ』をくおう」
「あらー、やっぱり陰陽小僧が作るのね。でも陰陽小僧、ちゃんと作れるのかしら。朱鷺丸、不安しかなーい」
「まもりは、りょうり、へただ。いつも、くそまずい。でも、ざいりょうがよかったら、なんとかなるよ。たぶん」
「ちょっと待て! 黙って聞いてれば、勝手なことばっかり言ってるんじゃないぞ。『たぶん』って何だ!」
新たに僕のお友だちになってくれた緋色の瞳を持つ白猫、うずら丸殿。
少したどたどしい人語がとても愛らしいこの子猫は、朱鷺丸殿が「アタシの眷族なの」と連れてこられた。それ以来、度々遊びにきてもらっている。
「あっ、つい乱入してしまいました。新蔵人様、申し訳ありません」
「いえいえ、賀茂殿も良ければご一緒に召し上がってください。猫ちゃんたちに振る舞うために作らせた物ですが、もともと酪は人の嗜好品ですので」
「とんでもないです。俺のような位階も持たぬ陰陽生が、参議様のお邸でしれっと軽食をいただくわけにはいきません。お気遣いなくっ」
「まもり、えんりょするな。おまえも『にゅうのかゆ』をくって、あじをおぼえてかえれ」
「だから! なんで、そんなに偉そうなんだ。うずら丸は! お前が遠慮しろ!」
そして、うずら丸殿と楽しい会話を繰り広げている陰陽師見習いの少年、賀茂真守殿は、うずら丸殿の付き添い。
詳しい事情はお聞かせいただけないのだが、うずら丸殿は賀茂殿のお父上である陰陽博士、賀茂護生様のお預かりになっている猫、だそうで。うずら丸殿の外出時には、必ず賀茂殿が付き添う決まりになっているとのことだ。
人語を操る希少な猫なのだから、だろうか。陰陽寮の皆様は、そんなお仕事もされるのだなぁ。陰陽師って大変な職だ。
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