207 / 309
異形侵攻
207. vs マール
しおりを挟む
仕切り直しとなったけど、距離がとれたのは悪くない。魔法を使う余裕ができるからね。魔法による遠距離攻撃はマールにはない僕の強みだ。強力な魔法を詠唱している余裕はないけど、初級魔法ならそれほど隙も大きくはない。
「〈ファイアボール〉」
僕の詠唱に応えて虚空に炎球が出現する。それも三つも。通常とは違うアレンジバージョンだ。炎球は時間差をつけて、マールへと迫る。
一度目、二度目は避けられるかもしれないけど、三度目はどうかな? 避けられなければ盾で防ぐことになるはずだ。そうなれば、視界が狭まる。その隙に存在感を消すシャドウハイディングを使えば、マールは僕を見失うはず。
目論見は途中までうまくいっていた。二度目の炎球を躱した時点で、彼女の体勢は崩れている。三度目の炎球は転がって逃げるか、盾で防ぐしかない。そう思ったんだけど――……
「えいっ!」
なんと、マールの振るうメイスが炎球をかき消したんだ。彼女のかけ声とともに、一瞬メイスが光ったから、何かのスキルかもしれない。
予想外の出来事に攻撃の手が止まってしまった。その間に、マールも体勢を立て直す。仕切り直しだ。
「へへへ。トルト君の戦い方はゼフィルから聞いてるから。決して視線を外すなってね!」
「そうなんだ。だからといって、メイスでかき消すなんて……ビックリしたよ」
「いや、ビックリしたのはこっちもだけどね。一度のファイアボールで三つ飛んでくるなんてズルだよ」
喋りながらも、お互いに油断なく相手の動きを観察している。近くでゼフィルとローウェルがやり合っている音が聞こえるけど、そちらを見ている余裕はないね。一瞬でも目を離すわけにはいかない。
「じゃあ、次はこっちからかな! ほぉらっ!」
マールが地面に擦りつけるようにメイスを下から振り上げる。砂を巻き上げて目つぶしでもするつもりかと思ったけど……そんな生優しい攻撃じゃなかった!
地面からサメのひれのような衝撃波が発生して僕へと迫ってくる。しかも、結構速い!
マールに遠距離攻撃はないと思っていたから、完全に虚を突かれた。転がるように、どうにか避ける。でも、この機を逃がす気はないとばかりに、追加の衝撃波が襲いかかってくるから、なかなか体勢を立て直す余裕がない。
だけど、ある程度逃げ回ったところで、衝撃波が止んだ。気がつけばマールとはかなり距離が離れている。たぶんだけど、この衝撃波は攻撃射程がそれほどでもないんだ。もちろん、ブラフの可能性もあるけどね。
何にしろ、攻撃が止まったのはありがたい。まずはストーンウォールでマールの視界から隠れる。次に使うのは、パワーとスピードの魔法。まあ、効果は気休め程度だけど、せっかくの身体強化魔法だ。使っておいて損はない。そして、最後に使ったのがシャドウハイディング。僕が石壁の裏に隠れていることはバレバレだから、効果は薄いかもしれないけど、まあ念のためだ。
「あっ!」
石壁を飛び出したところで、マールが声を上げた。気付かれたみたい。やっぱり、じっくり観察されていると効果は薄いか。でも、問題ない、本命は別だ。
「〈シャドウリープ〉」
マールの影を視認した状態で、呪文を唱える。これで、背後からの奇襲を――……
「甘いよ!」
転移した先で僕を迎えたのはマールによるメイスの一撃。咄嗟に避けたけど、今のはかなり危なかった。
「その魔法のことは、教えてもらったからね!」
メイスを振り回しながら、マールが得意げな笑みを浮かべる。
実は、クロムビートル討伐のときにシャドウリープのことは話しちゃってたんだよね。あのときは、僕らもゼフィルたちも闘技大会に出場すると思っていなかったから。ちょっと迂闊だったね。
影を意識する素振りを見せなかったから、忘れていたのかと思ったけど、しっかりと警戒されていたみたい。さすがだね。
まあ、それならそれでやりようはあるんだけど。
「〈エアジェット〉」
「きゃっ!」
メイスの攻撃を避けつつ、どうにか魔法の発動に成功する。激しく動きながらの魔法行使はとたんに難度が上がるんだけど、さっきの身体強化のおかげで少しだけ余裕ができた。初級魔法くらいならどうにかってところだけどね。
小柄なマールは風の影響を受けやすいみたいで、勢いに押されて少しずつ後退していく。必死にメイスを振り回しているのは、たぶん魔法をかき消そうとしているんだろう。残念ながら効果は無いみたいだね。ファイアボールと違って、エアジェットは僕の手元で発動し続けているから。
エアジェットによる強風に殺傷能力はないから、このままでマールを無力化することはできない。彼女をストーンウォールで生成した石壁のあたりまで押し返したところで魔法を解除した。
うん、狙い通りの位置関係だ!
