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参
陰陽生は大変
しおりを挟む「……痛っ!」
「あ、すみません。しみましたか?」
顔をしかめ、手を震わせた賀茂殿に即座に謝る。
あわび様に噛みつかれた手に薬を塗っていたのだが、傷口にしみたようだ。それもそのはず、くっきりと歯形がついている。
「いえ、大丈夫です。それより、新蔵人様自ら手当てしていただき、俺こそ申し訳ないです。すみませんっ」
「手当てというほどのことは……薬を塗る程度ですし。それにしても賀茂殿、今日も盛大にやられましたね。お気の毒に」
仕上げに、手のひらに布を巻いて差し上げながら言うと、僕の慰めの言葉に「全くですよー」と苦笑が返ってくる。
「俺、うずら丸とは軽口を叩き合う気安い仲なのに。あいつらときたら、毎回、その軽口を本気にして怒ってくるんです。
まぁ、それだけ、うずら丸があの二匹に大事にされてるってことなんですが。だから、別にいいんですけどねぇ……痛いけど」
気の強さが前面に押し出された、きつめの目元。それをふにゃっと緩めながら、『全く、あいつらときたら』と苦笑してる姿に、心なしか羨望の気持ちが湧き上がる。
お父上の命令で預かっているだけじゃない、賀茂殿のうずら丸殿への愛情が、そこに垣間見えたから。
いいなぁ。なんだか羨ましいなぁ。
「あー、いててててて……しかし、毎回、手加減なしかぁ……あいつらめっ」
あ、でも、羨ましいけど、賀茂殿には僕はなりたくないな。
穏やかに笑いつつ、ぼやき続ける賀茂殿の頬には、朱鷺丸殿の飛び蹴りが炸裂した時の痕が綺麗に残っている。
肉球の形の、赤い痕が。
あわび様の歯形といい、ここまでの痕がつくような制裁って……。
喋る猫ちゃんたち、まことに恐るべし……ぶるぶるぶるる……。
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