宇宙漂流記【アイラ・ラウ編】

星界の温床

２

　

そのとき彼女だけは、一命いちめいをとりとめた。


母方ははがたの親族しんぞくの通報で駆けつけた警察官により、
取り抑おさえられた父方の両親は、
今も刑務所に入っている。

だがそれで、
父方の親族全員がいなくなったわけではない。

その報復ほうふくをおそれた母方の両親は、
彼女を施設しせつで保護ほごしてもらう事になる。


こうして彼女は幼くして孤児こじとなったのである。


その後、
彼女の選えらべる人生はそう多くはなかった。


学費のいらない軍事学校に入学を希望し、
彼女は頭角とうかくをあらわす。

特に射撃訓練では群ぐんを抜いていた。


それはそうである。

彼女には目的があったから。


両親を殺した親族を射殺すると言う目的が。


だがそのためには力が必要だった。


権力と言う力が。


その後勉学にも励はげみ、
彼女はトップクラスの成績を残す事になる。


全すべては復讐ふくしゅうのために。


そして今彼女は激しい選抜試験を勝ち残り、
この宇宙に立っていた。


アイラはたむろする異国の学生達を眺ながめ、
ある種の安心感と解放感を感じ始めていた。


この国の人たちには、
私の生おい立たちも私の国の差別もない。


それはラルが始めて感じる解放感だった。


このまま誰ともかかわらなければ、
私はずっと自由でいられるのか、
そんな思いが巡り始めていた。


だが運命の歯車《はぐるま》はそんな彼女の思いを、
生おい立たちを推おし量はかったりはしなかった。


唐突とうとつに彼女の腕にしたバイタルチェッカーが、
鳴り始めたのだ。


それは先ほど別れた、
イーサンと言う女性のかたからだった。