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決意 #5
しおりを挟む男の指が頬にかかった初琉の髪を耳にかけて、その顔を覗き込む。
「じゃ、後で」
囁き、頭を撫でてから離れた男に微笑みで了承を伝える、俺の好きな女。
自分に触れる男の手を受け入れているその様子で、この触れ合いが頻繁に交わされているものだと、嫌でも気づかされてしまう。
発進した車は、俺の来た方向へと走り去っていった。それを無言で見送った後、俺たちはその場に縫い止められたように動かない。
あー、声かけねぇと、だよな? だが、何を?
逡巡する俺と、無言で俯く初琉。ふたりの間を夕風が吹き抜けていく。
初琉が身につけているピンクベージュのワンピース。花模様のレースの裾が膝丈で揺れているのが、目に入った。
なぁ? お前、なんで昼間と違う格好してんだ?
「服、着替えたのか?」
何、聞いてんだ。俺。
「お前が言ってた『友達の家の人』が、今のヤツか? そんなヤツが、夜にまたここに来んのかよ」
やめろ。やめろ、俺。
「あ……えと……ごめん」
俯いたまま、小さな声が零れる。
そして、目の前の相手は駆け出す。こちらを一度も見ずに門の中に入ってしまった初琉を、俺は追いかけなかった。追いかけられなかった。
胸中で吹き荒れる不信が、足を止めさせたんだ。
初琉。なぜ、俺に嘘をついた? 約束をしてた友達って、アイツのことだったのか?
そんな、いかにもデートです、みたいなワンピースに着替えて……。
なら、俺に弁当なんか作らなくても良かったんじゃないか?
「旨い、旨い」って、はしゃいでた俺が、馬鹿みたいじゃねぇか。
つか、俺と会う時にも、それくらいオシャレしとけよ。なんで、俺の時はデニムだったんだよ。
んな薄っぺらい生地で、身体のラインがくっきり見て取れるような服。俺と会う時にも着てみろよ。俺だったら、撫で回して褒めちぎってるぞ!
「うわ。俺……キモ……」
ここまでグルグルと考えて、自分がひがんでることに気づく。
あの男と自分につけられた“差”に、とんでもなくショックを受けてるんだ。俺。
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