目が覚めたらBLゲームの悪役令息になったけど、山に引き籠もりたいので全力で主人公を応援しますっ!

mana.

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【15歳】

【15歳】5 オークver.

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ずっと前にシオンと話がしたくて部屋に行った時___

『どうしたの?』

『いや………ちょっと…話がしたくて…』

『そういや、最近一緒にいてもほとんど訓練の話ばかりだったよね?良いよ。お茶は頼んだし、カヤは用事で少し席を外してるから…一緒にお茶しよっか?』

『………うん、する。』

13歳で「僕」から「俺」に言い方を変えた頃から会う度に大人の顔になっていく。
シオンの部屋の窓際にある小さなカフェテーブルに誘導され、椅子に座った。

目の前のシオンは大きな窓がお気に入りとかで、よくそこから外を眺めるらしいが……
そのさり気ない姿でさえ、1枚の絵の様に見えて俺は見惚れてしまう。

「………フフッ」

精霊がもしいたら……

「シオン………」

こんな姿なんじゃないだろうか。

「あ、ゴメン。何?ぼ~っと、しちゃってたね。」

…どこか遠くへ行ってしまいそうで………

「あ…いや………茶が…来た…」

………怖い………

「あ、ありがと。……?何か元気ない?大丈夫?」

「うん。大丈夫。」

……そうだ…大丈夫、こいつは人間だ。
だから早く大人にならなきゃ…

……アイツより…
 
部屋に行ったのは一緒にいたかっただけなので話す内容は考えずに来てしまった。
結果、訓練の取り留めのない話で20分程で話は終わった…

あの時はツメが甘かったんだよなぁ………

今熱を出して寝込んでいるアイツには悪いが、いつも邪魔されるからシオンを独り占めだ!

今日は訓練と名目でやって来たが、ポーロウニアの調子が少し悪いので俺とシオンで見る事になった。
俺にはかなり有り難かったがな。

「にぃたまさまぁ~♪」

「ユ~ズ~ゥッ!」

ヒイラギ達は今日はそれぞれ休暇を与えた。
今後の事を考えて全体的な守りを王宮から派遣して屋敷の周りに配置し、今後の守りの固め方を見ようと思っている。
ユズも懐いているし、性格的にもヒイラギにはいずれここで守りの要になってもらうつもりだ。
ユズがあとを継ぐなら、アゼリアかザクロも置いた方が良いだろう。
城でのヒイラギ達の代わりになるヤツを今から選別したくて志願者を募ったが…

………意外に多かった………

みんなアイツしおん狙いか?
そんなに登城してねぇのに。
全く油断出来ねぇな!

さて、今日は未来の義弟と仲良くする為にアゼリアとザクロから色々と子どもと仲良くする方法を聞いてきた。

これをしたら絶対仲良くなるって聞いたぜっ!
 

「さぁ!ユズっ!!俺を追い掛けるが良いっ!」


鬼ごっこ!!


「…やぁ~のっ!」

拒否?ウソだろ?!

「………何でだよ。」

「にぃたまさま…いぃのっ。」

…ふ~ん、じゃあ…

「あ~、シオンを追い掛けたいのか?」

「んっ。」

「そっかぁ………」

良い事を思い付いた♪
俺はユズを抱っこしてシオンの方を向いた。

ニヤリ。

「じゃあ…俺が抱っこして、シオン兄様を追い掛けるってのは………どうだ?」

ユズがいたらいけるかぁ。

「はぁ?!」

「んっ!いぃっ!!」

「良くない!良くないよ?!ユズ!」

「ヨッシャアッ!じゃあ、ユズッ!!しっかりと俺に掴まれ!い~ち…にぃ~………」

ヨッシャアッ!
ユズには悪いが、兄貴をちょっと堪能させてくれよな!!

「あわわわわわ………」

シオンが慌てて逃げ場所を探している。

「………じゅ~う…………さぁ……ゲームの…始まりだぁ…………」

このチャンス…逃さねぇ…!

