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終
からくれないに、色づいて #7
しおりを挟む伸び上がって上から見下ろすと、案の定、目の縁には涙が溜まっていた。
「ばぁか。泣くんじゃねぇよ。俺が綺麗だっつってんのに、疑うのか?」
「でも……だってっ」
「『だって』じゃねぇ。そもそも、お前を泣かせるために見たいっつったわけじゃねぇよ――――なぁ、初琉?」
告げる声にも俺の想いがこもればいいと願いつつ、指先を傷痕に滑らせる。
「痛かっただろ? これ。よく頑張ったな。それに、病気にも負けずに、今まで本当によく頑張ってきたな。えらいな、お前」
皮肉にも、この怪我をしたことで発病してることが判明したという。
初琉の肌に残る痛々しい傷痕は、病気の早期発見という面では、初琉のためになっていた。
だが、思春期の女の子にとって、身体に残る傷痕の存在がどれほどの心理的負担になっていたのかは、俺でも容易く想像がつく。
出逢ってすぐの頃に見た、硝子玉のように無機質な瞳が思い出される。全てを諦めたような、虚無感に満ちた寂しげな表情。あんな表情をしながらも、病気と戦ってきたんだ。コイツは。
「これからは、俺が一緒だ。お前ひとりで頑張らなくていいんだぞ? お前には、俺がいる。だから、気楽にいこうぜ」
「……っ、何が『気楽に』よ。お医者さんでもないのに、いい加減なこと言うて……ほんま、零央はアホなんやから……ふふっ」
最後、少しふざけ気味にチュッチュッと二回、音を立てて軽くキスしてやると、泣き笑いの声があがった。
そうだ、笑え。その涙は俺が吸い取ってやるから。お前は、そうやって、ただ笑っとけばいい。
「ふっ、やっと笑ったな。それでいい」
「零央が笑わせたくせに。あっ……あの、でもね? やっぱりその……これ、見られるのは恥ずかしいから。か、隠したい……服、着たいんやけど」
お、我に返ったか。それとも、話の最中も俺が指の腹で傷痕をなぞり続けてるのに、ようやく気づいたか、のどっちかだな。
でも残念。それは、聞けない。
ずり下げたワンピースの襟ぐりに指をかけて引き上げようとする、その手を掴んで止めた。
「隠す必要ねぇよ。むしろ、もっと見せて? これ、俺には綺麗な飾りにしか見えない」
「え? 何、言うて……飾りとか、そんな……あっ!」
初琉の身体を斜めに浮かせて忍び込ませた指が、背中のホックに届いた。
「ほんとだって。その証拠に、ヤバいくらい、その気になってんだよ、俺」
マジで、ヤバい。肌の感触が、手触りが良すぎて。
傷痕に触れても、初琉が気にするような感情は微塵も湧かない。むしろ、もっと触れたい。思うまま、口づけたい。
感情のままに、肌を隠す邪魔な布地を取り去ってやった。
俺の手で露わにした胸を下から掬い上げ、傷痕の全体像が柔らかく形を変えていくのを見おろす。やっぱり、嫌悪の情など湧かない。愛おしさしかない。
「なぁ? やっぱり、綺麗だとしか言えねぇよ。マジで、そう思ってんだからさ」
俺の手の動きに、顔を真っ赤にさせて声を上げ、首を振ってる可愛いヤツに笑って告げた。
「他には、可愛いとしか言えない。お前、マジでめちゃめちゃ可愛い。俺の語彙力、消失だ」
目を見開いて俺を見返した相手に微笑みながら、手の中にすっぽりとおさまる可愛らしい膨らみをゆっくりと揉み上げる。
「傷痕、こうすると痛いか?」
「やっ……い、痛くないけどっ……あ、でもっ」
「ん? 『でも』の後は何? 痛くないなら、もう少し進むぞ」
傷痕に丹念に舌を這わせ、痛がらないことを初琉の身体で確認する。痛みが伴うなら、すぐにやめるつもりで。
「あっ……あ、零央っ……んっ」
が、なぞる舌を移動させる度に良い反応が返ってくる。
やべぇ。この声、堪んない。
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