妖(あや)し瞳の、艶姿

冴月希衣@商業BL販売中

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番外編(参)

甘雨を仰ぐ【三】

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「説明するわね。ご都合妖術とは、ご都合的な展開をもたらすために用いられる手段の一つよ。ちょうどそこに居合わせた人物の身体がなぜか入れ替わったり、もふもふ化したり、性別が逆転したり。有り得ない現象を起こして美味しい展開を第三者に披露する時に多用される、まさにご都合重視な術でーす! 昨日、ちょいと千二百年ほど時を超えてみたら、その時代で似たような術が流行っててね。灰炎ちゃんが修得したいって言うから、さくっと二人にかけちゃいましたー」

「かけちゃいました、だと? 承諾も得ずに勝手に?」

「あら、篤子ちゃんのためだから、どうせ断らなかったでしょ? そんなことより、術の内容について説明させてほしいわ」

 そうか。ご都合妖術とは何かは聞いたが、かけられた術がどんなものかをまだ聞いていない。

「はい、灰炎ちゃん。発表、どうぞーっ」

「ててて、てっててー。おしりぺんぺんしないと、でられないへや、をつくったぞー。さぁ、ふたりでなかよく、おしりをぺんぺん、してくれー」

「……は?」

 お尻をぺんぺん、とは?

 二人で仲良く尻をぺんぺんしないと出られない部屋を、作った、だと? 何の目的で?

「おい、白焔。この術に何の意味がある。おそらくだが、妖術の上達には関係が無い気がしてならない」

「あーら、大ありよ。光成ちゃんと建が設定のお題を達成するまでこの異空間を維持して、尚且つ、達成時には二人を安全に元の場所に戻しつつ、異空間の質量を調節する。これが今日の修行なんだもの」

「要するに、高度な妖術ということか?」

 とても、そうは思えないが。

「そう、その通り! ささっ、てきぱき始めてくださいな。光成ちゃんがうだうだ言ってる間に、建はすっかりやる気になってるわよ」

「えっ?」

 琥珀色の瞳をきらりと光らせた妖猫から視線を外して振り返る。

「ほら、灰炎ちゃんが用意した笹の葉の鞭で、ずっと素振りしてる。やる気満々ね」

「建殿……」

 勢いよく振り返った先で繰り広げられている光景に、心底、脱力した。

 そういえば、灰炎の一回目の「ててて、てっててー」から、建殿の声を聞いていない。

 あなた、あの時から既にやる気に満ちていたのですか。私ひとり、不平を言って恥ずかしい。これは篤子のためなのに。

「わかった。ただちに取り掛かる。ところで、その『お尻ぺんぺん』とやらは一度で良いのか?」

「そのへんは灰炎ちゃんにお任せにしたのよねー。解術の条件は、灰炎ちゃんにとっての〝いい感じのお尻ぺんぺん〟よ」

「わ、わかった」

 いい感じのお尻ぺんぺんの程度が全くわからないが、もういい。とにかく、ぺんぺんすれば良いのだろう。

「建殿。お持ちになられているその鞭をお貸しください。お尻ぺんぺん、さっさと終わらせてしまいますよ」

「何を言っているのだ、光成。この笹の葉の鞭を使うのは私だぞ。お前の尻をぺんぺんするのが解術の条件だと、うずら丸が言っている」

「え?」

 差し出した右手の形をそのままに、身体が固まった。『え?』の形で口を開けたまま。


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