バッ!!っと、シオンが最近習った魔法で走る速度を速める。

…………が…………

バシュッ!

ユズに守りのシールドを張って速度を速めた。
俺は王宮で内緒で特訓して…更にパワーアップさせてんだよっ!

「捕~ま~え~た~♡」
「きゃぁあっ♡にぃたまさまっ♪」

「ひぃゃぁぁぁああっ!!」

俺はユズごとシオンを抱き締める。
フワッと甘い香りがする子ども独特の香りと……好きなヤツの甘い香りが俺の鼻を擽った。

良い匂い…ユズがいなかったらこんな事照れて出来ねぇな。
まだまだ俺も子どもだよなぁ。

実は今回、アイツの目が届かない内にあの樹の下でやりたい事がある。
昼には少し早いが、ユズを早く寝かせる為に…ちょっと散歩させるか。

「なぁ、エンジュに昼メシって作ってもらったよな?」

「うん。」

「前みたいに、お前のお気に入りの樹の下で食べないか?」

「あ、良いね。ユズもお散歩がてら行けるしね。」

急な俺の提案にすんなり乗ってくれて、ユズを歩かせて樹の下へ向かった。

「にぃたまさま、ちょうちょ!」

「あ~蝶々だなぁ~。」

花や蝶を眺めてユズと一緒にのんびりと歩く。
その少し後ろを俺は付いて行く。

目の前には好きなヤツと小さな子どもが歩いてる。
あぁ………将来こんな光景を目にする事は出来るんだろうか。

王宮にいる時みたいに毎日忙しなく動かされる訳じゃない。
ユズが生まれてから、好きな事を好きなだけ見る幸せも教えてくれた。
ただの花を、その周りにある蝶や晴れた天気でさえユズは楽しそうに教えてくれる。
俺はここでどれだけの宝を貰ってるんだろう。

そんな事を思いながら歩いて行くとあっという間に樹の下に到着したが、結構時間は経っていたらしい。

シオンと敷布を敷いて色々とエンジュが作ってくれたものを並べる。
ユズは手掴みで食べれる物をシオンが食べさせていた。
野菜の蒸しパンを1つ貰ったがかなり美味かった。
後でエンジュに聞いて王宮でも作ってもらおう。

そしてユズが食べさせ終わる頃、少しウトウトしだした。

「あ、もぅお眠かなぁ。」

「じゃあ、片付けるか。また食べるなら後でまた出せば良いしな。」

今回の目的………

「俺達も最近ゆっくりしてないし……ユズを真ん中にすりゃ、ユズが外に出ねぇし………横になろうぜ。」

…さり気に、さり気に………

「そうだね。」


アイツの目が届かない時にシオンと一緒に敷布で寝る事!


すると何の疑いも無く真ん中にユズがいるからか警戒心も無く、しばらくするとこちらを向いて寝息を立てる。

やったぁぁぁあ!

ドキドキして眠れねぇぇ………
あぁ……相変わらず睫毛…長ぇな………
触ったら…起きるかな……?

「ぅ……おぅ…にぃ…」

シオンの顔を触ろうと手を伸ばした時にユズの身体に当たっていたらしく、こちらに擦り寄って来た。

「………あ、ゴメンな…ユズ。オーク兄様が抱っこしような………」

ユズを引き寄せて抱き締め、背中を軽く撫でる。

…………ホントは今抱っこしたいのは…お前の兄貴なんだがなぁ………

ユズを引き寄せた分シオンとも近くなったので、自分の指をシオンの唇に触れさせてから自分の唇に触れる。

「…シオン……好きだ……」

今は………これで我慢する…
本当は直接したいけど。

あぁ……子どもって抱き締めると…眠気を誘うな…
そういや…アゼリアが…言ってた…な………

ユズの体温の温もりと暖かい木漏れ日に眠気を誘われ、俺は目を閉じてしまった……
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