「〈シャドウリープ〉」
あえて大声で宣言して、影に跳ぶ。視界が切り替わったとき、僕はマールの背後をとっていた。狙い通り、彼女は僕を見失っているみたい。
別に難しいことはしていない。僕はシャドウリープで石壁の影に跳んだんだ。ちょうど、マールの影と逆側に出ていた、ね。マールは自分の影に僕が現れると思い込んで、僕に背中を見せる結果となったわけだ。
彼女は慌てて振り返ろうとしているけど……もう遅い!
ライトニングタッチを発動し、マールの背中に触れる。僕の右手がバチリと恐ろしい音を立てた。マールが一瞬ビクリと体を震わせ……崩れ落ちる。うまく、気絶させることができたみたい。
「勝者、トルト&ローウェル!」
その瞬間に決着を告げる声が響いた。見てる余裕はなかったけど、ローウェルたちの方も決着がついたみたい。
ふぅ……疲れた。戦っている時間はそれほどでもないけど、対人戦は神経を使うなぁ。
「〈ファイアボール〉」
僕の詠唱に応えて虚空に炎球が出現する。それも三つも。通常とは違うアレンジバージョンだ。炎球は時間差をつけて、マールへと迫る。
一度目、二度目は避けられるかもしれないけど、三度目はどうかな? 避けられなければ盾で防ぐことになるはずだ。そうなれば、視界が狭まる。その隙に存在感を消すシャドウハイディングを使えば、マールは僕を見失うはず。
目論見は途中までうまくいっていた。二度目の炎球を躱した時点で、彼女の体勢は崩れている。三度目の炎球は転がって逃げるか、盾で防ぐしかない。そう思ったんだけど――……
「えいっ!」
なんと、マールの振るうメイスが炎球をかき消したんだ。彼女のかけ声とともに、一瞬メイスが光ったから、何かのスキルかもしれない。
予想外の出来事に攻撃の手が止まってしまった。その間に、マールも体勢を立て直す。仕切り直しだ。
「へへへ。トルト君の戦い方はゼフィルから聞いてるから。決して視線を外すなってね!」
「そうなんだ。だからといって、メイスでかき消すなんて……ビックリしたよ」
「いや、ビックリしたのはこっちもだけどね。一度のファイアボールで三つ飛んでくるなんてズルだよ」
喋りながらも、お互いに油断なく相手の動きを観察している。近くでゼフィルとローウェルがやり合っている音が聞こえるけど、そちらを見ている余裕はないね。一瞬でも目を離すわけにはいかない。
「じゃあ、次はこっちからかな! ほぉらっ!」
マールが地面に擦りつけるようにメイスを下から振り上げる。砂を巻き上げて目つぶしでもするつもりかと思ったけど……そんな生優しい攻撃じゃなかった!
