キミとふたり、ときはの恋。【いざよう月に、ただ想うこと】

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キミとふたり、ときはの恋。【第四話】

いざよう月に、ただ想うこと【4−3】

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「あ……都築さん、と、奏人……が?」
 しまった。言葉が詰まって……。
 ううん。それよりも、顔がひどく強張っちゃったことのほうが問題だわ。
 どうしよう。ついさっきまで笑顔で話してたのに。これじゃあ、私、思いっきり不自然……。
「あぁ、驚かせた? 俺も全然そんな気はなかったんだけどね。実行委員についての話し合いが始まるなり、瀧川が推薦してきたんだよ。俺と都築を」
「瀧川さんが……」
 瀧川《たきがわ》ひかるさん。知ってる。『バレー部のひかるちゃん』だ。
 ハスキーな声で大人っぽい見た目なのにいつも明るく笑ってる、すらっと背の高いショートカットの女の子。奏人と同じ一組で、――都築さんの親友。

 その瀧川さんが、奏人と都築さんを実行委員に推薦したの? どうして……。
「推薦されて断る理由もないからね。だから、引き受けた」
 昇降口の手前。数人の生徒が行き交うそこで、靴箱に手をかけた奏人から告げられた言葉。それは、靴を取り出して履き替える動作と全く同じように。ごく当たり前の、何でもないことのように、さらっと放たれた。
「あ……そう、なの、ね」
 うん。そうなんだよね。奏人にとっては。
 都築さんじゃなくても、他の誰かと連名で推薦されてたとしても、奏人ならきっと引き受けてた。
 学校行事の委員に推薦されて、別に断る理由がない。〝ただ、それだけのこと〟なんだよね。

「そう……あ、じゃあ忙しくなるね。これから」
 あれ。私、なんで笑ってるのかな。
「奏人も都築さんもリーダーシップあるから、学園祭の準備もさくさく進んじゃうんじゃない?」
 急いで靴を履き替えて、いかにも元気な素振りでぴょんっとジャンプなんかしちゃったりしてるのは、なんでかな。
 それで、隣に並んだ奏人を見上げて、にこって笑ってるのは、どうしてかな。
「でも、うちのクラスも負けられないわぁ。あ、なら奏人と武田くん、ライバル関係になるのね。わあぁ。武田くん、余計に張り切っちゃいそう」
「それを言わないで。アイツと実行委員会で顔を合わせるのが憂鬱になるから」
「ふふっ。後で、萌々ちゃんに連絡しとこうっと。そしたら、すぐに武田くんに伝わるねっ」
「ほんとやめて、それ」
「あははっ」
 なんで、声を上げて楽しく笑ってるのかな。
 ううん、笑ってていいのよ。
 だって、学校行事なんだから。奏人にとっても、ごく当たり前のことなんだから。
 今、私の目の前にいる人は、都築さんじゃなく、武田くんのことで眉を下げて、「あー、憂鬱だ」って笑ってるんだから。
 あらやだ、私ったら。めちゃめちゃ黒い感想で、自分を慰めてる……。


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