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リップクリーム
「王子!!!」
王子!来たよー!ホワイトタヌキが会いに来ましたよー!
ちょこっと道草食ったけども。
王子の部屋に入れて貰ったオレは、さっそく王子の眠る大きくてゴージャスなベッドに駆け寄る。
「あっ…王子…」
まるで起きる気配がしない。分かってはいたけど、あまりにも静かに眠る王子の顔を見ると胸がきゅうっと締め付けられた。
「…アティカス…王子ぐっすりだね…」
「…きっと、相当量の魔力を無意識に使われたのだな…一体いつお目覚めになられるのか…あっ、いやっ心配は無用だぞ、ニナ。きっとすぐお目覚めになる!」
「…うん、そうだよね…。ふふっ、本当王子ってば、おてんばでおっちょこちょいさんなんだから…」
本当、オレなんかの為にあんなに怒って無茶して…。
「王子…」
伏せられた長い睫毛が影を作り、何だかとても儚く見える王子。
まっ黒なモヤに囲われた王子を思い出す。その魔力を放たれでもすれば、この国が一瞬で消し飛ばされるのではないかと思う程の恐怖を感じた。
王子がそんな事をする訳ないけど…。
だとしても、あれはとても危険な魔力の使い方だ。
王子の命をいっきに削ぎ取っていくような激しさに、今思い出してもゾッとする。
「ニナ…」
気遣わしげな声で、オレの肩にそっと手を置くアティカス。
ごめんね、アティカス。
「…アティカス、王子って奇跡だよね」
「…ああ、そうだな。殿下のご存在は奇跡に等しい」
「いや顔が」
「え?」
「顔だよ顔っ!普通魔力暴走してぶっ倒れたら、こんな美しい顔でスヨスヨ眠ってらんないよ。ねえなんで?ただ寝てるだけでキラキラしてるってどういう事??!!イケメンこんちくしょおっ」
「しっ!ニナ、どうしたんだ?落ち着け!殿下がお目覚めになられてしまうっ」
「…あっ!…ごめんなさい」
いや目覚めたら目覚めたで嬉しいんだけどさ。
でも今はゆっくり休ませてあげないとね。
ふうっ…少し興奮しちゃったな。
白くてつるりとした王子の肌に触れる。
いやだなぁ。こんなに静かで綺麗な寝顔だと、生きているのか死んでいるのか分かんないじゃん。
…あっ、王子の可愛い唇が少しカサついちゃってる!
すぐさまアイテムボックスから小さな容器を取り出し、中に入ったクリームをちょこんと指につけて王子の形の良い唇に塗り塗りする。
うん!うるうるの唇に戻った!
よしっ、イケメン度が上がったよ、王子!!
「ニナ、それは?」
「あっ、アティカスごめん!王子の唇が少し潤いを欲してたから勝手にリップクリーム塗っちゃった。でも、王子も何度も使った事あるやつだから大丈夫だよ」
「いや、ニナは殿下の婚約者だ。信用している。ただとても良い香りのするクリームだと思ってな」
「でしょっ!これアーネラ様の青薔薇のエキスで作ったんだよ」
正しくはアーネラ様の国が、友好の証に王子に贈った青い薔薇で作ったリップクリームだ。何でもアーネラ様の国では青薔薇で作られた化粧品なんかがとっても人気なんだって。お高いらしいけど、美容にとっても良いみたい。
それを興味津々にアーネラ様から聞いていたオレに、アーネラ様がニナも青薔薇を使って何か作ってみたら?と提案してくれたのだ。
あっもちろん王子も賛成してくれたよ!
でもいかんせん貴重な花だ。必要な分だけククタリからちょこーっと頂いて、その青薔薇エキスでちょこーっとだけリップクリームを試作してみた。
さすがにアーネラ様の国を象徴とする青薔薇で商売をする気はないけど、ギルドの女子達が喜びそうだなーっと想像出来る位には良いモノが出来ちゃったんだよね。
アーネラ様にプレゼントしたらめちゃくちゃ喜んでくれたし、勉強にもなったんだよな。
「良い香りだよねー、これたまに王子の唇に塗り塗りしてあげると、ご機嫌になるんだよ。よっぽどこのクリームがお気に入りみたい」
だからこんな試作品じゃなくて、王子が携帯出来る用に作るよって言ったら、たまにニナに塗ってもらえたらそれでいいって言うんだよな。オレが使ってる試作品で良いんだって。
「はは…殿下は意外と甘えたがりだよな…」
「え?なんか言った??」
「いっ…いやいや何でもない!」
「ふふっ、アティカス!アーネラ様に会いたくなったんじゃない??この香りはまさにアーネラ様の香りだもん」
「うっ」
そう、アーネラ様は青薔薇の香水をよくつけている。
清楚で凛とした瑞々しい青薔薇の香りが、いつも控えめにふわりとアーネラ様を纏っているのだ。
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