からくれないに、色づいて【Eternity -エタニティ- シリーズ】

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繋ぐ絆、燃え立つ恋歌 #6

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「……それ、いつ?」

 お、それ、聞いてくるか?

「んー? いつでしょう?」

 教えてやってもいいが、それを聞いちまったら、お前、もう逃げらんねぇぞ?

 まぁ、どのみち逃がさないけど。いや、逃がさないというより――。

「――捕まった」

「は?」

「奈良に来た初日、お前と芋掘りしたろ? あの時に、捕まったって思った。同時に、もう離れられないとも気づいた。ぶっちゃけ、ひと目惚れだ。だから、その日のうちに教授に俺の気持ちを伝えた。承諾はもらえなかったけどな」

 今、冷静に思い返してみたら、俺、相当やべぇヤツだったわ。

「昨夜、教授に呼ばれて。そこでお前の疾患のことを聞かされたんだ。俺の気持ちが変わらないことを確認してもらって、ようやく許してもらえたよ」

 目を見開いて俺の話を聞いていた初琉の頬が、どんどん赤く染まっていく。

 可愛い。

 自然と浮かぶ慈しみの笑みをそのままに、その身体を引き寄せた。

 もう何の拒絶もなく、俺の胸に従順に身を預けてくれることが嬉しい。

 初琉の抱えている病名は、再生不良性貧血。骨髄にある『造血幹細胞』が減少することにより、白血球、赤血球、血小板の全てが減少していく疾患だ。秋祭りで倒れたのは、赤血球と血小板が減少したのが原因だったらしい。

 教授の話によれば、現状では無理さえしなければ日常生活には支障はないということだった。が、今後、重症度のステージが上がる可能性はゼロじゃない。

 そんな不安を抱えている自分に対して、人並みの幸せを得ることを諦めているのだと。初琉がそう思っている節があるのだと、沈痛な表情で話しておられた。だから君に託す、とも言われた。

 俺には知りようもないことだったが。俺が榊家にお世話になり始めた頃から、初琉の様子が目に見えて変わったのだと教えてくださった。

 声を出して笑う回数が増え、特に食事を作る時が最も生き生きと楽しそうになったのだと。

 『零央くんの好物が、鮭とタラコで良かったよ。もしステーキだったら、我々年寄りはとっくに胃を壊してる』とも、つけ加えられた。あー、すんません。

 俺の好物、シャケとタラコがアレンジされた料理が食卓によく並ぶなーとは思ってたんですよ。榊家の皆さん、特に思い入れもないのにシャケとタラコ攻めにして、マジ、すんませんでした……。

「零央? 私……私ね? 今まで自分のこと可哀想とか、卑下したりしたことはなかったけど」

 しばらく、おとなしく腕の中におさまっていた初琉だったが、俺の胸に頬をつけたまま、小さな声で話し始めた。

「零央に出逢ってからは、健康なら良かったのにって何回も思った。そんなこと考えても無駄なのに、何回も」

「馬鹿だな。それは、お前の全部を丸ごと好きな俺への挑戦か?」

 健康だとか病気だとか、お前が『初琉』であること以外に大切なことが、他にあるのか?

「零央……」

「泣くな。口塞ぐぞ」

 頼りなげに見上げてきた瞳を安心させるように微笑み、触れるだけの口づけを何度も降らせた。

 初琉の表情が甘やかなものに変わっていき、互いに微笑みながら唇を重ね続ける。

「零央、好き」

 つと、身を引き、真っ直ぐ目を合わせてから告げられた。

 初めての、初琉からの告白。

 あぁ、幸せだ。

 小鳥の鳴き声を思わせる、軽やかな声に乗せられた言葉。強情で頑なだった初琉が自ら告げてくれた愛の言葉に、身の内からじわじわと歓喜が込み上げる。これが、心が震えるって感覚だろうか。

 だから、俺も告げよう。お前に。

「ふっ、やっと言ったな。初琉――――愛してる」

 誰にも告げたことのない、愛の言葉を。



 誰にも、心動かされなかった。愛なんてものは、知らなくても生きてこられたんだ。

 望まなくても勝手に与えられる愛情や誘惑が鬱陶しく、なのに、それを気まぐれに甘受もしていた。

 そんな自分は人並みの幸せからは一番遠いところにいると自覚していたし、また、それでいいとも思っていた。

 初琉、ありがとう。出逢えたことで感情が豊かになったのは、俺のほうだ。

 惚れた女を護りたい、幸せにしたいと、そう強く思える俺にしてくれて、ありがとう。

 お前だけだ。お前だけを、俺は愛していくよ――。


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