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第6章 コロニー003
29話 「到着 前編」
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アビスティアから少し離れた辺り。
ぽつぽつと建物が減っていき、郊外のような場所にその入り口はあった。
物々しい雰囲気の門に近づくと、数人の武器を構えた人間がこちらを警戒している様子。
恐らく軍の人間だろう。その中心にいた大剣を担ぐ女に語り掛けられる。
「あんた、どこから来んだい?このコロニーの人間じゃないだろ?」
「あぁ。アルヴァンという男に頼まれてここまで来た。悪いが通して貰えるか」
「アルヴァン様の……あぁ、そうか。到着はもう少し先だと思っていたから失念していたよ。あたしが案内する事になってるんだ。ついてきてくれ」
「頼む」
トントン拍子で会話が進み、女が門を開く。
こちらの手を煩わせないよう、アルヴァンが軍人に手を回していたのだろう。
塔で木霊する3人の靴音と、そこに流れる独特の緊張感を感じながら一段一段と階段を降りていく。
その階段や外壁全てが128や236とは違うしっかりとした物で、このコロニーの技術力の高さが伺える。
「ミリーは、まだ休まなくて平気か?」
「うん。夜は一応見よう見まねでいつもの家も作って、ちょっとだけ寝てたから」
「そうなのか」
「ただ寒くて、やっぱり火つけよって思って、しばらくしたらカイが起きたの」
思えばミリーは料理の準備の際、小さな食器も作ってくれていた。
恐らく土魔術も出来るのだろう。
末恐ろしい実力だと思うのと同時に、魔術全般で俺の上をいかれていたのなら立つ瀬が無いな、なんて事を思った。
……俺どこかで意気揚々とミリーに魔術のコツなんか教えたりしてないよな?
魔力は大人になるにつれ伸びる。
13歳でこれなら、10年後、どころか5年後には今の俺も、現役時代の婆さんをも超える魔術師になりうる。
勿論ミリーが魔術の道に進むのならだが。
その時が楽しみでもあり、末恐ろしくもあった。
「よっ……と」
最下層まで辿り着き、大剣持ちの女が戸を開く。
するとそこに広がっていたのは、あまりに広い地下空間と整備された建物の数々だった。
「すごい……」
道は大通りへと続いており、かなりの人数で賑わっている。
「ここが中央区だよ。コロニー003は大きく3つの地区に分かれている。中央区、農業区、工業区。基本的に居住地は中央区に集中してて、今アルヴァン様は工業区で仕事をしているはずだ」
「アルヴァンはやはり偉い立場の人間なのか?」
「あぁ。アルヴァン様は、称えられるべくして称えられた人だよ。このコロニーの食料問題から廃棄物の処理まで、色んな問題を改善へと率いた現代の偉人だ」
「アルヴァンは貴族というより、政治家に近いのか?」
「いいや、どちらかというと研究者だね。というか、そんな事も知らないで来たのかい?」
少しイメージとは違った。
てっきり良い家柄の朗らかな家族のような物を想像していたが、随分きちっとした技術の開拓者らしい。
やがて辺りが人の家の立ち並ぶ景色から、煙突の並ぶ蒸気の都へ姿を変える。
その中でもひときわ大きな建造物の前で女は足を止めた。
ここで少し待っててくれと一言告げて建物へと入っていく。
どうやらここが俺達の目的地らしい。
アルヴァンの職場というのでミリーがここで暮らす事はないだろうが。
そう思っていると、ミリーにねぇと話かけられた。
「カイ、上のあれ、見た?」
「……あぁ、あれは、少し不気味だな」
「ね、カイがあのコロニーで見たって言った奴って、あんな感じ?」
「そうだ」
ミリーと2人で上空を見やった。
そこにはあのコロニー236で見た物と同じであろう、黒い太陽が浮いていた。
勿論、光は発していない。
どうやらこのコロニー003には人工太陽が複数あるようで、中央区、遠くにうっすらと農業区にもそれらしき物が見えた。
そして工業区の人工太陽。これだけが黒く、光を失っている。
わざわざ置いてあるという事は、何か俺達も知らない意味があるのか、昔は太陽のように光を発していたかのどちらかだろう。
実際工業区は少し灯りが足りていないようにも思える。
コロニー128の外層程じゃないが、工業区の奥地はかなりの暗がりが広がっていそうだった。
すると奥に行った女が帰ってきて、申し訳なさそうにこう告げた。
「悪いが、あんまり早い到着だから向こうも準備が整ってないらしい。すぐに呼ぶべき人を呼ぶから3時間後にまたここに来てほしいだってさ。これは、アルヴァンからの駄賃だ」
金貨3枚を渡された。
太っ腹な待遇だと一瞬思ったが、コロニー128とは金の価値が違いそうだ。
となればこの金額も妥当かと思い、受け取る。
「適当に街をぶらついていろという事か?」
「あぁ、特にさっきの中央区の出店は賑わってるよ。行ってみる事を薦めるね」
「了解した」
俺達は女と別れ、またミリーと2人になる。
言われた通り引き返すように中央区へと歩いた。
「流石にわたし達、早すぎたんだろうね」
「コロニー236で送り返した鳥から、おおよそ5日後辺りだと予想されてたんだろうな」
「カイが頑張ったおかげだね」
「あぁ。それと……グロムのおかげだ」
「……うん。そうだね」
「ミリーのおかげでもあるな。龍を仕留めてくれた」
「じゃあ、皆のおかげだよ」
中央区の出店の立ち並ぶ大通りに辿り着く。
街は活気で賑わい、人が波のように並んでいる。
