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悲鳴を上げ一瞬怯んだが、即座にオノを担いで現れたサミィ。ドアを破壊した道具の1つだ。
今にもオノを振りかぶろうとするサミィの形相と、我を忘れ獣化し、こちらに牙を剥き出しにする主人にソーノは目眩がした。
考える間もなく二人の間に入り、サミィに言った。
「こちらは殿下です!エレン・ナンバート第一王子です!」
サミィはぴたりと、オノを振り上げていた手を制止した。と思った。
「だから何なのです?普通の状況じゃないでしょう?
とりあえずアイリス様を早くお返しください!!!」
と今度は本気で向かってくるオノに、あ、終わった。とソーノは思った。
その時。ダダンッと後ろで音がした。
振り向くと、狼の姿のままエレンは倒れていた。
今思うと処理しきれない事が一気に起こり、一杯一杯だったんだろう。
それからアイリスは、サミィ達に保護された。
目を覚まし冷静さを取り戻したエレンが、侍女達に謝罪したのは1週間後の事だった。
だが、自分が狼人と人間のハーフだと告白できても、アイリスの一族の話は勝手に出来ない。
アイリスとも約束をしたからだ。
どちらにしても、アイリスの今の状態をアイリスの両親に伝えねばならないと、ナンバートに足を運んでもらった。
アイリスの両親には全てを話し、謝罪した。
大事な娘を奪ったあげく、こんな状況を招いた自分がとにかく許せなかった。
二人の前で涙を流したって、何の意味もない。
意味もない癖に、勝手に溢れる涙が憎かった。
アイリスの父親は言った。
「全ては呪いが招いた事。ご両親の問題で呪いをかけられた貴方様には何の罪もありません。
貴方様を救いたいと行動したのもアイリスが決めた事。
それを私達が責めてしまえば、あの子に怒られます」
そして眠るアイリスの頭を撫でながら、アイリスの母が言う。
「ただ、アイリスを想うなら普通に生きてください。普通に寝て、起きて、食事を頂く。
…もう貴方様を脅かす呪いは解けたのですから。
どうか…穏やかにお暮らしください。アイリスは必ず目覚めます」
と、緑の目を細め優しく笑った。アイリスとよく似た笑顔で。
目覚めてから、まともに食事や睡眠をとっていないことに、ゲッソリとやつれた自分の顔を見て分かったのだろう。
ああ、アイリスの両親だなと滲む視界の中で思った。
その後、アイリスの両親の許可を取り、ソーノと3人の侍女に全て話した。
ショックを受けていた侍女達だが、すぐにソレを受け入れアイリスの為に尽くしてくれた。
ソーノはやはり複雑そうだった。
病に伏せる父に変わり、呪いを解く方法を模索しつつ、常に隣で支えてくれていたのだ。
喜ばしいが、アイリスを思うと喜べない。そう言った複雑な思いだっただろう。
それから周りの反対を押しきり、後宮は解散させ、アイリスを城の自分の部屋に移した。
周りに何と言われても良かった。アイリスにとって必要な事をしてあげたい。一番近くで。
こぽこぽと、グラスに淡い黄金色の液体を注ぐ。
マルナの花の隣にグラスを置いて、美しく成長したアイリスを見つめる。
「アイリス、去年は寒くて日照り不足だっただろう?だから野菜や果物も不作の年になりそうだよ」
「サキュアだってあまり収穫出来ないから、早く起きないと、君のジュースはオレが飲んでしまうからね」
と小さく笑い、先程のグラスに口をつける。
コクリと一口飲むと同時に、涙が頬を伝う。
ねえ、アイリス。
君との出逢いはオレにとっては尊いモノだけど、君からしたらきっと不幸な事でしかないよね。
君とオレとの人生は一度きりだというのに、あまりに酷くて。
君のおかげでこうして生きていられるのに、君のいない日々に、生きている意味を探してしまう。
金色の髪を一房すくい、祈るように額にかざす。
「アイリス…君に会いたいよ」
今にもオノを振りかぶろうとするサミィの形相と、我を忘れ獣化し、こちらに牙を剥き出しにする主人にソーノは目眩がした。
考える間もなく二人の間に入り、サミィに言った。
「こちらは殿下です!エレン・ナンバート第一王子です!」
サミィはぴたりと、オノを振り上げていた手を制止した。と思った。
「だから何なのです?普通の状況じゃないでしょう?
