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でこぼこ同居生活。
#13
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あれから数日が経った。
変わったことが何個かある。
まず一つ目。入社式を終えて、研修期間も終えた。
そして、二つ目。これにはびっくりしたんだけど、いつのまにかレオンが専業主夫と化し始めた。
そう。あの超絶わがままだった男が!
ことの発端は、レオンのキレイ好きから始まった。
「お前さ、食べたあとの食器とかすぐ洗わねえの?汚くね?」
めんどくさいから後でいいや、と食器をキッチンのシンクにためたままテレビを見ていた私に、レオンが話しかけた。
「あんたがやってくれてもいいんだよ」
まあ、やらないだろうけどね。
そう思いながらも適当に返事を返しておいたのだが、それに対してまさかの返事が返された。
「じゃあ教えろ」
え?なんて言った?
勢いよく振り返ると、この間買った安物の白いTシャツとジーパンを着こなしたレオン。
その右手には、そんな彼には不釣り合いなピンクの食器用スポンジが握りしめられている。
「.....まあ、お前は働いてるのに、俺だけただで住まわせてもらうのも気がひけるからな」
というのが始まりだった。
完璧主義の性格ゆえだろうか。
そこから数週間で、彼は掃除、洗濯、食器洗いを習得した。
ものすごい成長度合いだ。
とてもあの、出会ったばかりの時に偉そうに踏ん反り返っていた一国の王子とは思えない。
「おい、起きろ。お前今日からいよいよ出勤だろ」
朝、レオンに揺すられて目を覚ました。
ヤバイ。こんな時間。
昨日同期と研修お疲れ会で飲んで帰ってきて、そのまま眠って.....
「お前寝すぎだろ。とりあえずシャワー浴びろよ」
レオンにぶっきらぼうにバスタオルを手渡された。
そのバスタオルも、なぜか彼が洗濯し始めてからフワフワに仕上がるようになっていた。
「ありがとう!」
慌ててシャワーして出てくると、
あれ?私、持ってきてたっけ?
脱衣所にアイロンのかかったワイシャツが置いてある。
「....しかもこれ、アイロンかけてたっけ?」
そう思いつつ袖を通し、リビングに出るとアイロン台を片付けているレオンが居た。
「それ、やり方あってるか分かんねえけどアイロンかけてやっといたぞ」
え、気を利かせてアイロンをかけてくれたの?
.....何だこの順応性の高さは。そして、この女子力の高さは何だ。私より余裕で上じゃないのかな。
こいつはさては、付き合ったら尽くすタイプの男だな?
いや、私たちはそういう関係性じゃないからな.....
じゃあ、友達想いの男ってところかな。
最初は結構感じ悪かったくせに、案外良いところあるじゃん!
なんて考え事をしているせいで立ちすくんでいるあおいに、レオンが慌てて声をかける。
「だからお前、急げって!!」
「あ、うん!」
髪を乾かして、簡単にメイクして、あおいは部屋を飛び出した。
くるりと玄関で振り返って、目の前の男に向かってピシッと敬礼した。
「それでは家政婦さん!行ってきます!」
「家政婦じゃねえ!早く行け!」
乱暴に背中を押されて、玄関から締め出された。
あおいの目の前には、青空が広がっていた。
「今日から頑張るぞー!」
青空に向かって大きく片方の拳を突き上げて、駅に向かって勢いよく走り始めた。
心地よい風が、初夏の始まりを告げていた。
変わったことが何個かある。
まず一つ目。入社式を終えて、研修期間も終えた。
そして、二つ目。これにはびっくりしたんだけど、いつのまにかレオンが専業主夫と化し始めた。
そう。あの超絶わがままだった男が!
ことの発端は、レオンのキレイ好きから始まった。
「お前さ、食べたあとの食器とかすぐ洗わねえの?汚くね?」
めんどくさいから後でいいや、と食器をキッチンのシンクにためたままテレビを見ていた私に、レオンが話しかけた。
「あんたがやってくれてもいいんだよ」
まあ、やらないだろうけどね。
そう思いながらも適当に返事を返しておいたのだが、それに対してまさかの返事が返された。
「じゃあ教えろ」
え?なんて言った?
勢いよく振り返ると、この間買った安物の白いTシャツとジーパンを着こなしたレオン。
その右手には、そんな彼には不釣り合いなピンクの食器用スポンジが握りしめられている。
「.....まあ、お前は働いてるのに、俺だけただで住まわせてもらうのも気がひけるからな」
というのが始まりだった。
完璧主義の性格ゆえだろうか。
そこから数週間で、彼は掃除、洗濯、食器洗いを習得した。
ものすごい成長度合いだ。
とてもあの、出会ったばかりの時に偉そうに踏ん反り返っていた一国の王子とは思えない。
「おい、起きろ。お前今日からいよいよ出勤だろ」
朝、レオンに揺すられて目を覚ました。
ヤバイ。こんな時間。
昨日同期と研修お疲れ会で飲んで帰ってきて、そのまま眠って.....
「お前寝すぎだろ。とりあえずシャワー浴びろよ」
レオンにぶっきらぼうにバスタオルを手渡された。
そのバスタオルも、なぜか彼が洗濯し始めてからフワフワに仕上がるようになっていた。
「ありがとう!」
慌ててシャワーして出てくると、
あれ?私、持ってきてたっけ?
脱衣所にアイロンのかかったワイシャツが置いてある。
「....しかもこれ、アイロンかけてたっけ?」
そう思いつつ袖を通し、リビングに出るとアイロン台を片付けているレオンが居た。
「それ、やり方あってるか分かんねえけどアイロンかけてやっといたぞ」
え、気を利かせてアイロンをかけてくれたの?
.....何だこの順応性の高さは。そして、この女子力の高さは何だ。私より余裕で上じゃないのかな。
こいつはさては、付き合ったら尽くすタイプの男だな?
いや、私たちはそういう関係性じゃないからな.....
じゃあ、友達想いの男ってところかな。
最初は結構感じ悪かったくせに、案外良いところあるじゃん!
なんて考え事をしているせいで立ちすくんでいるあおいに、レオンが慌てて声をかける。
「だからお前、急げって!!」
「あ、うん!」
髪を乾かして、簡単にメイクして、あおいは部屋を飛び出した。
くるりと玄関で振り返って、目の前の男に向かってピシッと敬礼した。
「それでは家政婦さん!行ってきます!」
「家政婦じゃねえ!早く行け!」
乱暴に背中を押されて、玄関から締め出された。
あおいの目の前には、青空が広がっていた。
「今日から頑張るぞー!」
青空に向かって大きく片方の拳を突き上げて、駅に向かって勢いよく走り始めた。
心地よい風が、初夏の始まりを告げていた。
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