絶望のシンクロニシティー

４

　
　
「漸ようやくお目覚めざめになられましたか我が君よ」


地獄じごくの閻魔えんまにしては様子ようすが変だ？

実は地獄の閻魔えんまは人の罪を裁さばく王ではなく、
人間の手下なのか？


「まずは説明して貰もらおうか。
　ここは？」


僕はわざとおざなりに挑発的ちょうはつてきに言ってみた。

からかってるなら、もううんざりだ。

さぁその仮面を外はずせ。

だが予測よそくに反はんしてその異形いけいは傅かしずいたまま、
静かに詫わび始めた。


「まずは眠りを妨さまたげましたこと、
　お詫わび申もうし上あげます。

　ここは異世界。

　禁忌きんきの呪法により、
　異世界より魔王様をおよび致いたしました事、
　改あらためてお詫わびします」


異世界？


と言う事はこの鬼にとって、
僕は異世界の魔人と言う事なのか？

何故なぜかは分からないが、
ここでは僕の方が立場は上のようだ。

僕はさらに大仰おうぎょうしく説明を求めた。


「説明して貰もらおうか！」

「はっ！？今この国は人間共の進攻により、
　滅亡の危機に瀕ひんしています。

　我々は人間の脅威きょういに抗あらがうべく、
　恐れながらも魔王様を呼び起こす、
　禁忌きんきの呪法を使いました。

　あなた様はその呪法により目覚められた、
　第１３代目魔王様にございます」


１３代目？


随分ずいぶん多いんだな。


「魔王とはぼく・・・
　　我の事か！？」

「左様さようにございます。
　魔王様」

事情は良く分からないが、
僕は魔王に祭り上げられているようだ。


「もっと詳くわしく聞かせて貰もらおうか！」

出来るだけ尊大そんだいに魔王ぽく言う。

「はっ！
　現状は人間による魔族討伐軍とうばつぐんにより、

　我が国土は包囲され風前の灯火ともしびです。

　これを打開だかい出来るのはもはや、
　魔王様のお力だけ」


その魔王様は学校で一番力の弱い、
搾取さくしゅされる側がわなんだがな。

だがその力を求もとめられるのは悪くない。

例たとえそれが、かりそめのものだとしても。

いやむしろ、
認みとめられた様ようで気持ち良くさえある。