とりあえずアイリス様を早くお返しください!!!」
と今度は本気で向かってくるオノに、あ、終わった。とソーノは思った。
その時。ダダンッと後ろで音がした。
振り向くと、狼の姿のままエレンは倒れていた。
今思うと処理しきれない事が一気に起こり、一杯一杯だったんだろう。
それからアイリスは、サミィ達に保護された。
目を覚まし冷静さを取り戻したエレンが、侍女達に謝罪したのは1週間後の事だった。
だが、自分が狼人と人間のハーフだと告白できても、アイリスの一族の話は勝手に出来ない。
アイリスとも約束をしたからだ。
どちらにしても、アイリスの今の状態をアイリスの両親に伝えねばならないと、ナンバートに足を運んでもらった。
アイリスの両親には全てを話し、謝罪した。
大事な娘を奪ったあげく、こんな状況を招いた自分がとにかく許せなかった。
二人の前で涙を流したって、何の意味もない。
意味もない癖に、勝手に溢れる涙が憎かった。
アイリスの父親は言った。
「全ては呪いが招いた事。ご両親の問題で呪いをかけられた貴方様には何の罪もありません。
貴方様を救いたいと行動したのもアイリスが決めた事。
それを私達が責めてしまえば、あの子に怒られます」
そして眠るアイリスの頭を撫でながら、アイリスの母が言う。
「ただ、アイリスを想うなら普通に生きてください。普通に寝て、起きて、食事を頂く。
…もう貴方様を脅かす呪いは解けたのですから。
どうか…穏やかにお暮らしください。アイリスは必ず目覚めます」
と、緑の目を細め優しく笑った。アイリスとよく似た笑顔で。
目覚めてから、まともに食事や睡眠をとっていないことに、ゲッソリとやつれた自分の顔を見て分かったのだろう。
ああ、アイリスの両親だなと滲む視界の中で思った。
その後、アイリスの両親の許可を取り、ソーノと3人の侍女に全て話した。
ショックを受けていた侍女達だが、すぐにソレを受け入れアイリスの為に尽くしてくれた。
ソーノはやはり複雑そうだった。
病に伏せる父に変わり、呪いを解く方法を模索しつつ、常に隣で支えてくれていたのだ。
喜ばしいが、アイリスを思うと喜べない。そう言った複雑な思いだっただろう。
それから周りの反対を押しきり、後宮は解散させ、アイリスを城の自分の部屋に移した。
周りに何と言われても良かった。アイリスにとって必要な事をしてあげたい。一番近くで。
こぽこぽと、グラスに淡い黄金色の液体を注ぐ。
マルナの花の隣にグラスを置いて、美しく成長したアイリスを見つめる。
「アイリス、去年は寒くて日照り不足だっただろう?だから野菜や果物も不作の年になりそうだよ」
「サキュアだってあまり収穫出来ないから、早く起きないと、君のジュースはオレが飲んでしまうからね」
と小さく笑い、先程のグラスに口をつける。
コクリと一口飲むと同時に、涙が頬を伝う。
ねえ、アイリス。
君との出逢いはオレにとっては尊いモノだけど、君からしたらきっと不幸な事でしかないよね。
君とオレとの人生は一度きりだというのに、あまりに酷くて。
君のおかげでこうして生きていられるのに、君のいない日々に、生きている意味を探してしまう。
金色の髪を一房すくい、祈るように額にかざす。
「アイリス…君に会いたいよ」
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