地面からサメのひれのような衝撃波が発生して僕へと迫ってくる。しかも、結構速い!
マールに遠距離攻撃はないと思っていたから、完全に虚を突かれた。転がるように、どうにか避ける。でも、この機を逃がす気はないとばかりに、追加の衝撃波が襲いかかってくるから、なかなか体勢を立て直す余裕がない。
だけど、ある程度逃げ回ったところで、衝撃波が止んだ。気がつけばマールとはかなり距離が離れている。たぶんだけど、この衝撃波は攻撃射程がそれほどでもないんだ。もちろん、ブラフの可能性もあるけどね。
何にしろ、攻撃が止まったのはありがたい。まずはストーンウォールでマールの視界から隠れる。次に使うのは、パワーとスピードの魔法。まあ、効果は気休め程度だけど、せっかくの身体強化魔法だ。使っておいて損はない。そして、最後に使ったのがシャドウハイディング。僕が石壁の裏に隠れていることはバレバレだから、効果は薄いかもしれないけど、まあ念のためだ。
「あっ!」
石壁を飛び出したところで、マールが声を上げた。気付かれたみたい。やっぱり、じっくり観察されていると効果は薄いか。でも、問題ない、本命は別だ。
「〈シャドウリープ〉」
マールの影を視認した状態で、呪文を唱える。これで、背後からの奇襲を――……
「甘いよ!」
転移した先で僕を迎えたのはマールによるメイスの一撃。咄嗟に避けたけど、今のはかなり危なかった。
「その魔法のことは、教えてもらったからね!」
メイスを振り回しながら、マールが得意げな笑みを浮かべる。
実は、クロムビートル討伐のときにシャドウリープのことは話しちゃってたんだよね。あのときは、僕らもゼフィルたちも闘技大会に出場すると思っていなかったから。ちょっと迂闊だったね。
影を意識する素振りを見せなかったから、忘れていたのかと思ったけど、しっかりと警戒されていたみたい。さすがだね。
まあ、それならそれでやりようはあるんだけど。
「〈エアジェット〉」
「きゃっ!」
メイスの攻撃を避けつつ、どうにか魔法の発動に成功する。激しく動きながらの魔法行使はとたんに難度が上がるんだけど、さっきの身体強化のおかげで少しだけ余裕ができた。初級魔法くらいならどうにかってところだけどね。
小柄なマールは風の影響を受けやすいみたいで、勢いに押されて少しずつ後退していく。必死にメイスを振り回しているのは、たぶん魔法をかき消そうとしているんだろう。残念ながら効果は無いみたいだね。ファイアボールと違って、エアジェットは僕の手元で発動し続けているから。
エアジェットによる強風に殺傷能力はないから、このままでマールを無力化することはできない。彼女をストーンウォールで生成した石壁のあたりまで押し返したところで魔法を解除した。
うん、狙い通りの位置関係だ!
「〈シャドウリープ〉」
あえて大声で宣言して、影に跳ぶ。視界が切り替わったとき、僕はマールの背後をとっていた。狙い通り、彼女は僕を見失っているみたい。
別に難しいことはしていない。僕はシャドウリープで石壁の影に跳んだんだ。ちょうど、マールの影と逆側に出ていた、ね。マールは自分の影に僕が現れると思い込んで、僕に背中を見せる結果となったわけだ。
彼女は慌てて振り返ろうとしているけど……もう遅い!
ライトニングタッチを発動し、マールの背中に触れる。僕の右手がバチリと恐ろしい音を立てた。マールが一瞬ビクリと体を震わせ……崩れ落ちる。うまく、気絶させることができたみたい。
「勝者、トルト&ローウェル!」
その瞬間に決着を告げる声が響いた。見てる余裕はなかったけど、ローウェルたちの方も決着がついたみたい。
ふぅ……疲れた。戦っている時間はそれほどでもないけど、対人戦は神経を使うなぁ。
74
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる