絶望のシンクロニシティー

５

　

聞いた限かぎりでは状況じょうきょうは最悪。


第二次世界大戦時の終戦間近しゅうせんまじかの
日本そのものだ。

こう言った場合、
敗残国はいざんこくの支配者が真まっ先さきに考えるのは、
終戦時の自分の処遇しょぐうだ。

軍事裁判ぐんじさいばんで死刑になるのが、
ほぼ確定している限かぎり、
軍トップは敗けを認みとめず、
狂った玉砕覚悟ぎょくさいかくごの戦争は泥沼化どろぬまかする。

そんな場面で呼ばれたのだ。

君がトップだと言われ喜ぶのは凡人ぼんじんである。

トカゲの尻尾切しっぽきりとしての生いけ贄にえとして、
呼ばれたに過すぎないだろう。

だが、さらに気の違った俺に、
この状況は笑いが込み上げて止まらない。

並なみみの奴やつなら死のフラグも、
俺にはチャンスにしか見えない。


「わかった。
　それで兵力はいくらだ？」

「はっ！
　こちらが２千、向こうが３万です」


はっはっは、ようやくもたらされた希望は、
兵力差１５倍の絶望ぜつぼうだとはね。

始まったばかりで、
もう終わりのどん底ぞことは笑える。

とことん僕は呪われてるらしい。

覆くつがえして殺やるよ。

生いけ贄にえがお前らの支配者になってやる。


「やはり魔王様でも、
　この絶望的状況での打開だかいは、
　不可能ふかのうでしょうか？」

「控ひかえよゾルディア！
　王の御前ごぜんであるぞ」

「ですがこの様ような・・・
　なんと言いますか人間じみた王など・・・
　やはり失敗だったのでは・・・　　」

「控ひかえよと申もうしたであろう！」

なるほど儀式ぎしきが失敗して、
世界で最弱の僕が呼び出されたと言う訳わけか。

なんて皮肉ひにくだ。

世界で最弱の僕が世界を救うか。

いや人間が敵なら、
世界を滅ほろぼす側がわになるのかな？


「面白い！
　世界を我が憎しみで満みたしてやろう」


つい出た言葉に希望を見いだす悪魔達。


「陛下へいかでは我々われわれは・・・　」

「問題ない。
　我われが全すべて片付かたづけてやろう」


途端とたんに辺あたりがざわつき始めた。
　
　
「まずはそなたの名を聞こう。
　答えよ」

傅かしずいたままの鬼が応こたえる。

「はっ！　
　私は魔界八氏族まかいはちしぞくが１つ、
　鬼神ガルバナ族ぞくが長おさアルカナです」

「謀たばかるな。
　そちが、もと魔族の王であろう。
　我が召喚される前のな」

「はっ、その様ようなつもりは。
　はいそうです魔王様」


その洞察どうさつにアルカナは改あらたまって傅かしずいていた。


「そうかアルカナよ。
　それではまず、この辺りの地形と、
　こちらの戦力、物量を見たい。
　資料を用意せよ」
 

こうして僕の、
いや俺の異世界生活は始まった。