こんな景色は128じゃ、何かの祭りの時ぐらいしか見られないだろう。
ひとまずは物価が気になる。そう思い店を覗こうかと思った時、ミリーがある物を見ている事に気が付いた。
ぽつぽつと建物が減っていき、郊外のような場所にその入り口はあった。
物々しい雰囲気の門に近づくと、数人の武器を構えた人間がこちらを警戒している様子。
恐らく軍の人間だろう。その中心にいた大剣を担ぐ女に語り掛けられる。
「あんた、どこから来んだい?このコロニーの人間じゃないだろ?」
「あぁ。アルヴァンという男に頼まれてここまで来た。悪いが通して貰えるか」
「アルヴァン様の……あぁ、そうか。到着はもう少し先だと思っていたから失念していたよ。あたしが案内する事になってるんだ。ついてきてくれ」
「頼む」
トントン拍子で会話が進み、女が門を開く。
こちらの手を煩わせないよう、アルヴァンが軍人に手を回していたのだろう。
塔で木霊する3人の靴音と、そこに流れる独特の緊張感を感じながら一段一段と階段を降りていく。
その階段や外壁全てが128や236とは違うしっかりとした物で、このコロニーの技術力の高さが伺える。
「ミリーは、まだ休まなくて平気か?」
「うん。夜は一応見よう見まねでいつもの家も作って、ちょっとだけ寝てたから」
「そうなのか」
「ただ寒くて、やっぱり火つけよって思って、しばらくしたらカイが起きたの」
思えばミリーは料理の準備の際、小さな食器も作ってくれていた。
恐らく土魔術も出来るのだろう。
末恐ろしい実力だと思うのと同時に、魔術全般で俺の上をいかれていたのなら立つ瀬が無いな、なんて事を思った。
……俺どこかで意気揚々とミリーに魔術のコツなんか教えたりしてないよな?
魔力は大人になるにつれ伸びる。
13歳でこれなら、10年後、どころか5年後には今の俺も、現役時代の婆さんをも超える魔術師になりうる。
勿論ミリーが魔術の道に進むのならだが。
その時が楽しみでもあり、末恐ろしくもあった。
「よっ……と」
最下層まで辿り着き、大剣持ちの女が戸を開く。
するとそこに広がっていたのは、あまりに広い地下空間と整備された建物の数々だった。
「すごい……」
道は大通りへと続いており、かなりの人数で賑わっている。
「ここが中央区だよ。コロニー003は大きく3つの地区に分かれている。中央区、農業区、工業区。基本的に居住地は中央区に集中してて、今アルヴァン様は工業区で仕事をしているはずだ」
「アルヴァンはやはり偉い立場の人間なのか?」
「あぁ。アルヴァン様は、称えられるべくして称えられた人だよ。このコロニーの食料問題から廃棄物の処理まで、色んな問題を改善へと率いた現代の偉人だ」
「アルヴァンは貴族というより、政治家に近いのか?」
「いいや、どちらかというと研究者だね。というか、そんな事も知らないで来たのかい?」
少しイメージとは違った。
てっきり良い家柄の朗らかな家族のような物を想像していたが、随分きちっとした技術の開拓者らしい。
やがて辺りが人の家の立ち並ぶ景色から、煙突の並ぶ蒸気の都へ姿を変える。
その中でもひときわ大きな建造物の前で女は足を止めた。
ここで少し待っててくれと一言告げて建物へと入っていく。
どうやらここが俺達の目的地らしい。
アルヴァンの職場というのでミリーがここで暮らす事はないだろうが。
そう思っていると、ミリーにねぇと話かけられた。
「カイ、上のあれ、見た?」
「……あぁ、あれは、少し不気味だな」
「ね、カイがあのコロニーで見たって言った奴って、あんな感じ?」
「そうだ」
ミリーと2人で上空を見やった。
そこにはあのコロニー236で見た物と同じであろう、黒い太陽が浮いていた。
勿論、光は発していない。
どうやらこのコロニー003には人工太陽が複数あるようで、中央区、遠くにうっすらと農業区にもそれらしき物が見えた。
そして工業区の人工太陽。これだけが黒く、光を失っている。
わざわざ置いてあるという事は、何か俺達も知らない意味があるのか、昔は太陽のように光を発していたかのどちらかだろう。
実際工業区は少し灯りが足りていないようにも思える。
コロニー128の外層程じゃないが、工業区の奥地はかなりの暗がりが広がっていそうだった。
すると奥に行った女が帰ってきて、申し訳なさそうにこう告げた。
「悪いが、あんまり早い到着だから向こうも準備が整ってないらしい。すぐに呼ぶべき人を呼ぶから3時間後にまたここに来てほしいだってさ。これは、アルヴァンからの駄賃だ」
金貨3枚を渡された。
太っ腹な待遇だと一瞬思ったが、コロニー128とは金の価値が違いそうだ。
となればこの金額も妥当かと思い、受け取る。
「適当に街をぶらついていろという事か?」
「あぁ、特にさっきの中央区の出店は賑わってるよ。行ってみる事を薦めるね」
「了解した」
俺達は女と別れ、またミリーと2人になる。
言われた通り引き返すように中央区へと歩いた。
「流石にわたし達、早すぎたんだろうね」
「コロニー236で送り返した鳥から、おおよそ5日後辺りだと予想されてたんだろうな」
「カイが頑張ったおかげだね」
「あぁ。それと……グロムのおかげだ」
「……うん。そうだね」
「ミリーのおかげでもあるな。龍を仕留めてくれた」
「じゃあ、皆のおかげだよ」
中央区の出店の立ち並ぶ大通りに辿り着く。
街は活気で賑わい、人が波のように並んでいる。
こんな景色は128じゃ、何かの祭りの時ぐらいしか見られないだろう。
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