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でこぼこ同居生活。
#12
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「ごめんなさい....勝手に、勘違いして」
あれから15分後、駅員室に俺たちはいる。
先ほど、俺を痴漢呼ばわりしやがった無礼な女が、目の前で深く頭を下げていた。
「いえ....私が大声で叫んだからです....すみませんでした」
俺の隣であおいも申し訳なさそうに頭を下げる。
はあ、と面倒くさそうに年配の駅員がため息をついた。
「....とりあえず、名前だけお伺いして釈放させていただきます。キミ、名前は」
ペンの先っぽを俺のほうに向けてくる。
この男、なんて無礼な態度なんだ。
俺は、シュヴァイン王国の第2王子であるレオンだぞ!
そう言おうとした俺をあおいが制止した。
「....れ、レオです....山田れお!」
....は?何言ってるんだこいつ。
「はい、山田さんね。2人ともこれからは電車の中で大声で痴話喧嘩しないように。じゃ、ありがとうございました」
それから、2人きりになった俺たちはお互い無言で電車に揺られていた。
「ねえ.....ごめんね」
先に折れたのはあおいだった。
恐らく、俺が不機嫌なのを察したんだろう。
「悪気は無かったの。でも、動揺しちゃって.....つい、いつもの癖で大声で.....。初めての電車だったのに、ごめんね」
違う。確かに痴漢呼ばわりされたのも癪に障るが......一番問題なのはそこではない。
「.....そんなことより、あのとてつもなくダサい名前は何だ」
そう言うと、あおいがびっくりした顔で俺を見返した。
「え?ダサいかな?名案じゃない?レオンだからレオ!そういう男の子いるし!カッコいいと思うんだけどなぁ」
困った顔で笑いながら、あおいは俺を見上げる。
「まあ、あの場にいた人にもう会うことないし!気にしないで大丈夫だと思うよ?」
たしかに、それもそうだな。
「とりあえず、いろいろとごめんね。今日はお詫びにいっぱい欲しい服買っていいからね!ブランド物とかは勘弁してほしいけど....」
ごにょごにょ言っている女を見て、フッと笑った。
「あ、でも一つだけ言っとくね!公共の場で女の人に胸がどうだの言うのは、この国ではセクハラだからね!もう言っちゃダメだよ!」
いつもの態度に戻った俺に安堵したのか、またお得意の威嚇芸を披露しはじめるあおい。
「わかってるって。もう触る機会ねえから安心しろ」
「お前のこと女だなんて思ってねーしって思ってるでしょ」
「お、よく分かってんじゃん」
「私だってあんたのこと男だなんて思ってませんよー!ふんっ」
そこまで言うと、2人して顔を見合わせて笑った。
こいつと俺は、口を開くと言い争うことばっかりだ。
それも、しょうもない内容ばかりで。
でもなんとなく、俺にとっては、この距離感が居心地良くなりはじめていた。
そんなことに気がついた、2人で初めて出かけた日曜日だった。
あれから15分後、駅員室に俺たちはいる。
先ほど、俺を痴漢呼ばわりしやがった無礼な女が、目の前で深く頭を下げていた。
「いえ....私が大声で叫んだからです....すみませんでした」
俺の隣であおいも申し訳なさそうに頭を下げる。
はあ、と面倒くさそうに年配の駅員がため息をついた。
「....とりあえず、名前だけお伺いして釈放させていただきます。キミ、名前は」
ペンの先っぽを俺のほうに向けてくる。
この男、なんて無礼な態度なんだ。
俺は、シュヴァイン王国の第2王子であるレオンだぞ!
そう言おうとした俺をあおいが制止した。
「....れ、レオです....山田れお!」
....は?何言ってるんだこいつ。
「はい、山田さんね。2人ともこれからは電車の中で大声で痴話喧嘩しないように。じゃ、ありがとうございました」
それから、2人きりになった俺たちはお互い無言で電車に揺られていた。
「ねえ.....ごめんね」
先に折れたのはあおいだった。
恐らく、俺が不機嫌なのを察したんだろう。
「悪気は無かったの。でも、動揺しちゃって.....つい、いつもの癖で大声で.....。初めての電車だったのに、ごめんね」
違う。確かに痴漢呼ばわりされたのも癪に障るが......一番問題なのはそこではない。
「.....そんなことより、あのとてつもなくダサい名前は何だ」
そう言うと、あおいがびっくりした顔で俺を見返した。
「え?ダサいかな?名案じゃない?レオンだからレオ!そういう男の子いるし!カッコいいと思うんだけどなぁ」
困った顔で笑いながら、あおいは俺を見上げる。
「まあ、あの場にいた人にもう会うことないし!気にしないで大丈夫だと思うよ?」
たしかに、それもそうだな。
「とりあえず、いろいろとごめんね。今日はお詫びにいっぱい欲しい服買っていいからね!ブランド物とかは勘弁してほしいけど....」
ごにょごにょ言っている女を見て、フッと笑った。
「あ、でも一つだけ言っとくね!公共の場で女の人に胸がどうだの言うのは、この国ではセクハラだからね!もう言っちゃダメだよ!」
いつもの態度に戻った俺に安堵したのか、またお得意の威嚇芸を披露しはじめるあおい。
「わかってるって。もう触る機会ねえから安心しろ」
「お前のこと女だなんて思ってねーしって思ってるでしょ」
「お、よく分かってんじゃん」
「私だってあんたのこと男だなんて思ってませんよー!ふんっ」
そこまで言うと、2人して顔を見合わせて笑った。
こいつと俺は、口を開くと言い争うことばっかりだ。
それも、しょうもない内容ばかりで。
でもなんとなく、俺にとっては、この距離感が居心地良くなりはじめていた。
そんなことに気がついた、2人で初めて出かけた日曜日だった。
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