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閑話
御調
(まただ…)
毎週土曜日の夜。吹奏楽団体の練習後。
俺と付き合っている時でも、俺の車で練習に来たことないくせに。
でも、友達の車で来たことはあったな。そして、帰りは乗せて帰った…。
仕立ての良いスーツ姿の背の高い男。
別れて、何ヶ月かしてから、迎えが来ているのに気づいてから見ていれば、それはたまたまではなく毎度のことで。でも、同じ相手ではない。
(もう、他にいるわよ?)
別れてくれと、友だちに戻ってくれと言ったのは、俺。
でも、耳に残るその優美香の言葉に衝撃を受けた。何を自惚れていたんだろう。あいつは、俺を好きなままでいるなんて思っていたのか。
荷物を自然に持とうとして、花音に抵抗されている男。男の俺から見ても、羨ましいほどの「イケメン」。
視線を感じたのか、花音が顔を振り向けた。いや。振り向けたと思ったが、目が合う前に、男の体が間に入った。
その時から、もう5年?6年?
何年だろう。
何度かやめようと思った団体は、今も結局続いていて。
やめることで、あいつとの縁が完全に切れるのが怖かった。絶対に味方だと思える相手。
なぜ。俺は、自分でもひどいことをしたと、思っているのに。
そして、またあいつを迎えに来る奴がいる。
でも、見たことのない奴。
新しい、今の男?
ただ、練習中気になったこと。泣き腫らしたような顔。分からないように隠してはいるけれど。
「花音、どうかしたのか?」
普通に、話すようにはなっていた。話さなかった原因も、自分。
もう、何もかもが自分が悪いと分かっていて、それがなおさら居心地悪くてカッコ悪くて、嫌になる。
「え?」
不意打ちになってしまったのか、驚いた顔で振り返る。とっさに、緊張するのもわかる。
俺の不用意な言葉が、いとも簡単に彼女を傷つける。だから、彼女は身構える。
それを言われたのは、いつだったか。花音の親友に、言われた。怒りをぶつけるでも何でもなく淡々と告げられたのが、それが事実なのだと実感できた。
怒れば、花音が怒るから。
そう言って、彼女は背を向けた。
なにも?
僅かに微笑んだかと思えるような顔で応じて、花音は帰ろうとする。
なにも、って顔じゃない。
そう思って引き留めようとしたとき、、見たことのない「お迎え」が近づいていた。
1人じゃなかったのか。
じゃあ、そういう関係ではない?
でも、そいつらが俺に向けているのは、敵意。
そして、そいつらに遮られる前に、別の手が割って入った。
無造作に、花音の腕を掴んだその「誰か」を見た瞬間、花音が強張る。
「おい、あんた、何してるんですか」
「…花音、行くよ?」
完全な無視。
ただ、自然に花音を呼ぶ声に、花音が顔を上げる。知らない相手ではないようで。
お迎えが、慌てて連れ戻そうとするのを止めたのは、花音だった。
「来てもらったのに、ごめんなさい。大丈夫」
「でもっ」
いつまでも、逃げていられるわけじゃないから
そう言って、花音は腕を引かれるままについて行く。
細い細いつながりだけは途切れないようにする、俺にとって、彼女は一体今、何なんだろう。
あの時、花音をいらないと思った。その原因は、今はもう、関わりを持つ気にもならない。
「花音?」
呼び掛ければ、振り返る。
こてん、と首を傾げた。全く変わらない、彼女。
「御調さん、おつかれさまでした」
毎週土曜日の夜。吹奏楽団体の練習後。
俺と付き合っている時でも、俺の車で練習に来たことないくせに。
でも、友達の車で来たことはあったな。そして、帰りは乗せて帰った…。
仕立ての良いスーツ姿の背の高い男。
別れて、何ヶ月かしてから、迎えが来ているのに気づいてから見ていれば、それはたまたまではなく毎度のことで。でも、同じ相手ではない。
(もう、他にいるわよ?)
別れてくれと、友だちに戻ってくれと言ったのは、俺。
でも、耳に残るその優美香の言葉に衝撃を受けた。何を自惚れていたんだろう。あいつは、俺を好きなままでいるなんて思っていたのか。
荷物を自然に持とうとして、花音に抵抗されている男。男の俺から見ても、羨ましいほどの「イケメン」。
視線を感じたのか、花音が顔を振り向けた。いや。振り向けたと思ったが、目が合う前に、男の体が間に入った。
その時から、もう5年?6年?
何年だろう。
何度かやめようと思った団体は、今も結局続いていて。
やめることで、あいつとの縁が完全に切れるのが怖かった。絶対に味方だと思える相手。
なぜ。俺は、自分でもひどいことをしたと、思っているのに。
そして、またあいつを迎えに来る奴がいる。
でも、見たことのない奴。
新しい、今の男?
ただ、練習中気になったこと。泣き腫らしたような顔。分からないように隠してはいるけれど。
「花音、どうかしたのか?」
普通に、話すようにはなっていた。話さなかった原因も、自分。
もう、何もかもが自分が悪いと分かっていて、それがなおさら居心地悪くてカッコ悪くて、嫌になる。
「え?」
不意打ちになってしまったのか、驚いた顔で振り返る。とっさに、緊張するのもわかる。
俺の不用意な言葉が、いとも簡単に彼女を傷つける。だから、彼女は身構える。
それを言われたのは、いつだったか。花音の親友に、言われた。怒りをぶつけるでも何でもなく淡々と告げられたのが、それが事実なのだと実感できた。
怒れば、花音が怒るから。
そう言って、彼女は背を向けた。
なにも?
僅かに微笑んだかと思えるような顔で応じて、花音は帰ろうとする。
なにも、って顔じゃない。
そう思って引き留めようとしたとき、、見たことのない「お迎え」が近づいていた。
1人じゃなかったのか。
じゃあ、そういう関係ではない?
でも、そいつらが俺に向けているのは、敵意。
そして、そいつらに遮られる前に、別の手が割って入った。
無造作に、花音の腕を掴んだその「誰か」を見た瞬間、花音が強張る。
「おい、あんた、何してるんですか」
「…花音、行くよ?」
完全な無視。
ただ、自然に花音を呼ぶ声に、花音が顔を上げる。知らない相手ではないようで。
お迎えが、慌てて連れ戻そうとするのを止めたのは、花音だった。
「来てもらったのに、ごめんなさい。大丈夫」
「でもっ」
いつまでも、逃げていられるわけじゃないから
そう言って、花音は腕を引かれるままについて行く。
細い細いつながりだけは途切れないようにする、俺にとって、彼女は一体今、何なんだろう。
あの時、花音をいらないと思った。その原因は、今はもう、関わりを持つ気にもならない。
「花音?」
呼び掛ければ、振り返る。
こてん、と首を傾げた。全く変わらない、彼女。
「御調さん、おつかれさまでした」
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