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序
追慕 #2
しおりを挟む「あーあ、会いてぇなぁ」
「ん? 何か言ったか? 宮城」
「あ? なんも言ってねぇよ。それよりさ。だりぃから、もう帰りてぇんだけど」
「駄目に決まってるだろ? 今日はこの後、菫華との合同研究会があるじゃないか」
駄目もとで提案してみたが、飯田に一蹴された。
「だから、だりぃっつってんじゃねぇか」
その、『菫華との合同研究会』が、鬱陶しいんだよ。
「そんなこと言うなよ。他のメンバーもこの日を楽しみにしてるんだぞ? そのために、わざとクリスマス前に日程をねじ込んだんだ」
あぁ、だからか。つか、それ聞いて余計に気が重くなったわ。
「他のヤツらが楽しみでも、俺は違う。お前はいいよな。菫華の彼女とずっと続いてんだから。研究会も飲み会もデートを兼ねてるみたいなもんだろ」
「あー、うん……まぁな」
「ふん。デレやがって」
デレデレと言葉を濁す飯田を横目で流し見てから、コーヒーに口をつける。同じ研究室のコイツ――――飯田が日程を組んだ他校との研究会が今日の午後だとついさっき聞かされたせいで、俺の機嫌はすこぶる悪い。
合同研究会の相手、菫華学園大学は、エスカレーター式のお嬢様学校として、都内では名の知れた女子大。
そこの古美術愛好会と、うちの考古学研究室はもう何年も前から、三ヶ月に一度くらいのペースで合同研究会を開催している。
が、研究会とは名ばかり。早々に飲み会へとなだれ込むのが、いつもの流れだ。
ぶっちゃけ、学術研究を謳い文句にしたコンパである。
「宮城。研究会のことを伝えそびれてたのは謝るからさ、機嫌直してくれよ。でも、お前狙いの女子、今日もきっと来るぞ? 宮城も楽しめよ」
「そんな気分になれねぇっつーの。アイツらを適当にかわすのが、もう面倒なんだよ」
「宮城はモテるからなぁ。贅沢なんだよ。けど今の発言、他のヤツらの前では絶対に口にするなよ?」
「言わねーよ」
お前の前でしか。
俺のふてくされた物言いにも気分を害することなく、穏やかに宥めてくる。こんなことをしてくれるのは、飯田だけだ。
基本、人と馴れ合うことが嫌いな俺だが、なぜかコイツとだけは馬が合う。
自分勝手な俺が反感を買わないよう、さり気なくフォローしたり、周囲に気を回してもくれてる。
気儘に行動しがちな俺のストッパー役。口には出さないが、いつもありがたいと思ってる。
「それにさー、考えてもみろよ。俺たちみたいに発掘現場と研究室の往復だけの生活じゃ、飲み会のセッティングでもしないと、女子との出会いなんか滅多にないんだからさ」
「あぁ、まぁな」
だろうな。それは、わかる。
そう考えると、初琉と出逢えたことは、俺にとっては奇跡だ。
いや、奇跡以上の価値がある。
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