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弐
平安時代のスイーツと肉球打撃
しおりを挟む「――あ、旨い。新蔵人様、旨いです! 初めて食べましたが、酪ってこんなに旨いんですねぇ」
「みちよりの『にゅうのかゆ』は、うまいだろう。まもり、ちゃんとあじわって、べんきょうしろ」
「だから、なぜお前が胸を張ってるんだ。しかし新蔵人様、これ、本当に旨いです。ありがとうございます」
「いえいえ、お口に合って良かったです」
結局、うずら丸殿、朱鷺丸殿、それにあわび様(『様』づけで呼べと言われたので、それ以降、徹底)の三匹から揃って勧められた賀茂殿は、酪を召し上がられた。
但馬牛の乳から作った酪は本当に美味だから、お客様に召し上がってもらえて僕も嬉しい。
「ときまるさま、もうぜんぶくったのか? じゃあ、うずらまるの『にゅうのかゆ』あげる」
「あら、いいわよぅ。それは、うずら丸ちゃんがお食べなさい。アタシは、もう充分よ」
「うずらまるも、そんなにはくえない。だって、おんなのこだから」
「ぶふっ! おまっ……『おんなのこ』って! 木桶を持ち上げて酪をざばざばと口に流し込むっていう豪快な食い方しておいて、『おんなのこ』って、ふざけてん……ごふっ!」
あ、またこの展開だ。
「ちょーっと陰陽小僧? うちの眷族をけなすなんて、いい度胸してるじゃない。覚悟はいいかしらぁ?」
「おい、まも。うずら丸は、れっきとした雌猫だぞ。どこからどう見ても可愛いだろうが。口を慎め。謝れ。反省しろ!」
「うっ! ごふぅっ!」
眷族への冒涜を許さない頭領と、雌猫にだけは優しい孤高の親分によって、失言の制裁(肉球打撃)を受ける陰陽生の図。
普段、あまり意見が合わないあわび様と朱鷺丸殿だが、この時ばかりは連帯感、一体感が申し分ない。
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